第31回 お庭に3年間のメンテナンスが必要な理由

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第31回 お庭に3年間のメンテナンスが必要な理由

安田

direct nagomiさんにお庭づくりをお願いすると、3年間のメンテナンスが付いてくるんですよね。その3年というのは何か理由があるんでしょうか?


中島

木の成長に合わせて、バランスを見ながら3年かけて形を整えていくんです。一般の方からすると、そこまで大きな違いは感じないかもしれないですけどね。

安田

ああ、つまり3年かけてお庭を完成させていくイメージなんですね。


中島
もちろん引き渡しの時点で一旦の完成ではあるのですが、樹木などは自然のものなので、3年かけてよりよいバランスに仕上げていく感じですね。
安田

ちなみに素人が自分で切ったり、ネットで探した安い剪定屋さんにお願いしたりすると、仕上がりは全然変わっちゃうわけですか。


中島

変わってしまいますね。自然な形ではなくなってしまうというか。

安田
自然な形ではなくなるというと、具体的にはどういう事が起こるんですか?

中島
一番わかりやすいのは、枝や葉の切り口ですね。見るからに「切りました」という感じになってしまいます。そうならないよう自然に切るのが職人の技術で。
安田
ああ、なるほど。つまり素人の剪定は、お母さんが息子の頭をバリカンで角刈りにしちゃったみたいな感じですか(笑)。

中島

極端に言うとそうなりますね(笑)。不自然にカチッとした形になってしまうことが多いです。

安田

なるほどなぁ。ちなみに、1回でも他の人が切ってしまうと元に戻すのは大変なんですか?


中島
切る場所にもよりますが、そこから自然な樹形に戻そうとすると、最低3年くらいはかかると思います。
安田

へぇ! 3年もかかるんですか。でも確かに髪と同じで、伸びるのを待ちながら整えていくわけですもんね。そういうお話を聞くと、お庭は生き物という感じがしますね。


中島

ええ。特に木は途中で枯れてしまうこともありますので、年に一度は様子を見せていただいて、それを踏まえて年末に剪定するのがいいと思います。

安田

なるほど。ちなみに3年間のメンテナンスが終わった後、4年目以降もお願いできるんですか?


中島
もちろんです。その場合はお庭の大きさにもよりますが、だいたい1回3~4万円で承っています。
安田
ということは、月3,000円くらいできれいなお庭が保てるわけですね。バリカンで刈ったような庭にされることを考えれば、全然安いですよね。

中島

そうですね。そこにはお金をかけてあげてほしいです。庭もキレイにしてもらっていた方が嬉しいでしょうし。

安田

ちなみに、プロに頼まず自分で切っちゃう人も多いんですか?


中島
多いですね。「ここがちょっと伸びてるな」と気になったところを、ご自身でカットされたりとか。
安田
ああ、なるほど。でも手の届かない高いところは切れないですよね。

中島
そういう場合、手の届く場所からバッサリ切っちゃったりするんですよね。それで、本来であれば残しておきたい部分がガサッとなくなってしまったりする。結果、なかなかキレイな形で成長させてあげられなくなってしまうんです。
安田
ああ、なるほどなぁ。確かに職人さんは木に登って高いところを切ってますもんね。中島さんも登って切ることはあるんですか?

中島

ええ、もちろんです。はしごを使って切ったり、木登りして切ったりもします。

安田

へぇ! じゃあ木登りが上手じゃないと造園はできないですね。

中島

そうかもしれません(笑)。とはいえ、のような登りにくい木じゃなければ、意外と皆さん登れると思いますよ。もっとも、樹の形をイメージしながら切るのには技術がいるので、登れればOKということでもないんですが(笑)。

安田

そりゃそうですよね(笑)。どこを切ったらどう形が変わるのかわかってないとダメですもんね。それはさすがに素人ではできないですよ。

中島

そうですね。ちょっと修行してもらわないと難しいと思います(笑)。


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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