第39回 これからは女性的マネジメントの時代がくる?

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第39回 これからは女性的マネジメントの時代がくる?

安田

日本でも女性政治家や女性経営者の割合が増えてきましたね。とはいえそういう人たちって、語弊があるかもしれませんが「男っぽいマインド」の人が多い気もするんです。


中辻

あはは、なるほど(笑)。女性だけど中身は男性、というか。

安田

そうそう。中辻さんはどうですか? ご自身は「男性的女性リーダー」なのか「女性的女性リーダー」なのか、どちらだと思われますか。


中辻

根本の性格はかなり男性っぽいと思います。白黒ハッキリしていますし、決断も早い方ですし。例えば洋服屋さんに行った時も「これ欲しい。よし、買おう」と滞在時間10分ほどですから(笑)。

安田

笑。そんなに速いんですね(笑)。経営やマネジメントに関してはどうでしょうか。


中辻

そちらも男性的だと思います。部下に注意をする場面でも、ズバっと指導して、スパッと終わる。いつまでもダラダラ言い続けないですね。

安田

へえ、さっぱりしていますね。


中辻

そうかもしれないですね。ただ、自分で言うのもなんですが、相手が今何を考えているのかなとか、そういう細かいことを察する能力は男性よりも長けていると思っています。

安田

そうですよね。女性はそういうコミュニケーション力が男性より優れていると言われていますし。そういう意味では、中辻さんのマネジメントもすごく女性的な印象を受けます。きっと「男性的」と「女性的」をうまく使い分けているんでしょうね。


中辻

どうでしょう。自分ではそんなに意識していませんが(笑)。私自身が、気持ちを察してくれることを嬉しいと感じるし、察してくれた人に対して信頼感が増すんです。だから部下にも同じことをしてあげたいんですよ。

安田

なるほど。ちなみに中辻さんの会社は全員女性社員ですが、声がけをする際になにか特別に意識していることはあるんでしょうか。


中辻

社員みんなを「チーム」として考えているので、個々人の目標を追いかけるよう発破をかけることはせず、全体に対して「売上何億を達成して、利益はこれだけ作ろう」というような声がけをするようにしています。

安田

やっぱりそうですか。女性は男性とは違って、チームで目標を追いかけたり、ちょっとしたことでも日々褒められたりする方がモチベーションが上がりやすいんだそうです。中辻さんは自然にそれを実践されているんですね。


中辻

そうなりますかね(笑)。

安田

今ってもうずいぶん長い間、男性リーダーが幅を利かせている時代が続いていると思うんです。ただ昔から「男性の時代」と「女性の時代」は1000年くらいの周期で交互にやってくると言われているそうなんですよ。


中辻

へえ、そうなんですね!

安田

はい。だからもうそろそろ「男性的マネジメント」が限界に来ているんじゃないのかなと。男性って勝ち負けにこだわるからすぐに争いが起きるんです。すべての国のトップが女性になったら、戦争なんてなくなりますよ、きっと。


中辻

ああ、それはわかる気がします(笑)。とは言え、男性的なマネジメントでないと難しい業種もあるんじゃないかなとは思いますけど。

安田

ほう、たとえばどんな業種ですか。


中辻

不動産業界とかIT業界とかですかね。そういう業界って、利益主義というか、現場で叩き上げていくような側面がまだまだ色濃く残っているのかなと。

安田

確かにそうですね。「男は外でバリバリ働いてガッツリ稼げ」というような風潮があるのは否めない。


中辻

一方で、ウチの会社は全員女性スタッフということもありますが、ワークライフバランスを大切にしている人が多くて。

安田

家庭やお子さんのことと両立させながら仕事をしたい、と。


中辻

仰る通りです。そして私自身もそこを重要視して会社を経営しています。最近では男性も家事・育児に積極的に関われるように、ワークライフバランスについて考えている大手企業が増えているって聞きますね。

安田

確かに今って、若い世代になればなるほど男性社員が女性化しているんですって。周りとの調和を優先したり、家庭第一に働きたい人が増えていると。だからもう「俺についてこい!」という社長にはついていかないんでしょうね(笑)。


中辻

笑。それで言うと、ウチの会社は「私についてこい!」なんて言わなくても、みんなが私のことを信頼してくれて、同じ目的に向かって仕事をしてくれているんですよね。だから自然とうまく会社が回っているというのはあるかもしれません。

安田

いいですね。それが理想ですよ。


中辻

ありがとうございます(笑)、企業として社会の役に立つためにお仕事をしているのは大前提ですが、私個人としては、昔のように娘を犠牲にした働き方はしたくないので、今は娘を幸せにするために日々仕事をしているという感覚です。何よりも娘が大切なんです……。

安田

経営者でそれが言えるのはすごいことですよ。それは社員さんにもそうやって伝えているんですか。


中辻

はい、もちろん。私が、娘と幸せに休日を過ごすために仕事をしているって、部下のみんなが知ってくれていますし、みんなも家族で幸せに楽しく暮らすために仕事をしているはずです。

安田

なるほどなぁ。そういうことを経営者が明確に言ってくれることで、社員もスッキリするでしょうね。


中辻
ただ価値観は人それぞれなので、自分の考えを大切にすればいいと思います。実際、私の知り合いの男性も、「バリバリ営業してお金をたくさん稼ぐことで、家族に大きな幸せを与えることになる」って考えている人もいますし。
安田
お金を稼ぐために仕事をするという価値観が間違っているわけじゃないよ、ということですね。

中辻

そうです。実際私も印刷会社で働いていた時は、娘を会社に連れて行って、横で寝かせながら働いていましたから(笑)。あれは完全にお金を稼ぐために娘を犠牲にしていました。ただもうそれはしたくないと思って、今のスタイルにたどり着いたというか。

安田
お金のために働くことを経験しているからこそ、今の「家族のために働く」ことの重要さに気づけたというわけですね。

中辻

そうなりますね。ただこんなの、バリバリやっている男性経営者の方からしたら、甘いと言われるでしょうけど(笑)。

安田
いやいや、私は全然甘いとは思いません。むしろ、家族のために働きたい人が増えている今、経営者側もそちらに切り替えていくべきなのでしょうね。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

Twitter

1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

感想・著者への質問はこちらから