第61回 AI時代の未来をどう考えてます?

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第61回 AI時代の未来をどう考えてます?

安田

西崎さんはAIとどう付き合っています? そのあたりを今日はお聞きしたいんですけど。


西崎

AIですか。実を言えばそこまで詳しくないんですけどね。

安田

あ、そうなんですか。私も大したことはないんですが、ChatGPTは日常的に使っていて。今まではネットの情報をとにかくたくさん集めてくる、って感じでしたけど、最近はすごく精度が上がっている。市場調査なんかもパッとできてしまうし、ブランディング業界でもどんどん使われるようになるんじゃないかと思って。


西崎

それでいうとトゥモローゲートでも普通に使ってますよ。会社名を入れるだけで、昔なら有料で調べてもらわないといけなかったような情報がパッと出てきますし。

安田

そうなんですよね。それこそコンサル会社に頼んだらものすごい請求が届きそうな情報が、無料で手に入ってしまうんですよ。となるとブランディング会社としては、AIに調べてもらった情報を整理して、企画に落とし込むみたいなところを担当するわけですか。


西崎

もちろんケースバイケースですけどね。中には企画設計の工程にもAIを使っていたりしますよ。

安田

へぇ、なるほど。でも実際なんでもやってくれますもんね。商品開発のアイデアとかも、瞬時に何十個も出てきたりする。


西崎

そうですよね。もちろんそのままクライアントに見せれる精度ではなかったりするので、まだ人間の脳みそを経由しないといけないわけですけど。ただそれも時間の問題なのかなって気はしてますね。

安田

最近の成長速度を見れば、12年もしたら企画書も人間より上手になりそうですもんね。デザインなんかにしても、デザイナーが自分で作るっていうより、AIが出してきたものを選ぶ仕事になりそうな。


西崎

あり得ますよね。現状でもWebサイトのたたき台なんかはAIで作ったりしますから。コンセプトはこれでターゲットは誰で、どういうことを達成したいかって入力すれば、AIWebデザインを出してくれる。しかもそれが全然見当違いかというと、そんなことなくて。

安田

そうですよね。でも仕事ってそうやって変化していくもので。例えば私が社会人になった頃なんて、まだパソコンも普及していない時代で。当時のデザイナーというのは、画用紙に絵の具でイメージ図を書いて、それを写真にとって取り込んでみたいな仕事だったわけです。場合によっては紙粘土とか工作とかもして。


西崎

なるほど。パソコンの前に座ってIllustratorPhotoshopで作業する、みたいなこととはまるで違ったわけですね。

安田

そうなんです。逆に言えば、そういう今のデザイナーさんは、パソコンがあればデザインできるけど、絵を描いたり紙粘土で何かを作ることはできなかったりする。でもデザイナーとしては困らず喰えているわけで、つまり時代によって求められる技術が変わっているわけですよ。


西崎

確かにそうですよね。つまりAIでのデザインが当たり前になれば、それはそれで求められる技術が変わってくると。

安田

そうそう。AI時代になれば、実際に手を動かしてデザインする能力より、AIを使いこなすためのプロンプト能力の方が価値が上がると思うんです。生成AIも、どういう指示を出すかで結果がものすごく変わるじゃないですか。


西崎

全然違いますよね。適切なプロンプトを書けるというのは、確かに重要なスキルになる気がします。ただ一方で、「AIの使い方が上手いだけ」では成り立たない部分もある。例えば僕らの仕事にしても、クライアントの業界知識がない人がいくらAIを使っても、いい企画は作れないわけで。

安田

確かにそうですね。そういう意味では人間の脳みそもまだまだ必要なんでしょう。それにAIについても、これだけいろんな会社がどんどん最新バージョンを発表していると、精度はどんどん高まっていく一方で、価値はいずれ暴落すると思うんですね。要するにAIがコモディティ化するタイミングがやってくる。


西崎

そうなるでしょうね。そしていろいろな業界がその影響を受けることになるんだと思います。

安田

そうですよね。ちなみにブランディング業界はどうでしょう。AI価値の暴落とともに、ブランディングの価値も落ちると思いますか?


西崎

ブランディング全体というより、先程も出たデザインは確実に影響を受けるでしょうね。でもそれはデザイン自体の価値が落ちるということではなくて、ニーズに応じて二極化するだろうなという意味ですけれど。

安田

ほう、どう二極化するんでしょう。


西崎

しっかり人間が介在して時間をかけて作っていくものと、AIをフル活用してとにかく早く安く作るというものと。AIの価格が下がれば下がるほど、後者はレッドオーシャン化していくんだろうなと思います。

安田

なるほどなるほど。確かにそうなるでしょうね。


西崎

あとはマーケティングの分野でもAI活用は進むと思います。数字を分析したり解析したりって、まさにAIが得意とするところじゃないですか。将棋で言えば、10手も100手も先が読めるわけで。

安田

ああ、確かにそうですよね。人間のようにミスもしないし。ちなみに「AIでは代替できないだろう」という領域はありますか?


西崎

うーん、「絶対に代替されない」というレベルで言えば、ないんじゃないでしょうか。逆に安田さんは思いつきますか?

安田

いわゆるニッチな分野というか、「100人いたら1人にしか刺さらない」みたいなものは、やっぱり人間にしかできないような気もしますね。損得とか優位性とかから離れた分野というか。


西崎

なるほどなるほど。要するに感情とか本能とか、そういう部分ですよね。「よくわからないけど好き」みたいな。

安田

そうそう。うーん、でもどうだろうな、そういう部分すらAIは理解して、そのうちできるようになっちゃう気もします。最近は作曲とかもできちゃうじゃないですか。しかも、「この人が作ったような曲を作って」と言えば、それっぽくできてしまう。もう正直、AIがどこまでいくかは想像できないですよね。


西崎

本当にそうですね。僕自身、これはノストラダムスの大予言じゃないですけど、もう10年後の世界なんて誰も予測できなくなっているなと思っているんです。考えれても12年くらいなもんだろうなと。

安田

確かに確かに。「すべての仕事がAIに奪われたらどうしよう」とか、そんなこと考えててもしょうがないですもんね。


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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