第11回 「造園」は感性、「外構」は技術

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第11回 「造園」は感性、「外構」は技術

安田

中島さんは「ガーメント」という、「造園」と「外構」をミックスしたようなお仕事をされていますよね。


中島
そうですね。「造園」がいわゆる日本庭園のような庭を作る仕事なら、「外構」は駐車場や門柱や塀などを作る仕事で、その両方の側面があります。
安田

造園と外構って、必要なスキルが全然違うんじゃないのかなっていう気もするんですけど。そこはどうなんですか?


中島

違いますね。例えば造園だったら、一番重要なのはその人の持っている「感性」です。どういうお庭を作っていきたいかというイメージが大事なので。

安田

「美しい庭はこういうものだ」という感性がないと、庭師の仕事は難しいと。


中島
できないことはないでしょうけど、いい庭は作れないんじゃないかと思います。灯篭や大きな石のような素材ばかりが目立つ、調和のない庭になってしまうんじゃないかな。
安田
石を正確に積むとか、枯れないように木を植えるとか、そういう技術面が一番大事かと思っていました。それよりも美的感覚やセンスが必要なんですね。絵を描くことに似ているのかな。

中島
ああ、確かにそうかもしれません。
安田
絵の具を混ぜるのがうまくても、いい絵が書けるとは限りませんもんね。つまり、筆遣いとかよりもまず「どんな絵を描きたいか」が大事だと。

中島
仰るとおりです。空間のバランスを作るのが庭師の仕事なので。ただし、作り手の一方的な押し付けではいけません。そこに住む人に「どう感じてもらえるか」を大切にしないと。
安田
そういう意味では、向き不向きのあるお仕事なんでしょうね。造園を学びたいというお弟子さん希望の方もいらっしゃると思うんですけど、才能の有無はすぐわかりますか。

中島
一緒に仕事をしていて、「いい感性を持っているな」と思う人はいますね。木の種類や植え方は勉強して覚えればいいですが、もともとの感性は人それぞれですから。
安田
ということは、逆に何年続けても感性自体が身につくことはない?

中島
う〜ん、感性がゼロという人はいないと思いますから、いかに磨いていくかだと思いますね。私自身、石の積み方や張り方は何度もノートに描いて勉強しましたから。大中小のバランスなんかは特に。
安田
へぇ、ノートに描いて勉強ですか。学生時代を思い出しますね(笑)。

中島
そうですね(笑)。自然の石って1つとして同じものはないので、自分の理想通りの形の石が見つかるとは限りません。逆に言えば、どういう石を前にしても「この石ならこう使おう」っていうイメージが描けないと厳しいので。
安田
なるほど。ちなみにノートに書くというと、石の形を正確に描き写したりもするわけですか。

中島
もちろんそういうこともしましたね。石って360度向きによっていろいろな形に変わりますから、「この向きならはまる!」という角度を見つけるのはなかなか難しいんです。
安田
でも、1.5tもある石をコロコロと小石みたいに回して見るわけにもいかないじゃないですか(笑)。どうやって全体の形を把握するんですか?

中島
上に乗って歩いてみたり、クレーンで持ち上げてみたり。そうやって少しずつ把握していきます。1個の置き場所を決めるのに1時間くらいかかるときもあります。
安田
へぇ、石積みって大変なんですね。造園と外構に話を戻すと、造園は感性が大事だということですけど、外構の仕事には何が求められますか?

中島
「指示通りに高さを合わせられる」とか「コンクリートを平らにならせる」とか、技術的なことが多いかもしれません。造園では寸法がアバウトなこともありますが、外構は15cmと言われたらきっちり15cmなので。
安田

確かにそうですよね。たとえば排水溝を作るのでも、水が流れていきやすい最適な角度にしなきゃならないし。


中島
そうなんです。例えば駐車場をコンクリートにする場合は、1mで1.5cm下げていく、というのがセオリーなんですね。その角度だと、感覚的には平らなのに排水性もしっかり担保できる。
安田

ははぁ、まさにプロの知識ですね。ちなみに、元々修行されていた庭師の分野とはだいぶ感覚が違うと思うんですけど、中島さんみたいに造園も外構もできる人ってなかなかいないんじゃないですか?


中島
それは少ないと思います。お話したように、造園と外構では必要とされる技術も感覚も違うので。
安田
そうでしょうね。造園はできるけど外構は得意じゃないとか、外構は上手だけど造園は苦手という人が多いんでしょうね。
中島
そうですね。だから実際に家を建てるとなったら、造園と外構を別々の会社に頼むケースが多いと思います。
安田
中島さんのように造園も外構も一緒にやってくれる会社は多くないと。

中島
あるとは思いますが、最初から両方やっている会社は少ないでしょうね。造園会社さんが、仕事がなくなってきて仕方なく外構工事も請け負うようになった、というケースもあるので。
安田

ははぁ、なるほど。そういう話を聞くと、庭は庭、外構は外構で別の会社に頼むのがいい気がしちゃいますね。


中島
もちろん両方上手な職人さんもいらっしゃると思いますけど、やっぱり求められるものが違うので……
安田
聞けば聞くほど、それを両方できちゃう中島さんみたいな人は貴重なんだなと。岐阜にお住まいの方はラッキーですね(笑)。

対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

Facebook

高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから