「ホワイトカラーの実態」さよなら採用ビジネス 第131回

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第130回「新卒の境目」

 第131回「ホワイトカラーの実態」 


安田

「業績が悪いからリストラ」ではない?

石塚

はい。大手はそこが決定的に違います。業績がいいほど危ない。

安田

そこを分かりやすく学生さんに伝えてあげてほしいです。

石塚

たとえば40歳過ぎて、払ってる年収と仕事のパフォーマンスが合わないとします。

安田

はい。

石塚

これから先を考えると、ますます合わなくなっていきます。

安田

はい。

石塚

そこに国が「定年延長をもっとしろ」と言ってきます。

安田

じっさい言ってきてますね。

石塚

そうすると、今でも生産性が低いのに「ますますその分の生産性が下がる」ってことです。

安田

そうなりますね。

石塚

つまり「そのマイナスを会社が引き受ける」ってこと。

安田

はい。

石塚

「あなたが社長ならどう思いますか?」「困りませんか?」ってことです。

安田

いや困ります。なるほど。分かりやすい!

石塚

だから「このギャップをなくすのがリストラです」というわけ。

安田

なぜ業績がいい時にリストラするんですか?

石塚

だって「今日リストラする」って言って「はい、わかりました」とは引き受けてくれないですよね。

安田

そりゃそうですね。条件にもよりますけど。

石塚

そう。条件による。つまりリストラするにはたくさんお金がいるわけです。

安田

だから業績が好調なときにやるしかないと。

石塚

その通り。たくさんの割増退職金と再就職支援サービスをつけて、赤字になってる社員を早く切りたい。早く損切りしたい。それが好業績企業のリストラってことです。

安田

なるほど。

石塚

もちろん業績が悪いパターンもあります。東芝みたいな。

安田

あそこまでいったら整理解雇も認められますから。

石塚

はい。

安田

業績がいい会社は余裕があるから「金を使ってリストラしていく」ってことですね。

石塚

おっしゃるとおりです。

安田

ということは「ものすごく業績の悪い会社」と「ものすごく業績のいい会社」がリストラの中心になってくる?

石塚

そうですね。もうひとついうと「市場環境が急激に変わって事業の転換をしなければいけない」という会社。

安田

それは業績がいい会社の話ですか?

石塚

業績はとりあえずいい。とりあえずいいけど「このままじゃ難しいな」っていう会社。そういう会社は、ほぼ全社リストラを検討してるし、リストラを実施してます。

安田

やっぱりお金がないとリストラできないんですか。

石塚

倒産直前までいかないとできません。それが日本の労働法なので。

安田

お金がないと社員をリリースすることもできないと。

石塚

そのとおりです。

安田

じゃあ、ぶら下がり社員には「お金のない会社」が狙い目じゃないですか。リストラされないので。

石塚

皮肉ですけど、そのとおりですね。

安田

ほどほどの会社を選ぶのがいい選択だと。

石塚

ところが「ほどほどの会社」だったはずが、資本の合併とか、持株会社に入っちゃったりすると急に状況が変わる。

安田

整理されちゃうこともあると。

石塚

そうなんですよ。たとえば日立電線なんて「ぬるま湯企業」の典型ですよ。

安田

へえ。そうなんですか。

石塚

ところが日立グループの再編で「えーっ!?」みたいな話になって。

安田

30年間電線しかつくってこなかった人って、どうなるんですか?

石塚

どうもなりません。

安田

なりませんよね。

石塚

でも現業系は強いですよ。電柱に登ったり工事したりっていう人。現場はやっぱり人手が要りますから。

安田

調達系はどうですか?原料の仕入れとか。

石塚

無理でしょう。

安田

無理ですか!

石塚

調達はいま、どんどんネット化しててグローバル化してる。あれこそ会社あっての仕事だから。

安田

なるほど。

石塚

個人で技術を持っていけないんですよ。

安田

安定を目指すなら「現場に近いところに居続けろ」ってことですか。

石塚

そのとおり。だから20代後半でブルーカラー系への転職が増えてる。

安田

そうなんですか。

石塚

はい。水道工事とか電気工事とか。

安田

へぇ~。

石塚

一生食えますし。

安田

「ブルーカラーは負け組」みたいな時代が長らく続いてましたけど。いまは逆転してるってことですね。

石塚

昭和生まれの世代ってそれが勝利の方程式だったから。でも世の中自体が変わっちゃった。

安田

学生さんはそこに気がついてないと。

石塚

「有名大学を出ると収入の高い会社に入れて一生安定する」という図式は完全に壊れた。それに気づかないとだめです。

安田

壊れているのに、人気企業ランキングの顔ぶれはあまり変わらないですよね。それはどうしてですか?

石塚

ひとつは教育。つまり学校の影響ですね。もうひとつは家庭。つまり親の影響です。

安田

いまだに「有名企業に入ることが人生の成功だ」って教えてる?

石塚

そこは何も変わってないです。

安田

学校はともかく家庭でもまだそうなんですね。

石塚

サラリーマン家庭が増えすぎたんですよ。

安田

なるほど。親もホワイトカラーだから。

石塚

いや。ホワイトカラーに見えるけど実態はブルーカラーみたいな仕事です。

安田

どういう意味ですか?

石塚

知的労働ではないってことです。

安田

じゃあ何なんですか?

石塚

精神労働。

安田

精神労働?

石塚

頭脳を使わずに気を遣ってるってことです。だからうつが多いわけです。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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