「新卒の境目」さよなら採用ビジネス 第130回

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第129回「企業改革?大学改革?」

 第130回「新卒の境目」 


安田

「卒業後3年間は新卒として扱ってください」という要請が出ました。コロナ対策として。

石塚

出ましたね。

安田

こういう要請って効果あるんですか。

石塚

うーん。まあ国としては学生の救済措置としてやらざるを得ないんでしょう。

安田

「新卒扱いしろ」って言われたところで、企業は言うことを聞くんでしょうか。

石塚

新卒純血主義の会社からすると「年次構成を崩すし人事評価が面倒くさいから、そういうのはやめてくれ」ってのが本音だと思います。

安田

ですよね。

石塚

国がどれぐらい経団連とかに働きかけるかですけど。でも個人的な見解として僕はとても評価してます。

安田

へぇ~。意外ですね。

石塚

「3年以内は新卒として扱いなさい」って、もっと強力に言ってほしいぐらい。

安田

どれぐらい強力にすればいいんでしょう。

石塚

法律と同様の効力を発するようなものにしてほしい。

安田

そこまで!

石塚

なぜかというと、いわゆる「新卒3割」といわれる、定着が悪いことへの有効な打開策が描けるから。

安田

へえ。

石塚

新卒で1回トライしたら既卒扱いじゃないですか。

安田

そうですね。

石塚

いまこそ企業も採用手法を変えるべきですよ。

安田

どう変えればいいんですか?

石塚

契約社員で「まず半年か1年やってみよう」「3年ぐらい働いてみて、それで決めてくれ」って。そのほうが健全だと思う。

安田

健全だとは思うんですけど。企業がそんな面倒なことをやりますか?

石塚

企業が新卒をとりたい理由は2つで。人員構成上まずいってのがひとつ。

安田

中途ばかりだと年齢構成がいびつになりますからね。

石塚

そう。もうひとつは、やっぱり優秀な人を採りたいから。いまの時代、優秀な人をとることが年々難しくなってるわけです。

安田

だから採用のやり方を見直すべきだと。

石塚

ほんとうに優秀な人を今のやり方で見抜くのは無理です。

安田

確かに難しいですよね。

石塚

仕事しながらジャッジした方が効率もいいし、お互い納得しますよ。

安田

新卒でいろんな会社を経験して「本当に自分に合うところを見つける」って正論だと思うんです。

石塚

そうでしょ。

安田

でも実現しますかね。企業としても一度採用したら解雇できないし。

石塚

だから契約社員で採るわけです。どうせ辞めるんだから。

安田

でも学生からしたらですよ。かたや正社員、かたや契約社員で、どっちを選ぶかって言われたら99パーセント正社員を選びませんか?

石塚

意識の高い学生は契約社員を選んでくると思います。

安田

へぇ~。

石塚

だから優秀な学生を採りたいんだったら、契約社員採用をしたほうがいい。

安田

期間を限定しての有期雇用ってことですよね。

石塚

そうです。

安田

「新卒で入ったら一生」ってことじゃなく「とりあえず1年だけどう?」ってことですか。

石塚

そうです。こっちも1年あれば見極められるので。

安田

ソニーやトヨタみたいな人気企業ならあり得ますけど。「それでも入りたい」って人がいるでしょうから。

石塚

おっしゃる通り。

安田

「入りたいならどうぞ」「その代わり1年間でちゃんと見極めるよ」みたいな。

石塚

そっちのほうが健全だと思います。

安田

そうなっていきますか?

石塚

いま大企業はみんなリストラやってるじゃないですか。

安田

はい。

石塚

リストラやってるような会社に優秀な新卒が入りますか?

安田

まあ、でも入ってますよね、現に。有名な会社には。

石塚

それは普通の学生ですよ。言い換えれば意識の低い学生。

安田

なるほど。確かに不思議ですよね。リストラしてる大手が人気企業ランキングの上位に入るのは。

石塚

自分だけは安全だと思ってるから(笑)

安田

社会を知らなすぎですね。

石塚

人数をとりたい会社は正社員採用しかないでしょう。やっぱり多くの学生は長期安定性を求めるから。

安田

そりゃそうです。

石塚

しかし本当に優秀な人材をとるなら、企業はやり方を変えなくちゃいけない。

安田

それが有期雇用だと。

石塚

それがひとつの答えだと思います。

安田

その場合は、新卒でいきなり年収500〜600万円っていうこともあり得るんですか?

石塚

当然あり得ます。いきなり2,000万とか。

安田

2,000万!

石塚

はい。意識の高い子はそっちを選ぶと思う。

安田

2,000万もらえたら考えますね。でも2,000万なんて現実的にあり得ますか?

石塚

あり得ると思います。

安田

へぇ~。

石塚

たぶん豊田章男さんはそういう人材をとりたいんだと思う。

安田

それに見合うぐらいの人材が欲しいと。

石塚

そうです。

安田

でも政府の方針としては終身雇用ですよね。

石塚

おっしゃるとおり。「正社員雇用の入口を3年間は猶予みてください」というのが国の要請。

安田

そこは石塚さんの考えとは違うわけですね。

石塚

政府がやることはそこがズレてます。僕はべつに正社員採用の入口でなくていいと思っていて。

安田

石塚さんの狙いは何ですか?

石塚

いろんなスタートの仕方を認めることで、日本の弊害である新卒一括採用を終わらせていくこと。

安田

なるほど。新卒一括採用が諸悪の根源だと。

石塚

そう思います。3年という猶予期間が普通になれば、新卒自体の価値観が大きく変わる可能性がある。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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