原因はいつも後付け 第49回 「売れてるお店を真似しても売れない訳」

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原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

《第49回》売れてるお店を真似しても売れない訳

私はこのコラムやSNSなどで自分の過去の失敗体験を書いています。
もしかしたらこのコラムを読んでいただいている方の中には、そんな私の失敗体験を読んでこう感じている方もいらっしゃるかも知れません。

「失敗談なんかより、手っ取り早く繁盛店になる方法を書いてくれよ」と。
確かにそう思われる気持ちも分かります。

でも私、思うんですよね。
「他人の失敗を真似するのは簡単だけど、他人の成功を真似するのは難しいんじゃないか」って。

これが、私が自分の失敗体験をコラムで書いている理由であり、逆に言うなら成功体験を書けない理由でもあるのです。


私がこれまで18年間、飲食店を経営してきて分かったこと。
それは成功事例を真似するのは難しく、「売れているお店というのは、様々な要素が絶妙なバランスを取って売上を作っている」という事実。

でも実際は、多くのオーナーがより具体的な答えを探そうとします。
「儲かっているお店は何をやっているのか?」

確かにこんな事を聞きたくなるのも仕方のない事かも知れません。
なぜなら、この疑問に対する答えさえ知ることができれば、苦労しないで稼ぐことが出来るように思えてしまうからです。

ただ、こうして多くのオーナーが答えを探しているにも関わらず、ほとんどのお店が廃業してしまうという事実から分かるのは、どのお店にも共通して同じ成果が得られる答えなんてないと言うことではないでしょうか?

なぜ、同じ成果が得られないのか。

その理由こそが、売れているお店は様々な要素がバランスを取って売上を作っているからであり、仮に売れているお店の商品を真似したとしても、それはそのお店の「ある瞬間」の「ある一部分」を真似したに過ぎず、どこか1つの具体的な要素だけを真似したとしても、売れるお店にはならないということです。

そう考えるのであれば、売れているお店を真似しようとするお店が売れない理由は、「どこか1つの具体的な要素さえ真似すれば売れるようになると思ってしまっている思考そのもの」だと言えるのではないでしょうか?

「儲かっているお店は何をやっているか?」という疑問に答えがあるとするなら、それは自分のお店にとっての売れるバランスを自ら考え、微調整を繰り返しながら毎日少しずつ変化し続けること。

失敗事例は、ある1つの原因によって似たような結果を出すことが出来ます。
ただ成功事例は、複数の要素がバランスを取り合ってその原因を作っているため、似たような結果を再現することはできないのです。

成功事例を知りたいと思うのであれば、見るべきなのは他人のお店ではなく、自分のお店であり、自分のお店を見つめ続け試行錯誤を繰り返した先にしか、自分のお店だけの成功事例は見つからないのだと、私は思います。


たまには真面目に仕事をしている風景を、笑。
売れているお店のオーナーは、常に自分のお店だけの成功事例を模索し続けていると言えます。

 

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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