第103回 売上を伸ばすために営業時間を伸ばした結果

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

 

今回の「ひとりお悩み相談室」のゲストは、開業直前の辻本くん。
どうやら、お店の営業時間を何時から何時までにするかを悩んでいる様子。

手元の資金も乏しいことから、なるべく早く現金を増やすべく、一日の営業時間をできるだけ長くすることで、売上を伸ばそうと目論んでいるようです。

果たして、彼の期待は現実のものとなるのでしょうか?
そして、そんな彼の取り組みを見て今の辻本が思うこととは何なのでしょうか?


「営業時間を伸ばせば、売上も伸びる。」
こう考えてしまうのは開業前の彼だけではないのかも知れません。

起業をするのだから長い時間仕事をするのは当たり前である。
起業をしたのに休みを取ろうなんて考えが甘い。

自分で商売を始めることに対して熱意のある人ほど、こうした思考になってしまいやすいような気がします。

ただ実際に「お客さんがいる限り、お店は閉めない」と決めて、営業時間を伸ばし続けた私自身の経験から感じる、この仮説に対する答え。

それは「営業時間を伸ばしても売上は伸びない」ということ。

その理由の一つは、このコラムの第69回でも書いた通り、営業時間を伸ばせば伸ばすだけ、「今すぐお店に行く必要性」がなくなってしまうから。

そして、もう一つの理由というのが、「営業時間を伸ばす」という選択は、今から振り返って考えれば、実は「一番頭を使わなくていい選択」をしているだけだからです。

「俺は商売に本気だから、他の人より長時間働く。」
当時の私の頭の中は、こんな感じだったと思います。

つまり、長い時間働いているという事実こそが、本気で商売をしている事の証であり、本気で商売をしているから自分は成功できるはず、と考えていた訳です。

ただ、これは逆を返せば「短い時間で売れるお店になる方法」を考えようとしていないとも言える訳であり、そんな「考える」という過程をサボっているお店がどんなに営業時間を伸ばしても売れるお店になる事はないと思うのです。

事実、考えることをサボり営業時間だけを伸ばし続けた結果、売れない時間が長く続くだけとなり、売上は全く伸びませんでした。

本当に売上を伸ばそうと思うのなら、営業時間をしっかりと決め、その時間にお客さんがお店に行きたくなる方法を頭を使って考えること。

頭を使わずにサボっている事実を努力と勘違いしている限り、そんな努力が実を結ぶ時が来ることなんてないのだと、開業前の自分に教えたいのです。

 

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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