さよなら採用ビジネス 第79回「年賀状というDMはもうやめて」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第78回『銀行総合職の凋落』

 第79回「年賀状というDMはもうやめて」 


安田

年賀状って意味あるんですかね。

石塚

事業としては衰退に向かってますけど。まだまだドル箱じゃないですか。

安田

でも現場のノルマは凄いらしいですよ。

石塚

そもそも郵便局のコア事業って金融でしたから。郵便だけ切り取ったら宅急便とモロに激突してしまいます。

安田

ですよね。年賀状なんて現場の人にまで買わせないと目標が達成できない。もうやめたほうがいいんじゃないかって気がします。

石塚

じつは10年前に独立した時から、法人では一切年賀状を出さない派なんです、僕。

安田

じゃあ年賀状はプライベートだけ?

石塚

そう。会社が出す年賀状は0枚です。法人ではクリスマスカード派なんで。

安田

クリスマスカードですか。

石塚

クリスマスカードってけっこう喜ばれるんですよ。個人の年賀状もそろそろやめようかと。

安田

私はもう20年近く前に年賀状をやめちゃいました。

石塚

やめるときってどうしたんですか?「もうやめます」って連絡しました?

安田

いや、そっとやめました(笑)

石塚

安田さんらしいですね。

安田

そもそも法人の年賀状って、ほとんどDMと変わらないじゃないですか。手書きのメッセージすらないと単なる印刷物。

石塚

ホントそうですよね。

安田

せめて一言でも書いてあればともかく。

石塚

無理やりメッセージ書いてる人もいっぱいいますよ。

安田

います、います。受け取る側からしたらノルマ的に書いてるのが丸わかり。

石塚

「またお会いしましょう」とか。

安田

はい。「お久しぶりです!」とか。

石塚

あと「今度メシ行きましょう」とか。

安田

たぶん7・8個のフレーズを書き分けてるんでしょうね。本当に何かを伝えたいわけじゃなく、義務的に手書きのメッセージを足してるだけ。

石塚

本当にそう。誰のメッセージを読んでもほとんど同じ。

安田

もう年賀状を出す側も、受け取る側も「意味ないんじゃないか」って気がします。

石塚

自分でもやってたから分かりますけど、短期間でひとりひとりにメッセージを書くのは不可能なんですよ。

安田

なぜクリスマスカードは出し続けるんですか?意外性があるからですか。

石塚

その通り。意外性があって単純に喜ばれるから。

安田

だったらクリスマスでも何でもない日に、普通の絵ハガキを出すほうが価値あると思うんですけど。

石塚

たしかにそうですね。法人だとどうしても定期的な挨拶状を考えてしまいますけど。

安田

年賀状をやめたキッカケは何かあるんですか?

石塚

仕事始めに事務の女性が「抱えきれないほどの郵便物」を抱えてくるじゃないですか。その一緒くた感が半端ないんですよ、年賀状って。

安田

確かに埋もれまくってますよね。たぶん社長は自分の名前でどこに出されてるかすら知らないですよ。

石塚

でしょうね。

安田

なぜそんな無意味なものを続けるんでしょう。やめる勇気がないからですか?

石塚

日本人って「毎年これをやる」っていうのが好きじゃないですか。もはや風物詩ですよ。季節感を感じるための。

安田

何も考えてないだけじゃないですか。

石塚

僕個人も毎年「やめようやめよう」って思ってて、どんどん数が減っていま夫婦で100枚くらい。

安田

100枚も!すごいですね。私は送られると気を遣うので、誰にも住所を教えなくなりました。

石塚

徹底してますね(笑)

安田

教えてないので年賀状は会社にしか届かないです。

石塚

でも知り合いのお子さんが年賀状のたびに大きくなって「うわ、すごい大きくなったなあ」って、あれで盛り上がるでしょ?

安田

 いやいや、今はFacebookもインスタもあるし。そもそも他人の子供なんて興味ないですよ。

石塚

(笑)

安田

見せたい人はどんどんSNSにアップしていくし。スマホ見たら月単位で出てきます。

石塚

確かに。

安田

でも年賀状って、どこかで突然プツンと終わるんですかね。

石塚

いやあ、終わらないでしょ。

安田

終わらないですか?

石塚

やっぱり高齢の方は好きですもん。

安田

でも年賀状のノルマがこれだけ問題になってる訳じゃないですか。「もう年賀状という商品をやめます」なんてことにはなりませんか?

石塚

それはたぶん無理でしょう。結構な収益源でもあるし。

安田

新しいサービスを始めりゃいいじゃないですか。それこそクリスマスカードとか。

石塚

まあそうですよね。

安田

いかに分散するかだと思うんですよ。だって、まとめて書くだけでも大変ですし。もはや正月に届くということ自体には意味がない。

石塚

安田さん、本当に年賀状が嫌いみたいですね(笑)

安田

嫌いというか、日本の「何も考えないビジネス」の象徴みたいに見えるんですよ。

石塚

年賀状を書いてみたいと思う人とか、いないんですか?

安田

年賀状を書くぐらいなら絵はがきとか手紙を書きますね。

石塚

この1年間で何通ぐらい手紙書きました?

安田

書いてないですね。この10年で数通ってとこじゃないですか。でも本気でメッセージを伝えたいときは、やっぱり手紙かはがきを書きますね。メールじゃなく。

石塚

でも安田さんから直筆の手紙来たら、俺、刺さるなあ。

安田

めちゃくちゃ字が下手なんですけど(笑)

石塚

それが味じゃないですか。手紙の効能ってそこですよ。

安田

会社がつぶれたときに書きましたよ。

石塚

「申し訳ありませんでした」って?

安田

「すみませんでした。でも私との縁が切れて、今後は運が向上すると思います」みたいなのを(笑)

石塚

もらったほうも捨てられませんね。僕個人もやめよっかな、今年から。

安田

法人は「年賀状もどき」はもうやめて、潔くDMとして送ったほうがずっといい。

石塚

「思い出してもらって、何か商売につながったらいいな」ぐらいな気持ちで出してるんでしょうね。

安田

でもそんなうまい話はないでしょう。

石塚

ないと思う。でもDMだったら確かに埋もれない時期がいいですよね。

安田

そりゃあそうです。なぜそこをひと工夫しないのか不思議でしょうがない。

石塚

暑中見舞いも一緒ですか?

安田

まったく同じですよ。やるんだったらズラしたほうがいい。

石塚

じゃあ安田さんだったらどうズラします?

安田

勝手に何かの日を作っちゃいますね。自分の商売と結びつけて「境目の日」とか。

石塚

なるほど!

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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