この対談について
庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第2回 造園の修行は、桂離宮で。
第2回 造園の修行は、桂離宮で。
「家に着せる衣服の仕立屋さん」として庭や外構を作ってらっしゃる中島さんですが、今日はご自身の経歴について知りたいなと。最初は普通に就職されたんでしたっけ。
そうです。京都にある老舗の造園会社に入りました。
そこでの仕事は、いわゆる「庭師さん」だったんですか?
そうですね。いろいろな庭の手入れをさせていただいて。そこで庭についてイチから学ばせてもらった感じです。
たとえばどんな場所の庭を手入れするんですか?
そうですね、有名なところだと、桂離宮とか。
え!? 桂離宮って、あの桂離宮ですか? 日本庭園の最高峰じゃないですか。
そうなんです(笑)。京都の老舗なので、そういう有名所のお仕事もけっこういただいていまして。すごく貴重な経験をさせていただきましたね。
へぇぇ、すごいですね。ちなみにどんなことを学ばれたんですか?
庭については完全に素人の状態で入ったので、本当にイチからですね。日本庭園の木の切り方、植物の種類、それに落ち葉の掃除の仕方とか、そもそも庭ってどういうものなのかとか……技術的なことだけじゃなく、文化的な面も含めて一通り学ばせてもらいましたね。
なるほど。そもそもなぜ庭の仕事をする会社を選んだんですか?
昔からものづくりは好きで、庭造りにも興味を持ちました。それで庭師としてのキャリアを考えていると、父に「どうせなら庭園の本場で学んだらどうだ」と言われて、たしかにそうだなと京都の老舗を選んで。
結果、桂離宮の仕事もされているから、狙い通りですよね。ちなみにそこで何年くらい修行されたんですか?
丸3年ですね。その後、同じ会社の茨城の拠点に異動して、そこでさらに3〜4年働きました。
ということは、計7年くらい造園会社にお勤めになり、庭師としての技術を習得されたと。その後はもう独立ですか?
そうですね。社内独立という形で、その会社の仕事を請けながら自分でやり始めた形です。
その後、岐阜県の美濃加茂に移って、今のように庭だけじゃなく外構工事もやるようになるわけですよね。でも私、ちょっと不思議なんですよ。
不思議といいますと?
だって、京都のそんな老舗で、桂離宮とかで庭師をしていたわけでしょう? それなら生粋の庭師になりそうなものじゃないですか。つまり、外構工事にまで手を出さないんじゃないかと。
ああ、そうですよね。確かに京都ではいわゆる「庭師仕事」を中心にやっていたのですが、茨城に移った後は、割と外構の仕事も多くやらせていただいていたんです。
ああ、そうなんですか。ということは、「庭だけじゃなくて外構もやっていこう」と、会社として方針を変えられたわけですか?
それにはちょっとしたエピソードがありまして。実は当時、茨城の会社の社長が、TVチャンピオンという番組の「ガーデニング王」という企画で、2連覇したんです。私もアシスタントとして登場しているんですけど。
へえ!そうだったんですか。ということは中島さんもテレビに?
ええ(笑)。で、それまで会社としては、公共工事をメインにしていたんですね。衆議院議員の議長公邸の庭などを担当したり。でも、テレビで話題になったこともあり、今後は民間にも力を入れていこうとなりまして。
ははぁ、観光名所や施設なんかの大きな庭だけじゃなく、一般住宅の庭もやっていこうと。
はい。さらに言うと、その「ガーデニング王」で優勝をもらったのが、そもそもお庭と駐車場を一緒にデザインしたものだったんです。それでそういったお問い合わせをたくさんいただくようになって。
なるほど、つながりました。テレビをキッカケに「一般住宅向けの庭+外構デザイン」という商品がヒットし、結果中島さんも、そういった仕事にたくさん関わるようになったと。
仰るとおりです。そのころの経験やノウハウが、私の今の仕事に繋がっているんだろうなと。
そういうことなんですね。とはいえ、そもそも茨城の社長はなぜ庭と駐車場を一緒にしようと思ったんですかね。それまでは基本的に、外構は外構、庭は庭、と分かれていたわけでしょう?
そうですね。それは前回お話したこともつながるのですが、テレビ出演したのはちょうど、家が土地のどちらかに寄せられて、玄関前に駐車場と庭を並べて作るようになってきた頃なんです。
ははぁ、なるほど。だからその2つを丸ごとデザインしようと考えたわけですね。ただコンクリを張るだけじゃ味気ないから、庭と一体化したような駐車場を作ってしまおうと。
仰るとおりです。それが当時はまだ珍しくて、すごく評価いただいたと。
でもいまふと思ったんですが、駐車場や庭が北側になってしまうケースもあるんじゃないでしょうか。駐車場は関係ないとしても、木や花は日当たりが悪くて枯れちゃうんじゃないですか?
ああ、それは大丈夫なんです。温暖化の影響で、むしろ北側の方がちょうどよく育ってくれるくらいで。
へぇ! そうなんですか。ということは、私たちが思っているほど木は日光を必要としないってことなんですかね。
植える木にもよるんですが、今の主流が、いわゆる雑木(ぞうき)と呼ばれるものなんですね。それはもともと、山や林で集まって生えている木なんです。そういう所だと間隔を開けずに生えているので、日が当たるのは頭の方の一部だったりするわけです。
ああ、なるほど。そもそもあまり日光が必要ない種類だし、温暖化で気温も上がっているから、北側でも問題ないんですね。
そういうことです。日当たりのいい南側だとむしろ日光に負けて弱ってしまう木もありますし。
へええ、おもしろいなあ。じゃあ、最近は南側に庭を作ろうという人はあまりいないんですか?
いえ、まだ敷地南側が空いているのが主流ですね。でも、今後温暖化でますます暑くなることを考えると、北側が空いてもいいと思います。いずれにせよ、配置に合わせた最適な提案をさせていただければと。
なるほど。普段なかなか聞けない話なのでおもしろいです。来週も引き続き深掘りさせてください。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。