第165回「夢は世界の下請け工場」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第164回「デジタル・ネイティブ世代が日本を救う」

 第165回「夢は世界の下請け工場」 


安田

日本の人口に占める外国人の割合が2%を超えたそうです。

石塚

そうみたいですね。

安田

つまり50人に1人以上。オリンピックやワールドカップを見ていても、ミックスルーツの人や帰化した人がすごく増えました。

石塚

スポーツの世界はすごく多いです。

安田

「移民の受け入れ反対」というコメントをよく見るんですけど。この先どうなると思いますか?どんどん外国人が増えていく?

石塚

僕は今後10年で外国人は緩やかに減っていくと思います。

安田

へぇ~。それはなぜ?

石塚

日本の賃金が安いからです。

安田

なるほど(笑)これまでは「うまみ」があったけど、賃金が下がってそれがなくなったと。

石塚

だって高い給料もらえるから、つらいことがあっても耐えるわけじゃないですか。

安田

確かに。

石塚

引力の法則と一緒。当然のことながら日本より賃金が高いところに吸い寄せられます。

安田

ですね。

石塚

ビザもそんなに開放的じゃないし。

安田

ぜんぜん開放的じゃないです。

石塚

一部の外国人を除けばつらい環境。それで賃金も安いとなったら、とうぜん減っていくと思います。

安田

いままで増えていたのは賃金が高かったからだと。

石塚

そうです。要するに為替ですよね。通貨レートでうまみがあったからですよ。

安田

日本に来てた人たちは今後どこに行くんですか。

石塚

賃金が高いところに移っていくと思います。

安田

中国とか?韓国とか?

石塚

ひょっとすると、もう母国のほうが高くなっていくかもしれない。

安田

たしかにそうですね。

石塚

そうなんです。日本人が気づいてないだけで。

安田

「中国は伸びてるけど、アジアはまだまだ」というイメージが強いです。でも成長してないのって日本だけですもんね。

石塚

東京オリンピックの選手村にはコンビニがあって、各国の選手団がすごく驚いてたみたいです。

安田

それはサービスの良さに?

石塚

「こんなに美味いものが、こんなに安いのか!すげーな日本は!」って。一切メディアは報道しませんけど。

安田

それで喜んでちゃダメってことですね。

石塚

いかんということです(笑)もうデフレスパイラルが行き着くところまで行ってしまった。だからコロナが終わったらまたビジターは来ると思う。みんな日本が好きだし。

安田

安いですしね(笑)

石塚

そう、安いし(笑)

安田

だけど働くメリットはないってことですか。

石塚

働くメリットはないですよね。

安田

とはいえ外国人はすごく増えてます。

石塚

これまで日本に来た方のお子さんやお孫さんも増えてますから。

安田

クラスにミックスルーツの子や外国人がいるのが珍しくないそうで。

石塚

もう当たり前ですよ。

安田

だけど今後は減っていくだろうと。

石塚

新たに来る人は減ると思います。もう頭打ちでしょう。

安田

となると、コンビニの店員のような時給が安くて不人気な仕事も、また日本人がやるようになる?

石塚

そこは高齢者雇用を少し伸ばしながら、自動化させるしかないですよ。

安田

でも一方で最低賃金は上がりつづけてます。

石塚

バカげた話ですよね。

安田

バカげた話ですか?時給を上げないと外国人も来てくれないですよ。

石塚

そこだけが問題ではないので。わざわざ外国から来ても学びもなにもない。人件費を抑制したいだけで人を育てない。ただ単に労働力でしか使わない。

安田

研修という名目で現場の作業員にされちゃいますもんね。

石塚

なんの取り柄もなくて「まあ日本しかないか」っていう外国人しか来ないですよ。

安田

ネットには「どんどん移民が増えて、このままだと外人だらけになるぞ」って書かれてますけど。そんなことは起こらない?

石塚

起こらない、起こらない(笑)

安田

外国人に取られるような仕事はもう日本にはないと。

石塚

ないです、ないです。日本にはもうマネーの魅力がないですから。

安田

悲しいですね。

石塚

悲しいけどそれが現実です。

安田

今後は若年労働者が減っていき、外国人も減っていき、どうなるんですか?さらに経済は縮小していくってことですか?

石塚

縮小均衡で、どこかでバランスを取ると思う。

安田

そうなりますよね。

石塚

そこで落ち着いたところが次世代の日本なんじゃないですか。

安田

次世代の日本?

石塚

日本以外の国は物価も賃金も上がり続けてますから。

安田

どんどん差が開いていきますよね。

石塚

必ずどこかでバランスが取れます。人件費が上がり続けると競争力が落ちるので。

安田

逆に日本の競争力が上がると。「日本でつくったら、安くていいものできるぞ」みたいな。

石塚

僕はそこに注目してて、10年以内にまた日本は製造業大国になると予想してます。

安田

それはハイテク分野で?

石塚

いえ。どちらかというと町工場。

安田

白物家電みたいな?

石塚

あり得ますよ。いまの労賃だったら日本でつくったほうが安いですもん。海外進出してた企業も国内に戻り始めてます。

安田

そうなんですか。

石塚

だって日本は労務問題も穏やかだし。

安田

穏やかですか?こんなに厳しい労働法があるのに。

石塚

デモやストライキなんて起きないでしょ?治安も悪くないし。なんたって不良品率が極めて少ない。

安田

日本人は真面目ですからね。

石塚

オリジナルでクリエイティブなことはできないけど、「言われたことを言われたとおり」は強いじゃないですか。

安田

確かに。その部分は最強ですね。

石塚

もう一度「世界のものづくり下請け工場」になるかもしれませんよ。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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