日本人は中東を「イスラム教の国々」と一括りにしてしまいがち。でも中国・北朝鮮・日本がまったく違う価値観で成り立っているように、中東の国だって様々です。このコンテンツではアラブ首長国連邦(ドバイ)・サウジアラビア・パキスタンという、似て非なる中東の3国でビジネスを行ってきた大西啓介が、ここにしかない「小さなブルーオーシャン」を紹介します。
質問
「アラブで見た日本の商品の中で、意外だったものはありますか?」
回答
この問いで思い出したのは、サウジアラビアで見た「たい焼き」です。
日本留学経験のあるサウジ女性と会った時のことです。指定のカフェでランチミーティングをしたのですが、食後にデザートとしてたい焼きが出てきました。
驚く私を見て、「サウジアラビアの日本好きの間では結構知られていますよ」と彼女は笑っていました。
(↑盛り付けがかわいい。日本で見る標準的なサイズよりやや小さめだった)
【ひと味違う、たい焼きたち】
その後、いろいろ調べてみたところ、サウジにはたい焼きを販売している店がいくつかあり、それなりに人気もあるようでした。
Instagramで #تاياكي(”たいやき”のアラビア語表記)で検索すれば、多くの投稿を見ることができます。
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(↑緑や紫、オレンジなどカラーバリエーションが豊富。Instagramより)
生地は日本のたい焼きよりも厚みがあり、私が食べたものもどちらかといえばワッフル生地に近い食感でした。
また、日本ではあんこが定番ですが、私が食べたものは中にチョコクリームが入っていました。現地ではチョコやクリーム味がメインのようで、あんこ味は見かけませんでした。
私が面白いと感じたのは、日本のたい焼きは口を閉じていますが、アラブのたい焼きには大口を開けているパターンがあることです。
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(↑口をこじ開けてアイスを入れている。Instagramより)
このようにアイスやジェラートのコーン代わりに使われています。
ちなみに、このアイスたい焼きは韓国やアメリカにも存在していて、隠れた人気があります。
人気の理由は「魚の形がかわいい」という点にあり、これはアラブでも同じです。
【たい焼きの進化】
日本のたい焼きには、カスタードやサツマイモなどの味もありますが、やはり定番はあんこ味です。
一方で、あんこ味はアラブ地域では不人気。
「たい焼きといえばあんこ味」という常識を持った状態で「あんこがあまりウケない」と聞くと、「たい焼きはウケないのだ」と考えるかもしれません。
しかし、たい焼きの人気の秘訣は「魚の形をしたかわいい生地」にあるのです。
彼らはあんこの代わりにチョコを入れます。
また、(日本では閉じている)魚の口をひろげてアイスコーンの代わりとして使っています。
現地では、我々日本人にはあまり考えつかないような形でたい焼きが流行っていると言えるでしょう。
日本ではありふれた商品でも、異文化圏の人の手に渡れば独自の進化を遂げることがあります。
前回記事で述べたように、日本は海外から「別の惑星」と表現されるほど常識にギャップがある国なので、たい焼きだけではなく化学反応が起こる商品は他にもあるのではと考えています。
この記事を書いた人
大西 啓介(おおにし けいすけ)
大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業。在学中はスペイン語専攻。
サウジアラビアやパキスタンといった、どちらかと言えばイスラム感の濃い地域への出張が多い。
ビビりながらイスラム圏ビジネスの世界に足を踏み入れるも、現地の人間と文化の面白さにすっかりやられてしまった。
海外進出を考える企業へは、現地コネクションを用いた一次情報の獲得・提供、および市場参入のアドバイスを行っている。
現在はおもに日本製品の輸出販売を行っているが、そろそろ輸入も本格的に始めたい。大阪在住。
写真はサウジアラビアのカフェにて。