第271回 資格や学歴を活かせる現場

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第271回「資格や学歴を活かせる現場」


安田

ついに新卒初任給40万円の会社が出てきました。

久野

恐ろしいですね。

安田

もう大手は30万円が当たり前になってきました。

久野

そうですね。中小企業はホント厳しいです。

安田

大手が上げたら中小も上げざるを得ないっていう。やはり中小企業は中途採用にシフトしたほうがいいんでしょうか。

久野

年代にもよるんですけど中途はチャンスがあると思います。初任給アップの皺寄せが既存社員に出てきてますから。

安田

初任給アップに合わせて既存社員も上がるわけじゃないんですね。

久野

逆に下がってます。優秀な新卒はそれこそ初任給40万払ってでも確保したい。その原資を確保するために50代のリストラとかをバンバンやってます。

安田

中小企業はそこが狙い目ですか。

久野

そう思います。役職定年を早めたり、いろんな施策を打って40〜50代を下げてますから。

安田

上がる人はいないんですか?

久野

いますけど総じて中間層は人件費が減ってます。データを見ればよくわかりますけど。

安田

役職定年って50歳以上のイメージですけど。40代でも下がるんですか。

久野

先手を打って上げなくなってる感じですね。逆に能力に合わせて少しずつ下げていったり。

安田

大企業に就職しても今までのような旨みはないんですね。

久野

僕は氷河期世代なんですけど。就職した頃めちゃくちゃキツかったんです。大手はほとんど採用してなくて。新卒であんなに苦労して、またこのタイミングでキツくなるっていう。

安田

かわいそうな世代ですよね。入りたい会社にも入れなかったし、いつまでたっても待遇は良くならないし。

久野

報酬が伸びないだけじゃなく労働時間も長いんです。働き方改革で若い人の労働時間が減ってるぶん管理職にしわ寄せがいって。

安田

20代は報酬が高い上に働く時間も短いと。そして上に行くほど収入は頭打ちになって労働時間は長くなる。

久野

そういうデータが出てます。

安田

一部の優秀な人以外は大企業に勤める旨みがなくなってますね。

久野

当たり前と言えば当たり前の状態なんですけど。長く勤めるだけでは報酬は上がっていかない。能力に比例する仕組みになってきてます。

安田

新卒に関してはどうでしょう?40万円も払って元が取れるんでしょうか。

久野

人によると思います。本当に優秀な新卒は40万円払っても確保したい。だけど全員が40万円にはならない。

安田

新卒の初任給ってほぼ一律でしたけど。そこも変わっていくと。

久野

最低ラインは上がるけど金額は人によって差が出ると思います。

安田

最低ラインが25万円ぐらいになって、あとは能力によって初任給に差が出てくると。

久野

そうですね。ただし「初任給が安いから仕事も楽」というわけではない。

安田

能力次第ってことですね。まあ新卒といえども差がありますから。ある意味正しいのかもしれないです。

久野

僕らのような資格ビジネスも人によってかなり差が出てきます。今までは年齢と資格の有無だけで決まってたんですけど。

安田

良い大学を出るとか資格を取るとかだけでは、もう稼げない。

久野

とくにホワイトカラーは厳しいと思います。大手に入るのもかなり狭き門になっていくので。

安田

大手に入りたいなら狙い目はブルーカラー職種だと聞きました。

久野

狙い目でしょうね。

安田

大卒は工場や現場に行きたがらないので、現場を希望すれば大手に入れちゃうらしいです。

久野

大手の工場って資格も必要だったりするんですよ。勉強好きな人にはすごく向いてると思います。

安田

勉強ができるタイプはもうホワイトカラーでは出世できないし。製造現場ならそのスキルが活かせますよね。

久野

はい。最先端の機械を設定して動かす仕事とか。マニュアルを覚える頭の良さはすごく活かせると思います。

安田

大手の工場はすごく綺麗だし。

久野

そうなんです。工場って油まみれのイメージですけど大手は全然違います。しかも大手の工場ってすごく安全なんですよ。

安田

安全第一って感じですよね。勉強好きで安定思考の大卒にとっては狙い目だ。

久野

工場から取締役になる人も出てきていますし。ホワイトカラーに見切りをつけて工場長を目指すのが賢いやり方かもしれません。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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