第69回 オーナー株主と良好な関係を作るコツ

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第69回 オーナー株主と良好な関係を作るコツ

安田

今日の対談テーマは、ひょっとしたら中辻さんが答えにくいことかもしれないんですが…。


中辻

え、なんですか? 私、あんまりNG項目はないですよ(笑)。

安田

じゃあ遠慮なく…(笑)。本日は「オーナー株主と上手く付き合うコツ」を教えていただこうかな、と。


中辻

あ〜なるほど。つまりマメノキカンパニー代表の久保さんとの関係性について聞きたいということですね。

安田

そうですそうです。中辻さんは株主である久保さんに雇われて、マメノキカンパニーの経営全般を任されていますよね。つまり言ってみれば「プロCOO」です。そういう立場にいる人って、オーナーとうまくいかないケースが多いらしいんですよ。


中辻

へぇ〜そうなんですね。

安田

ええ。個人的には「うまくいくことなんてほとんどない」くらいの印象で。でも中辻さんと久保さんはうまくいっているように見えるんですよ。


中辻

そうですね。うまくいっているんじゃないかな。でも皆さんこんなもんなんじゃないんですかね。

安田

いやいや、そうでもないんです。中小企業のオーナーさんって一癖二癖ある方が多くて、「俺流」のやり方にすごくこだわったりする。結果、「プロCOO」が論理立てて話しても納得してくれなかったりして、どうしても対立しちゃうわけです。


中辻

そうなんですねぇ。うーん、私は別に久保さんと付き合いにくいと思うことはないなぁ。というか、基本的に私の好きにやらせてくださるので、対立しようがないというか…。

安田

確かにそういう印象もありますね。とはいえ、過去に一度もなかったわけじゃないでしょう? 自分のやりたいことにNGを出されたり、仕事の進め方や会社の方向性などで意見の食い違いが起こったり。そういうことで軋轢が生まれたことってないのかなと。


中辻

うーん…記憶にないですね(笑)。久保さんってびっくりするくらい何も干渉してこないんですよ(笑)。

安田

そうなんですね(笑)。そもそもオーナー社長は、ある程度事業を形作った状態で「プロCOO」に引き継ぐパターンが多いんですよ。だからオーナーはあれこれ口を出したくなったり、自分が作ったものを壊されないようプレッシャーをかけたりしちゃう。


中辻

あぁ、そうなんですね。私は『日本ポスティングセンター』をゼロから立ち上げているので、またちょっと状況が違うのかもしれません。

安田

私がすごいなと思うのは、まさにそこなんです。中辻さんは事業をゼロから立ち上げて、営業も納品も採用も育成もマネジメントもやっていますよね。でもね、そんなに全てをやってくれる人って、滅多にいないんですよ!


中辻

確かにそう言われればそうかもしれないですね(笑)。

安田

こうして対談していていつも思うのが、中辻さんはご自身の希少価値をあまり理解されていないんじゃないのかなと(笑)。だからこそオーナー株主の久保さんとうまくやれているのかもしれませんが。


中辻

笑。それで言うと、私は「自分で考えた道筋で自分の好きなようにやりたいタイプ」で、久保さんは「細かいことにいちいち口出しはしたくないタイプ」なんです。そういう2人だからこそ、うまく噛み合っているのかもしれないですね。

安田

確かに久保さんって、「終わりよければ全て良し」と捉えるタイプですもんね。逆に言えば、過程についてはあまり口出ししない。


中辻

ああ、まさにそんな感じです(笑)。会社設立から2年目あたりまでは試算表をチェックしてくれていましたけど、3期目からはもう決算書しか見なくなりましたからね(笑)。今年は決算書すら見てないかもしれない(笑)。

安田

それはすごい信頼感だ(笑)。ともあれ実際マメノキカンパニーさんって、設立1年目から黒字だったんですよね?


中辻

そうですね。2期目だけ100万円弱の赤字になってしまいましたが、その年以外はずっと黒字経営を維持できています。

安田

素晴らしい。1年目から自分の給料も稼ぎつつ会社としても赤字にしていない。これがいかにすごいことかって、中辻さん、ちゃんとわかっていますか?(笑)


中辻

いやいや、そんな…ありがとうございます(笑)。でも最初の2年間くらいはペイント王におんぶに抱っこ状態でしたよ。事務所はペイント王の2階を格安で借りていましたし、配布スタッフさんのGPS端末や会社の保険なんかの契約もペイント王名義で契約してもらっていたくらいですから。

安田

設立当初はある程度仕方ないですよ。でも今は国道沿いに立派な自社ビルも構えていらっしゃいますし、GPSや保険だって3年目からは全てマメノキカンパニー名義で契約できたわけですよね?


中辻

そうですね。3期目あたりからは銀行さんとも「マメノキカンパニー」としてお付き合いさせてもらえるようにはなりました。

安田

いやぁすごい。ちなみに今7期目に入ったところだと思いますが、売上1億円を超えたのは何年目でしたっけ?


中辻

4年目で約1億1000万円でした。

安田

それが最新の決算ではどうなりました?


中辻

1億9000万円くらいでした。惜しくも2億円に届かず、といったところで…。

安田

素晴らしいですね。久保さんは経営をほぼ丸投げしている間に2億円の会社ができていたわけですよ? 中辻さんとしたら、ちょっとくらい現状に不満を持ったりなんかしないもんですか?(笑)


中辻

不満…全然ないですねぇ(笑)。いつも好き勝手やらせてもらってありがたいなという気持ちしかないです。…あ! 今、お話ししながら思い出しましたが、そういえば最初の頃は、私もよく久保さんと喧嘩になっていました!(笑)

安田

思い出しましたか!(笑)


中辻

はい(笑)。2年目くらいまでは私のやり方にあれこれ口出しをされて、そのたびに口論になっていました。「現場で直接お客さんとコミュニケーションも取ってないのに、そんなにいちいち言わんといてください!このわからずや〜!」みたいな(笑)。

安田

笑。とは言え、着実に実績を積み上げてきたからこそ、3年も経った頃には完全に信頼して任せてくれるようになったんでしょうね。


中辻

そうですね、ありがたいことです。とは言え株主は久保さんなので。最終的に久保さん自身が「この意見を通したい」と言われた時には、それを立てるようにはしています。…今はもうそういうことすらほとんどないんですけど(笑)。

安田
なるほどなるほど。今日は少し話しづらいテーマかもしれないと心配していましたが、いろんな裏話をお聞かせいただきありがとうございました(笑)。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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