第127回 本当のマジョリティーはどこ?

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第127回「本当のマジョリティーはどこ?」


安田

2020年の妊娠届けが5%ぐらい減ってるそうです。2021年も出生数が減ることがもう確定。

久野

80万人ですね。ピークの半分以下。

安田

これってコロナだけが原因ではないですよね。

久野

多少は影響あると思うんですけど。やっぱり少子化対策を何もやってないので。策をやらない上に外的要因がきたら、それは減りますよね。

安田

未来にあまり希望を持てないのが、コロナでさらに加速した感じですか。

久野

そうですね。

安田

すごく不思議なんですけど。少子化対策って一応国としてはやってるつもりだと思うんです。

久野

私にはやっているようには見えませんけど。

安田

少子化対策を考える大臣がいたりして。やってることが的外れってことですか?

久野

やらなきゃいけないとは思ってる。だけどかけてる予算と施策があまりに中途半端で。会社でいうと、ものすごく小さい部門でやってる感じ。

安田

本業の片手間で商品開発してる感じ?

久野

そうそう。ついでにこれも売ってこいみたいな。

安田

なるほど。

久野

それが国の方針なんでしょうね。

安田

それは少子化対策をやっても票が伸びないから?

久野

そうですね。票に直結しづらい。あとは答えが出るのが先なので、あまり思い切った施策を打ててない。

安田

思い切った施策?

久野

たとえば「子ども産んだら1人500万払います」というルールなら、みんな産むと思わないですか。

安田

ぜったい産むと思います。

久野

これを言える人がいないっていうのが一番の問題。

安田

2人目、3人目ぐらいから加速して出せばいいのに。出産したら500万で3人以上子供がいる人は1人当たり300万出し続けるとか。

久野

いいですね。

安田

子どもが5人いたら働かなくても食べていけますよ。

久野

そうなったらみんな頑張るじゃないですか。

安田

そう思います。なぜやらないんですか。

久野

やっぱり財源ですよ。年金とかもあるわけで。

安田

そこからちょっと持ってくるとか。

久野

私はそうするべきだと思います。年金分をちょっとお借りするとか。それやったら財源は成り立つはずなので。

安田

誰かやらないですかね。

久野

やらないでしょうね。実際にやってることはその真逆ですから。ある一定の収入になったら子ども手当を廃止しようとしてますから。

安田

じつは世帯収入1000万ぐらいの人って、結構苦しいそうですね。税金や社会保険料も高いんで。

久野

夫婦でめっちゃ働いてるから、保育園にも入れなきゃいけないし。

安田

そうですよね。

久野

年収制限とか全部やめるべき。ストレートに1人いくらにしたら効果出ると思う。

安田

さっき「すごく時間がかかる」っておっしゃいましたけど。

久野

そこが大きいですね。すぐに効果が見えない。

安田

会社だったら分かるんですけど。短期で業績上げたいっていう。でも国の場合はやっぱり30年後、50年後を考えないといけない。

久野

私もそう思いますよ。だけど成果が見えないとまた叩かれるんです。

安田

なるほど。

久野

この件に関しては結構シンプルだと思います。ある程度のお金を払えば絶対産む。

安田

でしょうね。

久野

だけど、なるべく安い予算で最大の効果を出そうとするから。みんなでそればかり考えてるうちに10年も20年もたっちゃった。

安田

崖に向かって着実に前進してますよ。

久野

問題が起きないと日本人って動かないところがありまして。少子化の問題を解決しようとなったときに、大体出てくるのは待機児童とかの問題なんですよね。

安田

なるほど。

久野

で、待機児童問題を解決するために予算を使うことが少子化対策みたいになってて。

安田

待機児童問題が解決しても出生数は増えないってことですね。

久野

田舎に住んでると保育園のチラシがたくさん来ますよ。子どもたちどんどん来てくださいって。

安田

でも田舎では仕事がないし。

久野

はい。やっぱり育てるのにお金がかかる。これがいちばん大きいと思います。

安田

たとえば子どもを3人以上産んだら大学まで授業料は全て免除とか。「だったら3人産んどくか」ってなりそうなもんですけど。

久野

ハンガリーでは所得税が免除になったりしますからね。欧米は結構そういうスタイルだし、フランスなんかは子どもに対して直接お金を払ってる。

安田

やろうと思えばいくらでもやりようはありますよね。

久野

日本って本当に変な国なんです。子どもがいる家庭にお金をバンバン出すと、子どもいない家庭が文句言うんです。

安田

ありますよね。変な平等意識というか。

久野

お金を配るときに、かわいそうな人に払うか、それか全員に平等に払おうみたいな意識しかなくて。本来は国家戦略上、勝つところに投資しなきゃいけないじゃないですか。

安田

ですよね。

久野

どう考えても人口増やすことが、勝利の方程式だってことは世界が証明してるのに。何でそこにベットしないのか理解不能です。

安田

でも実際は「子どもがいない人」が反対してるわけじゃないと思う。たぶん直接関係ない人が言ってるんですよ。

久野

そうですね。そういう声をマスコミが拾っちゃうから。

安田

障害をウリにするバーみたいのがあるそうで。「それで傷付く障害者がいることを考えないのか!」みたいなことを言う人がいるんですって。

久野

いるでしょうね。

安田

だけど乙武さんが言うには自分の周りの障害者で「私はそれで傷付いた」って人を見たことがないと。

久野

ほんと日本って感情論ですよ。いつも。

安田

だけどそういう意見に政策が動かされてしまう。

久野

そう思います。本当はどっちでもいい人が9割以上なんです。だけど「絶対こっちじゃなきゃいけない人」を連れてきて、戦わせて、あたかも日本が分断されてるように煽る。

安田

声が大きい人の意見が拾われてるだけで、実際に反対する人はそんなに多くないってことですか。

久野

一部のマイノリティーがネットに書き込んで、その意見が助長されて、意見のない人はどんどんそっちに引っ張られていく。そういう構造だと思います。

この対談の他の記事を見る



久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

感想・著者への質問はこちらから