第350回 ロゴを3ミリ動かす

 このコラムについて 

「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。

本日のお作法/ロゴを3ミリ動かす

 

先日、某大手さんの採用部門の方々と打ち合わせをしていた時のことです。

新たに加わった中途入社の方と、雑談がてら、前職との違いについてお話ししていました。

いわゆるベンチャーとも呼ばれる中小企業から転職してきた彼にとって、大手企業の仕事の進め方には、驚くことも多いようです。

中でも強く印象に残っていたのが、資料へのこだわりでした。

内容を考え、数字を調べ、自分なりに整えて提出した資料。

ところが、
返ってきた指摘は、フォントの不統一や、ロゴの位置のずれだったそうです。

ロゴのずれは、3ミリ…

「会社の未来を考える資料も、まずはロゴを正しい場所へ動かすところから始まるようです」とは彼のお言葉。

前職では、まず内容を見てもらい、話し合いながら修正することが多かったとのこと。

大手の細やかなこだわりは、彼には新鮮だったのでしょう。

「そこまで細かく見る必要があるのか」

そう思う気持ちは、よく分かります。

一方で、大きな組織では、資料の品質をそろえることにも、意味があります。

部署ごとに書式が違い、数字の単位も、言葉の使い方もばらばらでは、読む側が苦労します。

採用に関する資料であれば、応募者に伝える情報の正確さや、会社としての統一感も大切です。

共通の形式には、内容を早く、正しく理解してもらうための役割があるのでしょう。

ただ、資料を整える仕事にも、いつの間にか目的が入れ替わる瞬間があります。

相手に分かりやすく伝えるために直していたはずが、上司に指摘されないために直している…

判断しやすくするための資料だったはずが、見た目を完成させることに時間を使っている。
書式には詳しくなったけれど、何を決めてもらいたかったのか、少し遠くなってしまうのです。

ワタクシも研修資料をつくる仕事をしておりますので、体裁を整える大切さは感じています。
しかし、文字をきれいにそろえたからといって、受講者の考えがそろうわけではありません。

むしろ、考え方の違いが見えて、対話が生まれる方が、研修としてはありがたいこともあります。

資料を見る時には、整っているかに加えて、その資料によって何が前に進むのかも確かめたいものです。

中途入社の彼が感じた驚きも、慣れてしまった人たちにとっては、自分たちの作法を見直すきっかけになるのかもしれません。
3ミリの修正が必要なら、直せばよいのでしょう。
ただ、そのあとには、ぜひ中身の話を。
ロゴの位置は直りました。

では、会社をどちらへ動かしましょうか?
そこからが、本当の会議なのであります。

 

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高松 秀樹(たかまつ ひでき)

たかまり株式会社 代表取締役
株式会社BFI 取締役委託副社長

1973年生まれ。川崎育ち。
1997年より、小さな会社にて中小・ベンチャー企業様の採用・育成支援事業に従事。
2002年よりスポーツバー、スイーツショップを営むも5年で終える。。
2007年以降、大手の作法を嗜み、業界・規模を問わず人材育成、組織開発、教育研修事業に携わり、多くの企業や団体、研修講師のサポートに勤しむ。

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