2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第168回「メガバンクの最終形態」
みずほ銀行のシステム障害がすごい事になってます。
もう末期的ですね。
巷では「旧派閥争いの影響だ」とか言われてまして。いくらなんでも、そんなバカなことはないと思うんですけど。
そのとおりですよ。
えっ、本当にそうなんですか!?
そうです。いまだに「興銀」「富士」「第一勧銀」で、ごちゃごちゃやってる。
それがシステムに影響してると。
そう。いまのシステムは「MINORI(みのり)」っていうんですけど。MINORIの仕組みをご説明すると、開発委託が4社。
4社?
開発委託って普通は1社でしょ。
でしょうね。全体像が分からなくなりますから。
IBM、富士通、日立、NTTデータに開発を委託してます。この時点で4社共存。
全体を把握してる人がいないってことですか?
そのとおり。
え〜!
それを運営委託してる会社も2つあって。みずほ銀行とみずほ信託。つまり4社の開発が2系統で運営されてる。
もう無茶苦茶ですね。
むちゃくちゃです。
他のメガバンクはどうなんですか?
もちろんどこかに一本化してます。
普通に考えたらそうですよね。効率よくするために合併するわけですから。
いかにみずほの問題が根深いかってことです。
最後は「国有化して管理するんじゃないか」という噂まであります。
それは、かなり可能性が高いですね。
なんと。
安田さん、金融システムトラブルって何が一番まずいか分かりますか?
貯金を下ろせないことでしょうか。
それも、もちろんまずいんだけど(笑)サイバーテロの標的になることが最大のリスクなんです。
国じゅう大混乱になりますもんね。
そうです。
だけどみずほのシステムは穴だらけだと。
もう「いらっしゃい」って感じですよ。
恐ろしい(笑)
サイバーテロで預金データや運用データが全部持っていかれるとか。消えちゃったとか。あり得ますから。
みずほに貯金するのやめときます。
ですよね(笑)だから金融庁は“おかんむり”なんですよ。
データ改竄なんてされたら貯金がなかった事になっちゃいますね。
金融機関というのは信用が必須のビジネスなんです。
そこを棄損しちゃった。
だから実質国有化とか、一時国有化ってことも選択肢に入ってますよ、金融庁は。
へえ〜。
「おまえらの独自開発なんて信用できない」「三菱のメインフレームを使うぞ」という話がもうできるみたいで。
金融をやってる人だったら、システムの重要性はわかってるはずですよね。
もちろん。
今の時代のお金って単なるメモリーですもんね。
金融はそのメモリーをいかに守るかというセキュリティ事業です。
みずほのトップにだって分かってるはずで。どうしてこんな状態になるまで放置したのか。
これが日本の大企業特有の弊害なんです。いわゆる老害でしかないです、これは。
つまり見栄とか意地みたいなものですか。
結局そうですよ。全体最適を考えられないんです。手を付けようとすると、あらゆるところに忖度しなきゃいけないから。
誰も自分から折れようとしない?
外圧でしか変わらないでしょうね。だから一時国有化して、みずほを思いっきりダウンサイジングする。これは僕の私見ですけど最後は三菱とくっつけると思う。
えーっ、メガバンクがさらに減っちゃうんですか!?
はい。青と赤がくっついて、赤色になる。
青は残らないと。
メガバンクは2つあれば十分。“三菱みずほ”と三井住友だけ。
りそなは?
「りそなも一緒にくっつけろ」と。
その場合トップはどうなるんですか?今回問題を起こした頭取とか。
ぜんぶ詰め腹を切らせて頭取は外部招聘でしょうね。「あなた方はもう切腹してください」っていう。
関連会社に行くこともないですか。
ないです。終わり。一応退職金も出るしいいじゃないですか。
若手や中堅にしてみたら、そっちのほうがやりやすいんですかね。
どうだろうなあ。派閥によるんじゃないですか。
まさか一番下まで派閥があるんですか?
ありますよ、銀行だから。
みずほになってから採用された人は関係ないですよね。
あるに決まってるじゃないですか。
あるんですか!
もちろん。入った時点でどの役員系列なのかっていう。それで人生決まりですよ。
銀行マンって大変ですね。ちなみにメガバンクが2つになったら中小企業への対応は変わりますか?
資金がちょっと危ないところは、もう、難しいんじゃないですか。
メガバンクって小さい会社を相手にしなくなってませんか?
もう、ぜんぜん考えてないですよ。一方でSBIは新生銀行にTOBかけて、こっちは伸ばしてるじゃないですか。
そうなんですか。
ネット銀行が新たな融資の枠組みをつくって、中小企業を取り込もうとしてる。「メガがやらないなら、うちがやるよ」っていう動きですね。見てて面白いですよ。
へえ〜。ということは今後、中小企業はネット銀行に流れていくんですか。
そう思います。
それでビジネスに差し支えないんですか。
もうネットで十分ですよ。どうせメガなんて何もやってくれませんから。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。