第38回「欠落しているものは何?」

この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第38回「欠落しているものは何?」

安田

社長に求められるリテラシーってだいぶ変ってきてますよね。

久野

はい。数年前とは全然違います。

安田

ITリテラシーもそうですけど、社員との関わり方リテラシーとか。いろいろアップデートしてかないと。

久野

もう経営者には必須のスキルになってます。

安田

昔の感覚ではお客さんも社員もついてこないですよね。

久野

本当そうですね。経費の使い方とかでも、一昔前はベンツ乗ってることが「社員の夢になってる」みたいな。

安田

いまだにそう思ってる人いますよね。

久野

FBに写真上げちゃってる人いるじゃないですか。完全にアウトだと思います。経営者同士でキャバクラ行ってる写真とか。

安田

社員が働いてるのに1カ月ぐらいヨーロッパ旅行とかして。普通に写真とか上げちゃう人。どういう神経してるんだろうって思います。

久野

いまだに社長は特別なんだと思ってるんですよ。

安田

で帰ってきたら社員が辞めてて「どうなってんだ!」って怒るんですよ。そりゃ辞めるだろうって(笑)

久野

やってられないですよね。

安田

やってられないですよ。

久野

社員も好待遇だったらいいんですけどね。全員グリーン車みたいな。

安田

「普通に考えたら、嫌になると思いませんか」って社長に聞くんですけど。「いや、それは俺が社長なんだから、当然だろ」って。

久野

そういう人いますよね。いまだに。

安田

リテラシーというか、想像力がちょっと欠落してますよ。

久野

ですね。自分も会社員時代に同じ経験してるはずなんですけど。

安田

「あなたもそう感じたから会社を辞めて独立したんですよね?」って聞くと、怒りだしちゃう。

久野

私も何回も怒られたことあります。お前、生意気だって言われて。

安田

今のご時世にこの手のリテラシーが欠落してると、致命的だと思うんですけど。

久野

でもいまだに8割ぐらいの人はそんな感じじゃないですか。

安田

8割もですか。私の周りでは「社員との関係って昔と変わったよね」って人がすごく増えてますけど。

久野

薄々気付いてる人は増えてます。でもいまだにヒエラルキーが強い業界もあるじゃないですか。

安田

たとえば?

久野

お医者さんとか歯医者さんとか。

安田

確かに。

久野

薄々気付いてる人が6割で、全く気づいていない人が2割。完全に気がついている人は2割ぐらい。その2割が安田さんのところに相談来てるだけのような気がする。

安田

お医者さんだって病院内でのコミュニケーションが悪いと、人が辞めちゃうじゃないですか。

久野

そうですね。モチベーションも下がりますし。

安田

現場が回らなくなって困るはずなんですけど。ドクターでも、ちゃんとそのへんのこと考えてる人っているんじゃないですか。

久野

まあリテラシーの高い人はどの業界にも必ずいますから。

安田

そのほうが結果的に病院も儲かるわけで。

久野

でも医療の分野はやっぱり技術が最優先ですから。「そこに行かざるを得ない」っていうのがあります。

安田

まあ確かに。命がかかってたら「サービスが悪い」とか言ってられないですからね。

久野

医療はやっぱり特殊ですね。普通の会社は完全に切り替わってきてますけど。

安田

でも分かってない経営者がまだまだ多いですよ。

久野

はい。そのリテラシーの差が採用力、営業力、集客力に直結してる。

安田

そういう時代ですよね。社長のリテラシーが利益に直結する時代。

久野

間違いないです。

安田

Facebookの書き込みとか見てるとリテラシーの差がハッキリ出ます。

久野

そうですね。何も考えずに発信してる人が多いですよね。

安田

「こういう社員はダメだ」とか「こんなやつには給料払いたくない」とか。

久野

思っていても書いちゃいけないですよ。

安田

それがどういう結果をもたらすのかイメージできないんでしょうね。

久野

社員さんも見てますから。

安田

居酒屋で社員に説教するイメージで載せちゃうんでしょうね。

久野

何のメリットもないですけど。

安田

気持ちいいんですよ。自分の発言に酔ってしまってる。

久野

韓国人の悪口とかもガンガン書く人いますもん。

安田

政治家でもリテラシーの低い人いますよね。「ああこの人ダメだな」って思います。

久野

政治家には必須スキルですけど。

安田

経営者だって必須スキルですよ。「だから採用できないんですよ」って言いたくなります。

久野

リテラシー高い人は採用も上手です。

安田

はい。リテラシーの高い人は求人費も広告費もかけないです。まだそういう人は少ないですけど。

久野

全般的にリテラシーは高くなってますけど、扱い方が上手な経営者は少ないですね。

安田

だからこそリテラシーの高い経営者が一気に業績伸ばすわけで。センスいい人は広告費かけずに採用やっちゃってますし、お客さんも紹介でどんどん増えていく。

久野

二極化し始めてますね。

安田

いまだに根性論とか言ってる人はしんどくなっていきますよ。

久野

偏った根性論とか、偏った愛情論とか。

安田

そう。愛情論もダメ。社員を愛してるとかファミリーだとか。

久野

「仕事の報酬は仕事だ」っていうのもダメですか。

安田

ある意味すごく正論なんですけど。でも経営者がそれを言っちゃあおしまいですよ。

久野

ですね。

安田

今の時代の社長に求められるリテラシーをひと言で言うと何だと思いますか。

久野

物事を俯瞰的に見る力じゃないですかね。情報発信のスキルとかじゃなくて。

安田

深いですね。

久野

たとえば、これやらせたら社員はどういう気持ちになるかとか。

安田

数値目標とかはどうですか?

久野

数字でやれって言っても社員はやらないじゃないですか。やってくれたら楽ですけど。

安田

とにかく目標達成しろとか、とにかく何件訪問しろとか。それで売れりゃ苦労しないわけで。

久野

売れないし辞めちゃいますよ。いまどき。

安田

ちょっと想像したら分かりそうなもんですけどね。営業する人もストレスですけど、無理やり営業されるお客さんだってストレスですよ。

久野

今の時代って、そういうのを社員とかお客さんが書き込んじゃうじゃないですか。

安田

そうなんですよ。「あの会社はひどいよね」って、どんどん広まる。なんでその程度の想像力がないんでしょう。

久野

やっぱり俯瞰的な視野が欠如してるんじゃないですか。

安田

もっと根本的な部分だと思いますけど。思いやりとか。

久野

確かにそうかもしれませんね。



久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/

 

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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