第348回 覚えていてくれたこと

 このコラムについて 

「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。

本日のお作法/覚えていてくれたこと

 

先日、某大手企業のベテラン課長、Mさんと一緒に、東京ビッグサイトの展示会を訪れました。

情報収集が目的の一日でした。

新しい商品やサービスの情報を集めながら、いくつものブースを回っていた時のことです。
あるブースの男性が、Mさんの顔をじっと見つめ、
「もしかして、Mさんではありませんか?」
と、声をかけてきました。

その方は、M課長が若手時代に担当していた、元クライアント企業の方でした。もう15年以上も前のことだそうです。

「あの頃は、本当にお世話になりました」
と頭を下げるMさんに、その方は笑って答えました。

「いやいや、お世話になったのはこちらですよ」
「トラブルの時には何度も足を運んで親身に対応くださったし、取引が終わったあとも、“その後はいかがですか”と顔を出してくれた」
「よく覚えていますよ」

Mさんは、少し照れた様子でした。

ブースを離れたあと、
「あの頃は、ただ必死だったんですよ。覚えてくれているとは思わなかったなあ」
と、ポツリ。

普段は少々のことでは表情を変えないベテランのMさんが、なんとも嬉しそうな顔をされていました。

会社同士の取引は、契約書や売上といった数字で記録されます。
担当者さんが異動すれば、取引が終わることも珍しくありません。
ですが、人の記憶に残るのは数字だけではありません。

困った時に何度も足を運んでくれたこと。
嫌な顔ひとつ見せずに、親身になって対応してくれたこと。
取引が終わったあとも気にかけてくれたこと。

そんな振る舞いが、会社の名前を越えて、相手の心に残っていくのでしょう。

大手さんとの仕事も、最後は一人ひとりの人がつないでいるのですよね。

ところで、高松も先日、ある講師の方と久しぶりに飲み語りました。
その方は、某業界で日本最古の歴史を誇る大手企業のご出身。
私が独立したばかりの頃に、たった二人の設立間もない会社に、150名を超える新入社員の研修をご発注してくださったというクレイジーな恩人です。

久々の再会ですから、
「あの頃の高松くんは、よい仕事をしていたね!」
などという話を、少々期待しておりました。

ところが、出てくるのは、あんな失敗、こんな失敗という、ワタクシのダメダメなエピソードばかり…。
よい仕事ぶりについては、最後までまったく出てきませんでした…

とはいえ、失敗まで覚えていてくださり、今では一緒に笑いながらお酒を飲めることも、ありがたいご縁です。
よい仕事も、ダメダメな仕事も、人の記憶には残るもの。

できれば今後は、前者を少し多めに残したいなぁ
と思いながら、また一杯、杯を重ねたのでありました。

 

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高松 秀樹(たかまつ ひでき)

たかまり株式会社 代表取締役
株式会社BFI 取締役委託副社長

1973年生まれ。川崎育ち。
1997年より、小さな会社にて中小・ベンチャー企業様の採用・育成支援事業に従事。
2002年よりスポーツバー、スイーツショップを営むも5年で終える。。
2007年以降、大手の作法を嗜み、業界・規模を問わず人材育成、組織開発、教育研修事業に携わり、多くの企業や団体、研修講師のサポートに勤しむ。

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