2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第113回「匠化する採用業界の未来」
やめたとはいえ、ずっと採用事業をやってたので「採用の相談」が多いんですよ。知り合いも採用事業をやってる人が多いですし。
まあ、お互いそうなりますよね。
採用業界が長かったので、どうしてもそうなります。
はい。
それで、余計なお世話と言えば「余計なお世話」なんですけど。やっぱり気になるわけです。「採用業界、今後も食べていけるのか?」ってのが。
ええ、同感です。
リアルな合同説明会もできなくなって。「オンライン採用・オンライン面接のノウハウを教えます」という方向にみなさん向かってますね。
考えることはみんな同じなんでしょうね。
はたして、それでやっていけるのかどうか。石塚さんの見解はどうですか?
まず新卒に関していうと、売上全体が下降していくのは間違いない。学生数が減るってことと、面接手法がオンライン化すると「採用業者が入る必要」がなくなってくる。
じゃあ採用業界の人たちは「自分の首を絞める方向」に向かってると。
ナビや合説で集めて「ふるいをかける」というやり方は減っていくと思います。どんどん1to1に近づいていく。だからマーケットも縮小するし、業者の入る余地がなくなる。
たとえば「オンライン採用のノウハウを教えます」ってのは、ニーズとしてはあるんじゃないですか?
一時的にはあるかもしれない。でもオンライン面接なんて慣れたら自分でできちゃう。ノウハウというほどのノウハウではない。私もオンライン面接してますけど「高い技術が必要だ」とは感じないです。
これまでの新卒マーケットって、だいたい3つに分かれてたんですよ。媒体業、コンサルティング業、アウトソーシング業の3つ。この中で伸びていくものってありますか?
どれも減ってくと思います。
ゼロになる可能性もありますか?
自然は真空を嫌うのでゼロにはならない。ただマーケットとしては間違いなく減ると思います。
どのぐらい縮小しますか?新卒に関しては。
5年で3割ぐらい減ると思います。
じゃあ7割は残るってことですね。
5年間で7割。10年で5〜6割になるでしょうね。
そこで食べている企業さんは、どういう方向にかじを切ると思いますか?
業界から撤退するところが増えるでしょうね。
採用事業自体をやらなくなると。
やるとしても周辺事業に移動していくと思います。
たとえば?
教育研修とか。新卒採用に関しては、そのものに疑問を感じる経営者が増えてるじゃないですか。安田さんも相談受けてると思うんですけど。
雇うこと自体に疑問を感じる経営者さんは増えてますね。
「雇わない経営」と「新卒採用」って、すごくリンクしてると思いませんか。
ほう。どういう部分が?
新卒採用という仕組み自体、「よく考えると、これ、おかしな話だよね」っていう。
新卒採用のどういう部分が?
だって、何のスキルもない人を、こちらが集めて研修して、手間のかかることは全部やらなきゃいけない。
しかも育ったころに辞めますしね。
そう。だから「いまの時代に合ってるの?」「新卒って本当に採用するべきなの?」って考え直してる経営者が増えてます。
でも、石塚さんご自身も「未経験者の採用」って、おすすめしてたと思うんですけど。
僕がすすめる未経験者って新卒じゃないので。新卒って就業経験がないでしょ。
ないのが新卒ですからね。変な経験がないからこそ育てやすいっていう。
中途採用で狙い目なのは「その仕事や業務は未経験だけど、社会人経験はある」という人。
社会人経験のない未経験者はだめってことですか?
社会人経験すらない人を採って「本当にいいんですか?」ってことですよ。
大学中退者もおすすめされてましたけど。
中退してどこかで就業体験のある人ですね。
それはバイトでもOKなんですか?
バイトは内容によりますね。そもそも今の時代の新卒って「育てやすいだろうか?」「染まりやすいのだろうか?」という疑問があります。
確かにスマホを手にした新卒はこれまでとは違いますよね。他社に入った友達ともLINEで情報交換できるし。「ググってみたら先輩の言ってたこと違ってましたよ」とか言いそう。
これだけYouTubeだ何だと「疑似体験できるツール」があって、仕事の話とか職種の話とか業界の話なんて、いまは誰でも入手できるじゃないですか。
そうですね。
YouTubeを真剣に1か月ぐらい見てれば、なんとなく「こんな感じなのかな」って分かってしまう。いろんな情報も価値観もすでにインプットされてる中で、「新卒だから染まりやすい」ってのはもう無いと思う。
「染まりやすい」「育てやすい」ということに、もはや意味がなくなってると。
「育てやすい」ってのは、もう二昔ぐらい前の感覚で、育てる側の力量がないと逆に育てにくい。でも現実には育成能力が高い会社のほうが少ないですよ。
リクナビ、マイナビがつぶれることはないと思いますけど。その周りの代理店は厳しいかもしれませんね。
代理店はもう無理でしょ。
もし彼らに「こういう方向にいったらいいよ」ってアドバイスするとしたら、どうですか?
まずマーケットを、とにかく小さく切ったほうがいいと思います。
ほお。小さく?
たとえば「採用をまるっとお願いします」みたいな仕事に、新卒の業者って食い扶持があった気がするんですよ。
はい。そういうニーズはたしかにありましたね。
インフラそのものをやるか、それか採用業務の一通りをまるっと投げてもらうか。
はい。代理店は後者に向かわざるを得ないです。
その時代が「もう終わりを迎えてるな」って感じがする。
じゃあ、たとえば面接だけを受けるとか?
そうですね。それも本当に最終の見極めだけするとか。
なるほど。でも採用に限らず、どの業界もそうなってきてますよね。
おっしゃるとおりです。
細分化しないと、「ワンストップ」というのがなかなか難しくなってる。
あとは地方大学の理工系学生だけやるとか。あるいは逆に文系で、本当に使える人だけをスクリーニングしていくとか。
それって、小さな2・3人の代理店とか個人だったら可能だと思うんですけど。社員を50人も100人も抱えてる会社が、はたして細分化で全員食えるのか。ちょっと疑問です。
ちっちゃな会社にバラすか、縮小させるかのどちらかだと思います。
中途半端な規模だとしんどいってことですか?
難しいと思います。ますます採用がプロ化というか、“匠化”すると思いますので。
匠化ですか。
すごいレベルの見極めだったり、すごいレベルの口説きであったり。そういうレベルじゃないと、たぶん食えない。仕組みとマニュアルだけ、でも社員は50人もいる会社は、まっ先に「いらない」って言われる。
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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。