第143回 ビジネスセンス×国家資格

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第143回「ビジネスセンス×国家資格」


安田

司法試験の合格率が4割を超えたそうです。希望者が減っているそうで。

久野

弁護士マーケットでの競争が激化してますので。「前より稼げる職業じゃなくなった」ということが大きいですね。

安田

歯医者さんも厳しいみたいですね。

久野

医者と弁護士ってよく比較されるんですけど。精神的な重みは同じぐらいなのに弁護士は稼げないというイメージです。

安田

しんどい割に稼げないと。

久野

はい。それが不人気につながってます。

安田

弁護士ってオールマイティな資格に見えるんですけど。法律に関することだったら大抵のことはできるじゃないですか。

久野

できますね。

安田

プロスポーツ選手の交渉代理人とか。海外には何十億も稼ぐ弁護士がいます。

久野

弁護士は最強の資格だと思います。税理士もできるし、社労士もやってもいいし、なにやってもいいんですよ。

安田

ですよね。稼ぐ手段なんていくらでもあると思うんですけど。

久野

ただ資格を取るまでがすごく大変で。「そこまで勉強する割にコスパが悪い」っていう判断になるんじゃないですか。

安田

コスパは悪くないと思うんですけど。「資格を取っただけで稼げる」と思っている人が多すぎるだけで。

久野

私もそう思います。

安田

「弁護士になったらどんどん仕事が舞い込んでくる」という時代ではない。だけど工夫すればいくらでも稼げる資格。

久野

実際には「稼げない弁護士」って少ないんですけどね。

安田

その割には不人気ですね。

久野

弁護士までの道のりって長いから。大学を卒業してロースクールに行きます。ロースクールで勉強して、さらに司法試験に受からなくちゃいけない。

安田

なるほど長いですね。

久野

司法試験に受かったあとも司法修習生をやらなきゃいけない。国の研修制度みたいなもので、この間の給与はかなり安くて期間も長いんです。

安田

なるほど。不人気の理由が分かってきました。

久野

そもそも弁護士を志す人って、かなり優秀なはずなんです。

安田

頭がいい人じゃないと目指しませんよね。

久野

そうすると、たとえばIT企業から「こういう仕事があるぞ。おまえ来ないか?」って言われたときに、比較が生まれるじゃないですか。

安田

弁護士になれる能力があって、同じぐらい努力するんだったら「外資に行ったほうがぜんぜん稼げる」ってことですか。

久野

あるいは「自分でやったほうが稼げる」と思う人が出てくる。

安田

「自分でやろう」って人が、弁護士の資格を取ったら最強ですけど。

久野

実際にそういう人もいます。かなりレアですけど。

安田

資格を取ったら「それだけで食っていける」と思ってる人がほとんどでしょうね。コンビニのFCに入ったら儲かると思ってる人と同じ。

久野

弁護士に限らず士業を志す人の多くはそうです。

安田

どんな資格だろうと儲かるための工夫は必須だと思うんですけど。

久野

それが現実です。でも日本人は資格やフランチャイズになれば儲かると思ってる人が多い。

安田

それで儲からないと本部の悪口を言ったりして。

久野

FC加盟店で儲けるコツは、本部の言うことをぜんぶ鵜呑みにしないこと。本部の言うとおりだけやってたら絶対うまくいかないです。

安田

どんなビジネスでも同じですよ。自分で儲かる工夫をしないとだめ。

久野

はい。何の工夫もせずに儲かるビジネスなんてないです。

安田

国をあげて啓蒙しちゃった結果ですかね。「資格を取れば食うに困らない」みたいな。

久野

あるいは保護しすぎた結果なのか。それがかえって稼げない人たちを生み出してる。

安田

過保護すぎたと。

久野

不人気になったのはメディアのパワーも大きいですけど。

安田

メディアですか?

久野

たくさん稼いでいても「自分は儲かってるぞ」って言っちゃいけない雰囲気なので。

安田

たしかに。メディアが取り上げて炎上しそうですよね。

久野

弁護士で儲かってる人もいるんです。だけど「儲かってる」とは言わない。儲かってない人が「儲からないぞ」って叫んでるだけ。

安田

儲けてる人を叩くのは悪い慣習ですよ。ゾゾの前澤さんなんてお金を配るだけで叩かれますから。「下品だ」とか言われて。

久野

はい。褒められるはずのことをやっても叩かれる。ひどいですよ。

安田

金持ちがたたかれる文化なんでしょうね。

久野

日本では「金持ちはみんな搾取してる」というイメージがあります。

安田

「儲けてる」イコール「搾取」ってことですか?

久野

困ってる人につけこんで儲けてるとか。儲けてる弁護士=悪徳弁護士みたいな。

安田

すごい偏見ですね。

久野

社労士もすごくいい資格なんですよ。だけどメディアは「食えないからやめとけ」とか、そんなのばっかです。

安田

日本は報道が偏りすぎですよ。

久野

「社労士って食えるんですか?」って聞かれて「いや、大変ですよ」みたいな人ばかりを取り上げるんです。

安田

視聴率しか考えてないんでしょうね。

久野

Googleに「社労士」って入れるとサジェストワードが「食えない」って出てきちゃう(笑)

安田

そうなんですか!

久野

はい。あとは「役に立たない」「取っても無駄」とか。コスパ悪いとか(笑)

安田

凄く儲かってる社労士さんってどの県にもいますけど。

久野

社労士が特別なわけじゃなく、どんな業種でも「儲かってる人と儲かってない人がいる」というのが現実なんです。

安田

どんな斜陽産業でも儲けてる人っていますもんね。

久野

いますよ。「めちゃくちゃおいしい仕事じゃん」って人が必ずいます。

安田

ということは、司法試験の人気がなくなったのはメディアの責任だと。

久野

メディアによる洗脳で、現実よりも不人気になっていることは確かです。

安田

もしかして今が狙い目じゃないですか?

久野

「資格をうまく使って稼ごう」という人には、間違いなく狙い目です。

安田

合格率も高くなってますし。

久野

国家資格は持ってるだけで信頼してもらえますから。掛け算するにはめちゃくちゃいいです。

安田

掛け算は必須ですか。

久野

必須ではないですけど、何かと掛け算すれば一気にスケールします。

安田

そのために必要なものは何ですか。

久野

やっぱりビジネスセンスですね。ビジネスセンスがある人ほど国家資格はすごい武器になります。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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