第26回 宝石の境目にある真珠の魅力

この対談について

母から受け継いだ指輪をネックレスに、片方なくしたピアスをペンダントに、思い出の詰まった2つのリングを溶かして1つに――。魔法のようにジュエリーを生まれ変わらせるジュエリー修理・リフォーム専門店「Refine」(リファイン)。代表の望月信吾さんに、お客様に感動を届けるジュエリーリフォームの魅力、そして波乱万丈な人生についてお聞きする対談企画です。

第26回 宝石の境目にある真珠の魅力

安田

前回、真珠の話が出ましたけど、考えてみると真珠って、宝石といっても鉱物じゃないですよね。それなのに昔から人気がある。


望月

そうですね。特に日本の「アコヤ真珠」は国内外で人気があります。

安田

アコヤ真珠ってアコヤ貝の中に核を入れて養殖するんですよね。ちなみにその「核」って何でできているんですか?


望月

「どぶ貝」という貝の貝殻を切って丸くしたものをいれて、1~3年くらいかけて養殖するんです。

安田

なるほど。それだけ聞くと長い気もしますが、他の宝石と比べると圧倒的に短いですよね。しかも養殖でも価値が高い。人工ダイヤはどんなに精巧でもイミテーション扱いなのに、真珠だとそうはならないのはなぜなんです?


望月

養殖真珠の立ち位置が絶妙なんです。ダイヤのようにラボで作るわけじゃなく一応は自然の中でできているわけで、「完全な人工物ではない」ところがミソなんですよ。

安田

ああ、なるほど。人工的に核を入れて貝の世話をしてるけど、生成そのものは自然の力を借りてるわけですもんね。うーん、でもなんだか屁理屈のような気がしなくもないですけど(笑)。


望月

そう感じる気持ちもわかります(笑)。ただ事実、天然の真珠と同じ成分で作られるわけで、そういう意味では本物と同じだとも言える。ちなみにアコヤ真珠は日本独自のものですが、他の貝でも同じように作れます。

安田

え? 例えばどんな貝で作られるんですか?


望月

タヒチで取れる南洋真珠は、白蝶貝や黒蝶貝といった大きな貝から作られます。黒蝶貝からできたものは「黒真珠」として有名ですね。

安田

ほほ〜。そういった中でもアコヤ真珠が特に人気なんですか。


望月

ええ。特にミキモトの創業者、御木本幸吉が開発した養殖技術が「メイド・イン・ジャパン」のブランド力を強くしてます。

安田

なるほどなるほど。それが中国で人気なんですね。ちなみに彼らは投資目的で買ってるんでしょうか? それとも純粋に「欲しい」という人が多いんですか?


望月

おそらく後者だと思います。売り方も上手いんですよ。中国のインフルエンサーたちが日本に来て、ライブ配信しながらスマートフォン一つで真珠をバンバン売りさばいたりして。

安田

へぇ〜、それはすごい。でもそれって、購入してその場で転売するってことですよね(笑)。


望月

そうですね(笑)。まぁ真珠業者にとっても、現金で買ってくれるのはありがたいので、ウィンウィンではあるんですけどね。

安田

昔は手形で取引していたと仰ってましたもんね。それが現金で買い取られるなら売らない理由はない、か。でも真珠ってなんとなく他のジュエリーより地味なイメージがありましたけど、そんなこともないんですね。


望月

そうですね。ここ2〜3年は日本の真珠業者はかなり利益を上げていると思いますよ。

安田

ちなみに店頭価格も10年前と比べて上がってるんでしょうか?

望月

上がってますねぇ。実際、仕入れ価格はここ数年で3〜4倍に跳ね上がってます。以前の価格ではとても手に入らない状況です。

安田

そういえば4年前に結婚10周年で「スイートテン真珠」を妻にプレゼントしようと考えて、銀座のミキモトまで見に行ったんです。そのときはたしか120〜130万円くらいだった気がします。

望月

ほ〜、それは素敵なことをされたんですねぇ。

安田

いやそれが、妻の気が変わって時計をプレゼントしたんです。あのとき真珠を買っていれば、すごく値上がりしていたかもしれないのに(笑)。

望月

確かにそうですね(笑)。ちなみに最近、過去に売った商品を小売店から買い戻す真珠業者も増えてるんですよ。

安田

なんと、それは驚きです。でも真珠って増産しようと思えばできるんじゃないですか? 養殖の規模を拡大すれば……

望月

理屈ではそうなんですが、海の状態などによって浜揚げの量がかなり左右されるので。そういう意味では農作物なんかと似ていますよね。

安田

ははぁ、なかなか難しいわけですね。

望月

そうですね。ちなみに最近は川や湖で採れる「淡水真珠」も養殖技術が進化して、品質の高いものが増えてきてます。

安田

ふ〜む、なんとか増産しようと頑張っていると。でもそれが実現してしまったら、真珠の価値が下がっちゃうんじゃないですか?

望月

真珠自体の価値が急落することはないと思います。真珠は有機物なので、10〜20年のスパンでは保管状態や使用頻度によって劣化してしまいますし。

安田

そうか。鉱物とは違って、硬くもないですし、経年劣化もあるわけですね。つまり一度買ったから永遠にそのまま残るわけではないと。

望月

ええ。ルビーやサファイアは何百年経っても変わらないですが、真珠はそうはいかない。そういう意味では、真珠を「宝石」と呼んでいいのかというのは議論の余地があるかもしれませんね。

安田

確かに、真珠ってジュエリー店じゃなくて真珠専門店で売られてますもんね。真珠の話、なかなか奥が深いなぁ。


対談している二人

望月 信吾(もちづき しんご)
ジュエリー工房リファイン 代表

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25歳で証券会社を退社後、父親の経営する宝石の卸会社に入るが3年後に倒産。その後独立するもすぐに700万円の不渡り手形を受け路頭に迷う。一念発起して2009年に大塚にジュエリー工房リファインをオープンして現在3店舗を運営。<お客様の「大切価値」を尊重し、地元に密着したプロのサービスを提供したい>がモットー。この素晴らしい仕事に共感してくれる人とつながり仕事の輪を広げていきたいと現在パートナー募集中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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