第124回 周りの声と自分の声

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

「飲食業はやったことないけど、バーを開業する。」
開業する前、こんな事を周囲の人に話すと、ほぼ全員に反対されました。

恐らく前職の経験が活かせそうな事業を始めると言ってたら、こんなに反対もなかったでしょう。事実、私自身もかなりの期間をかけて営業経験が活かせそうな事業を考えてきたので、周りの人たちの反応も当然だと感じたのを覚えています。

今回はそんな当時の状況を振り返りつつ、私が自分の商売を決めた経緯について書いてみたいと思います。もし、これから自分で商売を始めてみたいと考えていらっしゃる方がいれば、少しでも参考になれば嬉しいです。


「営業経験を活かせる商売は何だろう?」
起業のアイデアを考えはじめた頃、私の思考の出発点はいつもここでした。

そのため実際に営業経験が活かせそうな事業をいくつか考え、計画書も何個か作った経験があります。ただ、その全ての計画書に共通する問題点がありました。

それが「自分の事業が上手くいくイメージが湧かない」という問題。

確かにどの事業も自分の経験が活かせそうな反面、どうにも計画を立てている時点で自分自身がワクワクしておらず、計画書の作成もなかなか進まなかったのです。

「こんな、計画を考えること自体に夢中になれない事業が上手くいくことなんてあるんだろうか?」

そんな疑問を感じていた中で唯一、営業経験とは関係ないものの計画を立てている過程が楽しく、アイデアも尽きることのなかった事業。それがバーだったという訳です。

「周りは賛成してくれそうだけど、自分が確信を持てない事業」と「周りからは反対されそうだけど、自分が確信を持てる事業」。

商売を決める要素に正解はないのかも知れません。
そのため、私の決め方が正しいと言うつもりはありません。

ただ自身の経験から思うのは、やはり商売を実際にやるのは自分である以上、信じるべきなのは他人の声よりも自分自身の声なのではないか、ということ。

自分が誰よりも信じられる商売を選択するから、その思いをお客さんに伝えることができ、お客さんも自分の商売を信じてくれるのではないでしょうか。

逆に考えるなら、自分よりも周りの声を信じたくなってしまうような自分を信じられない商売は、お客さんだって自分の商売を信じてくれることはないと思うのです。

もし、私が「飲食業は楽に儲けられるよ」という誰かの言葉を信じて開業していたならば、ここまで商売を続けることはできなかったでしょう。つまり、たとえ同じ商売であっても他人の声と自分の声、どちらの声を信じて始めたのかによって結果は変わるということ。

商売は上手くいかないことの方が多いものですが、そんな困難を乗り越える原動力を生み出す要因こそ「自分を信じて決めた」という納得感であり、納得しているからこそ困難を超える過程も楽しみに変えられるのだと、私は思います。

 

 著者の他の記事を見る

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

感想・著者への質問はこちらから