第9回 「女性だけ」の会社を作った理由

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第9回 「女性だけ」の会社を作った理由

安田

今日は、中辻さんの発想法というか、思考法についてお聞きしようかと。


中辻

そんなに難しい話はできないですけど(笑)。

安田

私ね、これからの日本の会社は「女性が心地よく働ける」ことが必須だと思っているんですよ。


中辻

私もそう思います。

安田

これまではどちらかというと、男性の働き方に合わせないといけないところが多かったですよね。だからママさんやシングルマザーを活用できている会社って、あまり無いんじゃないかと。


中辻

たしかにそんな気はします。

安田

中辻さんの会社は全員女性で構成されているわけですが、それはなぜなんでしょうか。


中辻

一言で表すのは難しいんですが…。やはり私自身が過去に経験した「働きづらさ」がベースになっているとは思いますね。

安田

16歳で出産して、17歳・18歳でシングルマザーになって…という経験から?


中辻

そうです。その時に一番困ったのは、働く時間や休日の制約が生まれてしまうことだったんですね。

安田

ああ、なるほど。


中辻

シングルマザーでもそうじゃなくても、正社員で働きたい女性は、基本的にはやっぱり男性と同じように働いて、同じくらいの収入を得て、経済的に自立したいと思っているんです。

安田

でも、お子さんが小さいと長時間働いたり土日も働いたりっていうのは難しい、と。


中辻

そうですそうです。だから会社が女性をうまく活用するには、まずはそこに寄り添ってあげないといけないんだろうなと。

安田

ということは、働く時間帯をある程度、柔軟に調節する必要があるということですか?


中辻

そう思います。たとえば、業務時間は8時間なら8時間、拘束されていいと思うんです。でも何時から何時まで働くかというのは、社員1人ひとりにフレキシブルに対応してあげていいんじゃないかと。

安田

保育園の送り迎えの時間に合わせて時差出勤する、とか?


中辻

まさにそうです。でも「ウチは9時18時で固定だから。それ以外は無理」というように凝り固まっている会社が多いな、と。私自身も何回もそういう思いをしたんです。その会社や仕事にすごく興味はあるのに、子どもの時間の都合で諦めざるを得ない…みたいな。

安田

なるほど。とは言え、最近は時間に柔軟性を持たせようという発想の会社も増えてきていると思うんですが。まだまだ足りませんか?


中辻

そうですねえ。大前提として、日曜や祝日は働けないっていうお母さんが多いんですよね。そうなってくると、どうしても就ける職種が限られてきてしまうのかなとは思います。

安田

ちなみに中辻さんの会社では、どういった取り組みをしているんですか?


中辻

ウチは、事務所の横にガラス張りのキッズルームのようなスペースがあります。どうしても土日に働かざるを得ないという時でも、お子さんの顔を見ながら仕事ができる環境にしているんです。

安田

子どもが預けられないから土日に働けない、ではなく、土日に働きたければ子どもを連れてきちゃえばいいよ、という発想ですか。


中辻

そうなりますね。せっかく働きたいのに子育てが理由で働けない、という状況を作らないようにしているつもりです。

安田

突然子どもが風邪を引くとか保育園から呼び出しがあるとか、同じ立場の人であれば「お互い様」という感覚でうまくいくのかなあと思うんですが、その辺りはどうお考えですか?


中辻

それは大いにありますね。ウチの会社にも小さいお子さんがいるお母さんも多いので、そういう状況もよくあります。ただ、そもそもの前提として、特定の人が欠けただけで仕事が全然回らなくなるという会社づくり自体、直したほうがいいと思うんですよ。

安田

というと?


中辻

社員みんながどの分野でも活躍できる状態にしておくべき、というか。急にお休みされた時に、もちろん人手は減るけれど、その人がいないから仕事が進まないという状況を作らないようにしておくんです。

安田

なるほど。そうすることで、結果的に柔軟に対応できるというわけですか。ちなみにほとんどの会社は男性、女性、その女性の中でも子どもがいる・いないなど、いろいろな方が混ざっていますよね?


中辻

はい、そういう組織がほとんどですね。

安田

そうすると子どもの都合で急に休んでしまった場合、「また休むの?」と思われているかも、と気になると思うんです。だからいっそのこと、子どものいるママさんとそれ以外の人たち、という風に組織として分けるべきだと思います?


中辻

そうですねえ…。そもそも私が子育て世代のお母さんたちを正社員として採用しているのって、そういう方の事情などについて理解が浅い会社が多いと感じているからで。

安田

確かに。男女問わず育休が取れたりするような大企業であればまた違うでしょうけど、中小企業となるとなかなか理解が進んでいないかもしれませんね。


中辻

お子さんが小さくても社会に出たい、自立して働きたい、というお母さんって、その気持ちや困りごとなどを会社が理解してあげると、ものすごく頑張って働いてくれるんですよ。

安田

なるほど。それはつまり会社側と、雇われている人たちが同じ方向を向くことが大切だということですか。


中辻

ええ。私目線ではありますが、ウチの社員さんたちは、私が良かれと思ってやっていることに対してはすごく賛同してくれたり、ありがたいと思ってくれているんです。そして、それと引き換えに、普段100%で頑張る仕事を120%の力で頑張ってくれている。

安田

両者が同じ方向を向くことで、有意義に仕事ができ、結果として会社の利益に繋がっているというわけですか。


中辻

はい、そう思います。社員の置かれた状況を理解するというより、社員さんが幸せに働けることが、会社のためになるということを知っていただきたいですね。

安田

幸せを感じた社員さんが一生懸命に能力を発揮してくだされば、会社としてもお得ですよ、ということですね。


中辻

金銭的に自立したいと考える女性って、本当はバリバリ表に出て働きたいのに、いろいろな制約があって働けない、ということが多い。でもそういう志の高い女性にこそ、うまく社会で輝いてもらいたいと思って、私は会社づくりをしているんです。

安田

なるほど、よくわかりました。次回はそういった人材をどう採用して、どう活用するのかについて、もう少し掘り下げてお聞きしたいと思います。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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