中東で見つける小さなブルーオーシャン
第7回「中東の女性は髪を隠しているイメージですが、お洒落に興味はあるのでしょうか?」

日本人は中東を「イスラム教の国々」と一括りにしてしまいがち。でも中国・北朝鮮・日本がまったく違う価値観で成り立っているように、中東の国だって様々です。このコンテンツではアラブ首長国連邦(ドバイ)・サウジアラビア・パキスタンという、似て非なる中東の3国でビジネスを行ってきた大西啓介が、ここにしかない「小さなブルーオーシャン」を紹介します。

  質問  
中東の女性は髪を隠しているイメージですが、
お洒落に興味はあるのでしょうか?

結論から言えば、女性のおしゃれへの興味は、他国同様、ごく普通にあると思います。

ムスリム女性が髪を隠すのには大体次のようなパターンがあります。

(↑地域や個人の考え方によっていろんなスタイルがある)

スタイルは国や地域によっても差がありますが、制約が一番厳しいサウジアラビアを例にとってみましょう。

女性たちが髪を隠しているのは外出時、特に夫以外の男性のいる空間にいるときで、イラストのように髪をベールで覆い、首から下は黒衣をまとっています。
しかし、女性だけの場や家族の前では義務ではありません。
黒衣の下は普通の格好をしており、我々同様Tシャツやデニムパンツも着ます。

彼女たちの家族でもない男性の私が、生でその姿を見ることは簡単ではないのですが、機内でたまたま見たドラマに彼女たちの日常風景が映っていました。
外と家の中での恰好の違いをご覧ください。
黒一色の衣装とカラフルな部屋着のコントラストが鮮やかです。

(↑サウジアラビアのドラマ。買い物するシーン)

(↑家族で食卓を囲むシーン。左の女性は、一枚目で手前にいる女性と同一人物)

ファッションと言えば、現地で読者モデルをしている女性と会ったことがありますが、彼女は自分のブランドで服を作って売っていました。

(↑彼女の運営する店内。丈の長い服が多い。髪を出しているので、目隠しは念の為)

ちなみに、一番厳しいと言われるサウジですが、昨今の近代化路線によってかなりユルくなりつつあります。
今でこそ写真のように髪を出している女性もちらほら見かけるようになりましたが、以前は街で夫婦でない男女が並んで歩いていたり、髪を出している女性がいれば、宗教警察が注意しにきていました。
この組織の名称は「勧善懲悪委員会」、正式には「徳の奨励と悪徳の禁止の省」といいます。
名前のあまりのカッコよさに、声に出して読んでしまう方もおられます。

Wikipediaには「魔法部がある」などと書いており、なにやら楽しげな組織にも思えますが、保守派の人々でも眉をひそめるほど過激な取り締まりを行うこともありました。(逮捕権も有していたが、現在は剥奪)
私にはイスラム的意識高い系というか、学校の風紀委員たちがそのまま大きくなって徒党を組んだような組織に感じられます。

しかし、こういった組織も時代の流れからか、鳴りを潜めつつあります。
現在激変中のサウジなので、変化の妨げになるものは軟化せざるを得ないのでしょう。
せっかく観光ビザを出したのに来てもらわないと意味がないですし、うっかり髪を出したら怒られる国に、たくさんのツーリストが訪れるとは思えませんから。

あまりユルくなりすぎるとサウジアラビアらしさが消えてしまうので、個人的にはあまり西洋風に偏り過ぎず、ちょうどいいところに落ち着いてもらいたいと思っているのですが、おそらくこの規制緩和の流れはしばらく続きます。

これまで制約のある中でファッションを楽しんできた彼女たち。
より大きな自由を手にしたとき、どうなるのでしょうね。

 


 この記事を書いた人  

大西 啓介(おおにし けいすけ)

大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業。在学中はスペイン語専攻。
サウジアラビアやパキスタンといった、どちらかと言えばイスラム感の濃い地域への出張が多い。
ビビりながらイスラム圏ビジネスの世界に足を踏み入れるも、現地の人間と文化の面白さにすっかりやられてしまった。
海外進出を考える企業へは、現地コネクションを用いた一次情報の獲得・提供、および市場参入のアドバイスを行っている。
現在はおもに日本製品の輸出販売を行っているが、そろそろ輸入も本格的に始めたい。大阪在住。

写真はサウジアラビアのカフェにて。

 

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