第5回 目指すのは10年後に100点になる庭 

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第5回 目指すのは10年後に100点になる庭

安田
今日もお庭の話を深掘りしていきたいと思います。ワインでも長く熟成したものの方が高くなりますけど、お庭だと何年くらい先をイメージして作っているんですか?

中島
お庭だとだいたい10年後ぐらいですかね。定期的にメンテナンスに入らせてもらうのが前提になりますけれど。
安田
年に1回メンテナンスしながら、10年かけてイメージ通りの庭に仕上げていくイメージですか。

中島
できれば年に3回くらいメンテできるといいですね。枝の伸び方を見ながら細かく調整していけるので。
安田
へえ。けっこう頻繁にメンテするんですね。

中島
枝って、切ると切ったぶんだけ枝葉を伸ばそうとするんですよね。ですから伸びる比較的短いスパンで訪問して調整する必要があるんです。どこをどう伸ばそうとか、逆にここはもっと切ろうとか。
安田
なるほど。最初から思い通りの形になっている木なんてそうそうないですもんね。ちなみに木以外の部分も、そうやって年数をかけて完成させていくんですか?

中島
やっぱり木がメインですけど、石に苔が付いて風化していったりとか。
安田
あぁ、苔もそうですよね。そういう意味では木も石も苔も、お庭の中で少しずつ成長していくわけですね。

中島
ええ。お客さんからも、年を重ねる中で緑がよく茂ったり、バランスが良くなってきたと喜んでいただいています。
安田
お客さんには、「年数をかけて育てていくんだよ」ということも説明するんですか?

中島
いや、そこはあえてお伝えしてません。最初の時点で、できるだけ理想に近い形を作ろうとはしますので。
安田
なるほど。ちなみに10年後に100点になるんだとしたら、最初の時点では何点ぐらいなんですか?

中島
もちろんお客様にとっての100点を目指して作りますけど、庭師の目線で言えば……そうですね、50~60点ですかね。
安田
へぇ、お客さんにとっては100点でも、中島さんの中では半分の出来なんですね。

中島
そうですねぇ。まあ、私は庭ばかり作ってきている人間なので、やっぱり目も厳しくなってしまうというか。
安田
最初から理想的な形になっている木を持ってくることはできないんですか?

中島
なかなか簡単ではないですが、例えば大きい木を植えたその下に、わざと枝が斜めに伸びた一本を持ってきたりはしますね。
安田
それはどうしてですか?

中島
大きな木の影になると、太陽光があまり届かないわけです。だから下の小さな木は、日光を求めて(大きな木の枝をかいくぐるように)斜めに伸びたりするんですね。
安田
ああ、なるほど。つまり何年後かの姿を想像して、最初からその姿に近しい木を植えると。

中島
仰るとおりです。でも、そんなに都合よい形のものが見つかるかはわかりませんし、仮に見つかったとしても、そのあと想定外の成長をすることもあるので。
安田
その場で自然に伸びていったものと、伸びた“風”に植えたものではまた違うんでしょうね。

中島
そうなんです。そういう面も含めて、いいお庭を作るにはやっぱりある程度の時間がかかります。
安田
ちなみに10年後に100点になって、その後はさらに101点、102点のお庭になっていくんですか? それとも100点を迎えた後は99点98点と減っていくものなんでしょうか。

中島
どこまで手入れをするかによりますね。大きい庭園って1ヶ月に何人も管理に入るんですよ。そこまで大きなお庭でなくても、1ヶ月に1回くらいは手入れをした方がいいですね。木の成長にも個体差がありますし。
安田
同じように植えても、なぜか1本だけすごく大きくなるとか。

中島
そうなんです。植える場所によっても全然違いますし。土との相性、なんてものもあります。
安田

へぇ。相性が悪い場合は、引っこ抜いたりもするんですか。


中島
さすがに引っこ抜くことはありませんが、状況に応じた手入れをしていく必要はありますね。
安田
2本の木を同時に植えたとして、1本は年に1回の手入れでいいけど、もう1本は年に2回手入れしないといけない。そんなことも起こってくるってことですね。

中島
ええ。植物も生き物なので、なかなか思い通りにはいかないです。
安田
ともあれ、きちんと手入れをすれば10年後以降も綺麗なお庭を維持できると。

中島
そうですね。100点が200点になることはありませんけど、綺麗な状態を維持することはできると思います。
安田
そうすると、20年後や30年後もあまり変わらない状態で維持できるわけですね。でも確かに、お寺の庭なんかは何百年と経っているのに綺麗ですもんね。

中島
ああ、確かに。イメージは近いですね。
安田
綺麗なお庭を維持する上で大事なことはありますか?

中島
大事なのは、以前もお伝えしましたが「空間のバランス」ですね。全体が鬱蒼と茂っているのではなく、空間の中で「開いてるところ」をしっかり作ってあげるというか。
安田
なるほど。100点のお庭を維持するにも、やっぱり全体のバランスが大事だということですね。

対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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