経営者のための映画講座 第56作『兵隊やくざ』

このコラムについて

経営者諸氏、近頃、映画を観ていますか?なになに、忙しくてそれどころじゃない?おやおや、それはいけませんね。ならば、おひとつ、コラムでも。挑戦と挫折、成功と失敗、希望と絶望、金とSEX、友情と裏切り…。映画のなかでいくたびも描かれ、ビジネスの世界にも通ずるテーマを取り上げてご紹介します。著者は、元経営者で、現在は芸術系専門学校にて映像クラスの講師をつとめる映画人。公開は、毎週木曜日21時。夜のひとときを、読むロードショーでお愉しみください。

『兵隊やくざ』に見る、No.1とNo.2の関係。

戦場を舞台にした娯楽映画として『兵隊やくざ』はとてもよく出来ている。勝新太郎扮する大宮は、入隊したばかりの新兵。しかし、腕っ節に自信があるので上官たちの言うことを聞かない。そして、三年兵である有田(田村高廣)は、インテリでもの静かな男。有田は、戦争に加担することが嫌でわざと幹部候補試験に落ち続けている。ここで、暴走機関車のような大宮と頭脳明晰な有田のコンビが出来上がる。

元々なんの共通点もないような二人だが、軍隊のような理不尽な組織が大嫌いだという思いは同じだ。有田は大宮の痛快なくらいに単純な思考回路とストレートな物言いを喜び、大宮は有田の自分の気持ちを言葉にする力に敬意を表する。最初は互いに持て余しながら困ったような付き合いが続くのだが、やがて二人には奇妙な友情が芽生えていく。

物語の初めのうち、観客はインテリである有田が粗暴な大宮をコントロールする様を見て楽しんでいる。つまり、会社でいうと社長がインテリな有田で、No.2が切り込み隊長のような大宮なのだ。しかし、大宮が有田の言うことを聞くのは、有田が自分に嘘を吐いていないときだけだ。少しでも軍隊の立場でものを見たり、長いものに巻かれるような素振りを見せると、大宮は平気で牙を剥く。大宮は上官に逆らって営倉に入れられることなど、微塵も恐れてはいない。

そんな大宮に、有田はやがて畏れのようなものさえ抱きはじめる。ここまで純真無垢なままで大人になった男を初めて見たからだ。このあたりからNo.1とNo.2が時折入れ替わる。純粋に嘘偽りなしに世の中を見ている大宮こそが推進力となり、その行く手を阻むものを排除するために有田が存在するようになるのだ。

『兵隊やくざ』は、軍隊を舞台にしながら、どちらが上とか下ではなく、互いに腹を割ることで、どちらの存在も不可欠な唯一無二の人間関係が生まれ、真の友情が生まれる様を見せてくれるのである。

著者について

植松 眞人(うえまつ まさと)
兵庫県生まれ。
大阪の映画学校で高林陽一、としおかたかおに師事。
宝塚、京都の撮影所で助監督を数年間。
25歳で広告の世界へ入り、広告制作会社勤務を経て、自ら広告・映像制作会社設立。25年以上に渡って経営に携わる。現在は母校ビジュアルアーツ専門学校で講師。映画監督、CMディレクターなど、多くの映像クリエーターを世に送り出す。
なら国際映画祭・学生部門『NARA-wave』選考委員。

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