アリ採り名人の島田さん知ってますか?アリマスターと呼ばれてまして。
Yahoo!ニュースで見ました。飼育ケースを売ってる人ですよね。
そうなんです。島田さん今40歳らしいですけど。高校中退後、東京都心でアリ専門の通販会社を立ち上げ、なんと今年で21年!
すごいですよね。
奥さんに「アリだけで食べていけるのか」って心配されたそうです。でもめっちゃ売れてる。
アリ観察用の飼育ケースが1個7,000円するらしいですね。
はい。アリを飼うだけで7,000円。それが年間1,500個も売れていて、生産が間に合わない。
これ欲しいですよね。
欲しいですか?
はい。こういうの結構気になるんです。
7,000円のは40〜50センチぐらいのサイズで、特大タイプは33,000円だそうです。「33,000円出してアリ飼うのか!」って感じですけど。
入荷した瞬間に売り切れちゃうみたいですよ。
そうなんです。でも「売上を伸ばす気はありません」って。
もっと値上げしたらいいんですよ。
いや、でも、十分高いっちゃ高いじゃないですか。
欲しい人からしたら高くないですよ。
そうかもしれませんね。富裕層が買ってるわけでもないでしょうし。
お金があっても欲しくない人は買わないです。
アリ飼育ケースなんて生活に必要ないですからね。
だけど7,000円ですごく楽しめて。家にいる時間が豊かになるなら7,000円は決して高い買い物ではないです。
確かに買えない金額じゃないですよね。
だってスマホに比べたら安いですよ。毎月ずっとサブスクみたいに出ていくわけじゃないし。7,000円で3年ぐらい遊べちゃうかもしれない。
こういうものが売れる時代ですよね。真面目に一生懸命、高性能な家電を作っても売れないのに。
マーケットの大きさが違いますから。
アリのケースを買う人なんて100人に1人もいないでしょうね。
1,000人に1人いるのかなって感じです。
数人で食っていくには十分なんでしょうね。アリが大好きな人だけで集まって。
アリが好きな人って世界中にいるでしょうから。
いそうですね。どこの国にも。
絶対いますよ。
もう組織の時代は終わりなんじゃないかって気がします。
どういう意味ですか。
たとえばアリの仕事で50人が食えるかって言われたら、無理だと思うんですよ。
50人は厳しいかもしれません(笑)
だけど好きな人2〜3人なら十分食えてしまう。たまに家族で旅行して、おいしいものを食べて、豊かに暮らしていくことが余裕でできちゃう。
今の時代ならではですね。
はい。ニッチなマイクロビジネスを数人でやって、楽しく生きていく時代です。
アリの観察って楽しそうだし。
本気で欲しくなってきましたか。アリケース(笑)
欲しいです。そもそも虫が嫌いじゃないんで。
久野さんの奥さんは、これを7,000円で買っても怒らない人ですか。
絶対に怒られると思う(笑)
普通は怒られますよね(笑)
会社に置いたほうがいいかも。
社員に怒られますよ。
でも真面目な話、競争がないマーケットでやるのは、すごく大事だと思います。大きなマーケットだと大手資本がやり始めちゃうので。
ですよね。
100に1人とか。それでも多いかもしれない。
300人に1人とか、500人に1人ぐらい。
そうですね。
それぐらいニッチになると、広告を打たなくても好きな人が集まってきそう。きちんと情報さえ発信してれば。
そういうビジネスってMBAとか、ビジネスをバリバリにやってる人からは出てこないんですよ。本当に好きな人じゃないと。
ビジネス感覚があると逆にできないでしょうね。
ビジネス的に考えたらアリには行かないです。
ちゃんと考えたら犬か猫に行くでしょうね。マーケットも大きいしお金もたくさん使ってくれるし。
だから犬や猫の専門店が増えましたよ。
昔は専門店なんてなかったですけど。近所のペットショップでカブトムシから、鳥から、ごちゃ混ぜに売ってました。
百貨店の屋上とかで売ってましたよね。
売ってました!
今はぜんぶ専門店化してます。
確かに。クワガタ専門的とかありますよね。
よりニッチになっていくんでしょう。
ニッチなマーケットでも拡大したがる人はいそうですけど。
経営者は「拡大が止まると危ない」というイメージを持っているので。
「去年より大きくしなきゃいけない」という、恐怖心みたいなのがありますよね。だけど大きくなるほど真似しやすくなるから。
大きくなる過程でマニュアル化されるので。やるなら、とことんまで大きくするしかないです。
それしかないですよね。
もしくは「あえて大きくしない」という選択をするか。
これまでは大手の下請け、孫請け的な中小企業が多かったじゃないですか。
はい。下請けという仕組みが十分機能していました。
だけど時代が変わってしまって。もはやミニチュア大企業みたいなのは成り立たないですよ。
全く別のコンセプトが必要になってますね。このアリ屋さんみたいな。
『AntRoom(アントルーム)』という立派な株式会社みたいです。
女王アリとか売ってますもんね。けっこう高い(笑)アリ一匹1,048円。女王一匹+働きアリ30匹で2,900円。
アリを売っちゃう発想がすごいですよ。
資本主義のど真ん中にいる会社はでかくなるしかないんです。中途半端なサイズ感じゃもう生き残れないので。
「スケールしない事業をやるやつはバカだ」って、昔はよく言われましたけど。
今はとことん大きくするか逆に大きくしないか。スケールか、スモールか、それを決めなくちゃいけない時代です。
久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。