第133回 何が限界を超えてしまったのか

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第133回「何が限界を超えてしまったのか」


安田

「飲食店に酒を売るな」って圧力をかけて。ひんしゅくを買いましたね。

久野

はい。

安田

言うことを聞かない業者には「銀行から圧力をかける」みたいな脅しまでして。

久野

すぐに撤回しましたけど。

安田

「圧力をかける意図はなかった」とか言って。嘘つくなって感じですよ。

久野

あんなに大炎上するとは思わなかったんでしょうね。

安田

「言うことを聞かないヤツは締め上げる」ってことでしょ?見え見えですよ。

久野

そうでしょうね(笑)

安田

あからさま過ぎですよ。なぜもうちょっとオブラートに包まなかったのか。

久野

国民にウケると思ったんでしょうね。

安田

え!

久野

国民のご機嫌を取りしようと思ったら、炎上しちゃったっていう。

安田

国民が喜ぶと思ってやった?

久野

そうだと思います。

安田

飲食店が酒を出してることを国民は怒ってると。

久野

はい。

安田

だから業者から手を回して酒を止める。業者も言うこと聞かなったら、銀行に手を回して金を止める。

久野

そうですね。

安田

そうすると国民は拍手喝采してくれると。

久野

思ってたんでしょうね。

安田

そんなに間抜けですか。日本の政治家って?

久野

そうとしか考えられないです。だって法的には何の権利もないわけですよ。卸業者や金融機関にそんな命令を下す権利はない。

安田

でも銀行って金融庁の圧力に弱そうじゃないですか。お上には逆らえないというか。

久野

そうですね。

安田

卸業者も銀行に「一切取り引きしません」って言われたら困るし。

久野

そういう流れになると踏んだんだと思います。

安田

だけど結果的には国民のウケが悪くて。飲食店や、卸業者も、予想外に反発するし。

久野

国民の反応が大きかったですね。

安田

なぜ国民はあんなに怒ったんでしょう。

久野

やり過ぎたんでしょう。「お前らそんなに偉いのか!」って反感を買った。

安田

なるほど。

久野

それでまず「銀行からの圧力をやめる」ということになって。

安田

やはり銀行に手を回したのはマズかったですか。

久野

そんなところまで手が加わるんだとしたら、もはや社会主義なので。

安田

社会主義?

久野

お金の流れを止めたら事業なんて終わりなわけで。金融機関に圧力かけるとこまで政府が力持っちゃったら、法治国家としてはやり過ぎです。

安田

でも力は持ってますよね?

久野

政府にそんな権限はありません。

安田

法的な権限はないですけど。たとえば総理官邸から「あの会社と取り引きするの?本気なの?やめた方がいいんじゃない?」って言われたら、普通やめますよ。

久野

まあ、やめますけど(笑)

安田

権限はないけど、それぐらいの脅しは日常茶飯事じゃないですか。

久野

それは裏でやることであって、オープンにしたらいけない。

安田

確かに。

久野

そこがいちばん大きな問題なんです。

安田

法治国家として許されないようなことを、堂々とやっちゃったと。

久野

刀があることを見せちゃいけなかった。

安田

「見せても問題ない」って勘違いしたんでしょうか。

久野

ちらっと見せたつもりが、もう丸見えに見えちゃったんでしょうね。

安田

確かに丸見えですよね。「知り合いのやくざに言うぞ」みたいな脅しと変わらない。

久野

変わらないですよ、もう。やり方がとにかく雑になってきてます。

安田

西村さんでしたっけ?「あいつが勝手に言ったんだ」って切られちゃいました。総理や副総理が知らないわけないと思うんですけど。

久野

絶対知ってますよ。黙ってやるわけがないので。

安田

そうですよね。

久野

誰かのせいにするのがもう当たり前になってる。恐ろしいですよ。政治家の不始末を官僚がかぶるとか。

安田

「結果責任を取るのが政治家だ」って昔は言われてたのに。

久野

今は真逆ですね。うまく責任を回避する人たちばかりが残っていく。

安田

ひどい話ですね。今回のコロナにしても飲食店ばかり悪者にしてるし。

久野

飲食店だけに責任を押し付けて、やってることが全てちぐはぐ。

安田

本当に酒が悪いのか、飲食店で感染してるのか。エビデンスも出さないままですもん。

久野

そうなんです。

安田

飲食店が8時に店を閉めて酒を出さなければ、本当に感染者は減るんでしょうか?

久野

人が集まる場所が減ることは確かですね。

安田

でも家でじっとしてるわけじゃないでしょう。映画に行ったり、近所の公園に人が集まったり。みんなどこかに出掛けますよ。

久野

自粛期間が長すぎますから。さすがにもう我慢の現界というか。

安田

だけど、いまだに飲食ばかりが狙い撃ちで。

久野

たとえば一蘭みたいなラーメン屋だったら、何にも問題ないわけです。

安田

あれだったら、酒を飲んだって別に問題ないですよ。

久野

そもそも一人の食事になぜ時間制限があるのか。

安田

ですよね。1人で食事して1人で酒を飲んで、何が問題なのか。よく分からない。

久野

やっぱり1年たって何も進歩してないことに、国民は怒ってるんですよ。

安田

それが今回の反発にもつながってる?

久野

すべてを飲食店のせいにして、国家権力まで使ったところに腹を立てたんだと思う。

安田

だけど国民としてはコロナ感染を止めてほしいわけですよね。「酒出すな」みたいに言ってる人もたくさんいるわけで。

久野

いつも言ってますけど、そういう人ってすごくマイノリティーなんですよ。

安田

やっぱそうですよね。

久野

1割の絶対反対と1割の絶対賛成を連れてきて、あたかも世の中が二分してるかのように見せてるだけ。

安田

それはメディアの問題ですか?

久野

メディアの問題でもあるし、政治家もそれに乗ってるところはあります。

安田

日本人って真面目なので「酒を飲むな」「酒を出すな」って言われたら、言うこと聞くじゃないですか。

久野

デモもしないし大人しい国民ですよ。

安田

なのに今回ここまで炎上しちゃったのはなぜですか?ガマンの限界が来たってことですか。

久野

政治の力が弱まってきてるんだと思います。政府ってきつくなると情報が漏れてくるんです。外に出ちゃいけないようなことがどんどん出てくる。

安田

もはや末期症状なんですね。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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