このコラムについて
「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。
本日のお作法/コーヒーが冷める前に。
先日、某大手さんのY部長から、「ハラスメント研修」のご相談をいただきました。
Yさんは、社外では“研修講師としても活躍”されている方。“心理的安全性” や “ハラスメント”について講演もされていて、“理論も実践”もよくご存じです。
打ち合わせが一段落した頃。
「最近のウチの若手って、“問題が起きてもギリギリまで言わない”んですよ。
「途中で何度聞いても『大丈夫です』って言うんです」
そう言って、Y部長は苦笑い。
なぜなら、「大丈夫です」は、会社で“一番信用できない日本語”かもしれないからです。
本当に大丈夫な人は、何度も「大丈夫です」と言いません。
Y部長は続けます。
「人って、将来の大きな損より、『今、怒られるほうが怖い』んですよ」
「心理学では“現在志向バイアス”なんて呼ばれています。」
さすがは研修講師。説明がとても分かりやすい。
会社には、“不思議な日本語”が生まれます。
「もう少しです」
「今まとめています」
「今、確認中です」
その“もう少し” や “今”が、一番読めないのですが。
そして翌日、「実はまだ…」「実はこんなトラブルに…」という、おなじみの続編が公開されます。
さらにY部長は教えてくれました。
「実は、“報告しない理由”って、上司が怖いからだけじゃないんです」
「『忙しそうだから言いづらい』『期待を裏切りたくない』。そんな気持ちから黙ってしまうこともあるんですよ」
なるほど。まさに心理的安全性の話です。
「ちなみにYさん。最初に若手が遅れを報告してきたとき、“どんな返し”をされたんですか?」と聞いてみましたが、
Y部長は少し照れながら、
「……『なんで?』って、結構詰めちゃいました」
とのこと。。
研修では分かっている。
理論も説明できる。
でも、自分の現場になると、とっさに出てくるのは“正解”ではなく”素”なのです。
知っていることと、できること。
この二つの間には、思った以上に大きな距離があります。
だからこそ、大手企業は管理職研修を一度で終わらせません。
何度も学び、何度も振り返り、少しずつ“できるを増やしていく”のです。
「他社での研修や講演では、こんなこと言ってるんです」
と続けるY部長。
「悪い報告が来たら、最初の一言は『なんで?』ではなく、『報告してくれてありがとう』」
「その一言で、『次も話そう』と思える職場になるか、『次は黙っておこう』と思う職場になるかが決まります」
「仕事というのは、ミスでは信用を失いません」
「“隠した瞬間”に、“信用”を失います」
「だから、悪い報告ほど早いほうがいい」
「冷めたコーヒーは温め直せても、冷めた信頼は、そう簡単には戻りません」
「高松さん、コラム書いてるでしょ?」
「今度、ウチの話でも書いてみてよ」
「大手には、“悪い報告ほど、歓迎する”。こんな作法があるよって」
「副題は、“できれば、コーヒーが冷める前に”、くらいがいいんじゃない?」
大変ありがたい講義をお聞かせいただき、そのままの流れを活用させていただいているのであります。

















