第113回 起業20年目を迎えて思う「バカになる力」

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

先月、起業をしてから20年目を迎えることができました。

商売を始めた頃は「あんな店はすぐに潰れる」と言われていた割には、我ながらよく粘ったものだ、と今から振り返ってみると妙に感慨深いものがあります。

そんな節目の年を迎えたこともあり、今回は改めて自分が商売を現在まで続けてくることができた要因を考えてみたいと思った訳ですが、そこで思い当たったのが、今回のタイトルに挙げた「バカになる力」なのです。


「起業」という選択に対して人が持つイメージはそれぞれ異なると思います。
私の場合、1号店を開業させた時に「起業」という選択に持っていたイメージは「夢の実現」や「経営者への仲間入り」といった前向きなものばかりでした。

ただ現実はなかなか厳しいもので、素人感満載のお店を同業オーナー達に笑いのネタにされただけでなく、すぐに潰れると思われていたからか、仕入先からも理不尽な扱いを受ける始末。

つまり私は周囲の人たちからバカにされていたのであり、お店を開業する前に私が持っていた「起業」に対するイメージと、現実は全く異なっていた訳です。

こんな事を書くと、マイナスの印象を持たれる方もいらっしゃるかも知れません。
でもある時、ふと気がついたのです。

「どうせバカにされるなら、それを利用してしまえば良いのだ」と。

商売に限った話ではありませんが、私たちはどうしても「周りからよく見られたい」という気持ちを持ってしまいがちな気がします。事実、私もそう思っていたからこそ、バカにされて悔しかったのだと思います。

ただ、この「周りからよく見られたい」という願望こそが、新しいことに挑戦して失敗する姿を見せられない原因であるならば、逆に「バカな存在」だと思われることを受け入れてしまえば、周りからの視線を気にせずどんどん新しい挑戦ができるようになる訳です。

当然ですが、商売が上手くいく要因は1つではないため、この考え方だけで商売を続けられるとは思いません。ただ、もし私が開業時に周りからバカにされることよりも、周りからよく見られることを優先していたならば、間違いなく挑戦する回数は減っていたでしょうし、そんな挑戦しない商売がながく続くとは思えないのです。

そう考えると、起業したばかりの頃にバカにされる経験をしたことはマイナスではなく、むしろプラスであり、もしこの経験がなかったら私の商売が20年続くことはなかったかも知れないとすら、今では思えるのです。

 

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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