第132回 ゲームに学ぶ、再挑戦する意欲

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

 

子供の頃、テレビゲームに夢中になったことのある方は多いのではないでしょうか?
ストーリーやステージが進むにつれて現れる敵は強くなり、何度も倒されては再挑戦を繰り返す。こんな経験をしてきた記憶があるのは私だけではないはず。

では、なぜ子供たちはゲームで何度も敵に倒されているにも関わらず再挑戦するのか?
それは「元々一回でクリアできるとは思っていない」という前提があるからだと思うのです。


ゲームで何度も再挑戦をするのは、元々一回でクリアできるとは思っていないから。

もし、ゲームを一回でクリアしなければいけないと考えてしまったら、いつまで経ってもゲームをスタートすることはできませんし、仮に万全な準備ができたつもりでスタートしたとしても、事前の想定とは異なる場面に直面することとなり、結局は一回でクリアすることはできないでしょう。

つまり、ゲームとは「一回ではクリアできない」という前提があるからこそ始められるのであり、その前提があるからこそ何度も挑戦する気持ちが湧いてくるのだということ。

そしてゲームにおける、この「一回ではクリアできない」という前提を持つことの重要性は、商売にも同じことが言えるような気がするのです。

私たちは自分で商売を始めることを考えた時、「本当に上手くいくのだろうか?」という不安が頭をよぎると思います。私自身、初めて1号店まで最寄駅から歩いた時、あまりの駅からの遠さに不安を感じたことをよく覚えています。

確かに今から振り返って考えると、当時の私がその不安を払拭するために出来たことは色々あったかも知れません。ただ、自分の中にある不安を100%払拭しようと考え出したら、ゲームと同様にいつまで経っても始めることはできず、私が開業することはなかったように思うのです。

そして、事前にどれだけ万全の準備をしようと考えたとしても、その不安が消えることはない以上、私たちが商売を始めることを考える時に大切なのは、ゲームと同様に一回で成功しようと考えることではなく、商売を継続していく中で何度も再挑戦するという前提を持つことではないでしょうか。

何度も再挑戦するから自分なりのコツが掴め、自分なりのコツが掴めてくるから商売というストーリーが進んでいく、ということ。

そう考えれば、ゲームに夢中になっていた頃からは30年以上が経っているものの、いま私がやっていることも再挑戦を繰り返すゲームとそんなに大差はなく、逆にゲームと商売を別物として考え、失敗する度に落胆して再挑戦する意欲を失っていたら、それこそ本当のゲームオーバーになってしまう気がしてならないのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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