さよなら採用ビジネス 第45回「ホントに使えるのは誰?」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第44回「スマホは何を変えたのか」

 第45回「ホントに使えるのは誰?」 


安田

石塚さんって、人材紹介業をやってたじゃないですか。

石塚

はい。ずっとそれが本業でした。

安田

「大企業で働いてる」とか「元大企業」って人に、ものすごい数会ってると思うんですけど。

石塚

はい。数えきれないぐらい会いましたね。

安田

大企業といえども、できる人とできない人って、いますよね?

石塚

明確に分かれますね。

安田

どうやって見抜いていたんですか?できる・できないを。

石塚

過去から現在までの仕事説明を聞けば「できる・できない」は、すべて明確に出ます。

安田

そんなに明確に出ますか?仕事の説明を聞いただけで。

石塚

はい。明確に出ます。

安田

「自分はすごい成果出してました」って普通はPRすると思うんですけど。

石塚

もちろん。ただ僕もプロなんで、そこから具体的に掘り下げていくわけですよ。

安田

掘り下げる?

石塚

どうしてそうなったのか。そのプロセスにおいて誰のどういう力を借りたのか。どこまでが独力で、どこまでが看板の力なのか。そういう細かい具体的な掘り下げ。

安田

じゃあ、仕事の実績がすべてですか?

石塚

それしかないですね。仕事の履歴でしか見ないです。

安田

なるほど。で、できない人はどういう話をするんですか?

石塚

できない人っていうのは、非常に抽象的な話をするんです。

安田

たとえば、どんな感じで抽象的なんですか?

石塚

たとえば「プロジェクトを統括した」「プロジェクトを立ち上げた」以上、と(笑)

安田

そういう時はどうするんですか?

石塚

「そもそも、これって、どうやって始まったんですか?」「あなたが発案されたんですか?」って聞きます。

安田

「私が発案しました」って言いそうですけど。

石塚

もちろん、そう言うんです。で、それがどの程度のものなのかを、確かめていく。

安田

問い詰めていくと。

石塚

いやいや、べつに取り調べじゃないんで。「おい、おまえ、これ本当か?」みたいな訊き方したら、そこで終わっちゃいますから。

安田

じゃあ、どうするんですか?

石塚

まずアイスブレイクを十分にして、2割増しぐらいで「いやぁ~、安田さん、すごいですねぇ。いやぁ~、素晴らしいですよ」って。

安田

なんか、いやらしいですね(笑)

石塚

でもこれ絶対に必要なんですよ。ちょっと気持ちよくして、ガードが下りたところから本番が始まる。

安田

なるほど。まずはガードを下げさせると。

石塚

下がったところで「安田さんをいい会社にご紹介するために、もっと詳しくお聞きしたいんですけど」って。

安田

なるほど。ここから掘り下げていくわけですね。

石塚

細かい話が始まるんですけど、決して追い詰めない。べつに自白させることが目的じゃないので。

安田

追い詰める必要はないってことですか?

石塚

はい。説明の仕方、やり取りのプロセス、コミュニケーション力、表情。20分あれば「仕事できる・できない」は分かります。

安田

凄いですね。

石塚

それでメシ食ってましたから。

安田

「この人は仕事ができない」って見切る瞬間とか、ありますか?

石塚

「具体的に教えてください」って言っても抽象的だったり。あと、説明が長い。仕事ができない人は総じて説明が長い。

安田

説明が長い人はダメですか?

石塚

ダメですね。そういう人って、説明しながらどんどん外れていく。

安田
わざと外れていってるんですか?
石塚

いやいや、本人は大まじめですよ。

安田

まじめに答えてるつもりが、回答が的を射ていないっていうことですか。

石塚

もともと本人の中に答えがないんですよ。でも本人はあると思ってる。

安田

なんと!大企業にも、そんな人にいるんですか?

石塚

そんな人だらけです(笑)

安田

でも、そんなレベルでは、そもそも大企業に入れないと思うんですけど。

石塚

22~23歳の時の就活レベルは高いんですよ。

安田

元のレベルは高かったけど、ダメになっていくってことですか?

石塚

「ビジネス」と「勉強」とは違いますよね。

安田

まあ、勉強とは違いますね。

石塚

これを結構混同してるんですよ。日本の大企業って。

安田

え!そうなんですか?

石塚

はい。いちばんタチが悪いのは「意識が高くて、勉強ができるバカ」。こんなこと言うとまた刺されるけど。

安田

意識が高くて勉強ができる。でもバカだと。それって、どういう状態なんですか?

石塚

たとえば、あるお題が出て商品開発するとしますよね。

安田

はい。商品開発。

石塚

たぶん、安田さんのアプローチとぜんぜん違うんですよ。

安田

まあ、私は自己流ですから。意識高いバカな人は、どういうアプローチなんですか?

石塚

まず、大量のデータを集める。アンケートをしようとか。で、アンケートも調査会社に頼む。そこで資料が上がってくる。

安田

つまり、外注から始まると。

石塚

で、「これをどうフレームワークにあてはめて分析するかだ」とくる。そんなプロセスでできた商品って、ウケるわけないじゃないですか。

安田

まあ、そうですね。みんなが「いい」っていう商品が売れるわけじゃないですから。それで売れたら苦労しません。

石塚

大企業の仕事って、一言でいうと「気象予報官」なんですよ。

安田

気象予報官?

石塚

「明日は晴れるでしょう」と。大量のデータと、いろんなデータ解析によって予報する。でも必ず当てられるかというと外れる時もある。

安田

ということは、自分発でアイデアなり、商品なりを考えないってことですか?

石塚

そんな必要もないし。

安田

え!必要ないんですか?

石塚

だって、仕事として開発をやってるだけなんで。

安田

どういうことですか?

石塚

商品が売れるかどうかとか、失敗したら借入金が返せないとか、そういうのとほど遠いところにいるんですよ。

安田

じゃあ、「開発しました」ってこと自体が重要だと。結果云々ではなく。

石塚

だってワンショットで10億ぐらい簡単にやれちゃいますから。調査だけで1,000万2,000万かけたってべつにぜんぜん平気。

安田

結果が出なくても?

石塚

それが大企業の当たり前のコスト感覚なんですよ。それでスベったからって、そもそも責任なんてそんなに明確じゃない。

安田

よくそれで成り立ちますね。

石塚

だから今、問題になってるんですけど。

安田

ちなみに、転職マーケットで評価が高いのは、どういう人ですか?

石塚

私がオススメするのは、修羅場体験している人ですね。

安田

修羅場ですか。

石塚

主流とか出世ルートから外れてる人。そういうのに乗ってない人のほうが、活躍する人は多いです。

安田

どうしてですか?

石塚

早々に関連会社とかに出向させられて、現場で汗を流してるから。

安田

じゃあ、現場力のある人は、大手では出世しないってことですか?

石塚

そもそも順調に出世していく人って、そんなドロドロした現場には行かない。

安田

じゃあ、管理職はできるけど、現場はできないってことですか?

石塚

大企業って軍隊型組織だから。作戦本部の参謀の方が上なんですよ。

安田

そういう、いわゆる大手のエリートって、転職市場では人気あるんですか?

石塚

いや、転職は無理ですね。そもそも、そういう人は作戦本部に入ったら、絶対出ないです。

安田

それは、自分の市場価値を分かってるからですか?

石塚

いや、転職自体をすごく下に見てるから。「自分は、保守本流の選ばれしエリートだ」って意識がすごいです。


石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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