雇わない株式会社。ついに設立してしまいましたね。
はい。10月8日に設立が認められました。
よく認められましたよね(笑)
10月8日にもちゃんと意味があるんです。「やとう=810」の反対です(笑)
この会社は私と久野さん、そして弁護士の向井さんが株主兼役員となっております。
はい。一応わたしが代表です。
私は前から雇わない経営を推進してますけど。久野さんと向井さんは立場的にけっこう微妙ですよね。
士業って変なことすると、すぐ「資格剥奪」とか言われる業界なので。
ですよね。久野さんなんて「人を雇って社会保険に入れる」ってことが、ビジネスのコアなのに。いいんでしょうか。代表までやって。
安田さんにそそのかされました(笑)
すみません(笑)
まあそれは冗談で。すごい反響ですよ。
私がそそのかしたとは言え、なんで久野さんが代表を引き受けたのか。そこのところをちょっと教えてほしいんですけど。
やっぱり世の中大きく変わってきて、社労士事務所の経営もいろいろ考えなくちゃいけないんです。
たとえばどんなことを?
たとえばマーケティングなんて、昔は社労士事務所とは関係なかったんですよ。
そうなんですか。
はい。社労士に限らず士業の業界って、マーケティングを一生懸命やってるところなんてほとんどなかった。ホームページがなくてもOKって業界だったんです。
どうやって仕事を取ってたんですか。
殿様商売ですから、ほとんどが紹介ですね。とくに強みなんてなくても「資格を持ってればお客さんになってくれる」という時代が長くて。
それで食えたってことですね。
はい。でも今はそれでは成り立たなくなって。何らかのイノベーションが必要になってきました。
なるほど。
とはいえイノベーションを起こす人材を連れてくるのは難しい。なので外の力を借りるしかない。
採用が難しいってことですか。
業界にそういうタイプは少ないし、雇用するのも無理があります。教える人も管理する人もいませんから。
人件費的にはどうですか?
人件費的にも無理ですね。優秀な人を1社で丸抱えするほどの仕事がない。何社かでシェアするという発想じゃないと。
なるほど。だから「雇わない経営」が必要になってくるってことですね。
そういうことです。
マイナスの影響はないですか?「雇わない経営?そんな社労士に仕事は頼めません」とか。
全然そんなことないですね。今までも「雇わない経営」の勉強会とかやってましたから。みんな知ってます。
じゃあクライアントの反応は悪くない?
興味を持ってくれてる人が多いです。
へえ。そうなんですね。
じっさい相談も増えてます。
「雇わない経営」の相談ですか?
はい。「じつは前から考えてた」とかカミングアウトされたり。
へえ〜。
じつは社内に業務委託みたいな人がいて、「雇用と業務委託の境目がすごく気になってた」みたいな。
雇用と業務委託の境目?
業務委託って、けっこうリスクがあるんですよ。
どういうリスクですか。
業務委託と雇用は「指揮命令ができるかどうか」という違いがあって。たとえば業務委託といいながら、いつも社内にいるとか。
それってダメなんですか?
出社を強要したり、事細かく「あれやれ、これやれ」って言ってる時点で、かなり雇用性が強いです。
「雇用されてました」と言われたら、反論できないと。
そうです。そういう曖昧なところに「線を引いてあげる」というのが私の仕事ですね。
なるほど。
もちろん社会保険関係の仕事もやりますけど。社内のワークルールを一緒に整備していくのも仕事だと思ってます。
クライアントさんもそこを期待してると。
何らかの新しいことは期待していただいてると思います。「未来を見ながら労務を変革していく」というのがテーマなので。
「雇わない経営」に移行するには、ビジネスモデルのつくり替えが必要ですよね。
それは必須だと思います。単に契約形態を変えるだけでは成り立たない。
私はそこに特化した仕事をやりたいと思ってまして。久野さんは「雇用と業務委託」の境界線をプロの観点からアドバイスするわけですよね。
そうですね。しっかりと法律に基づいた契約形態を提案していきたい。
雇わない経営をやるには、いろんなハードルがありますからね。
そう思います。安田さんが新しいビジネスモデルを考え、「このスタイルだったら、業務委託の人も幸せになれるよね」という案に対して、私と向井さんが法律をクリアする制度に落とし込んでいく。そういうイメージです。
うまく機能すると楽しそうですけど。
既存の社員と業務委託の人とのすみ分けとか、そのための制度やルールもつくっていきたいです。
「新ビジネスモデル+新社内制度+合法的な雇用契約」という感じでしょうか。
他にもいろいろ出てくると思いますけど。最初のステップとしてはそこですね。
雇わない経営に移行するには、どれぐらいの期間が必要だと思いますか?
半年ぐらいで仕込んで、約1年かけて変えてくような感じでしょうね。
ですよね。やっぱり1年はかかりますよね。
はい。作るだけではなく組織になじませていかないといけないので。
中小企業でも取り組めるようなコストで、ぜひ実現したいです。
はい。私としてはこの概念をもっと広めていきたいです。
久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。