第175回「親ガチャ・子ガチャ・国ガチャ」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第174回「自殺率を高める本当の原因」

 第175回「親ガチャ・子ガチャ・国ガチャ」 


安田

「親ガチャ」という言葉をご存じでしょうか。

石塚

はい。

安田

親ガチャの進化版で「国ガチャ」っていうのもあるらしくて。

石塚

ああ。悲しくなってきますね。

安田

親ガチャって、つまり「こんな親の下に生まれたから、その時点でクジ引き外れたぞ」ってことだと思うんです。

石塚

でしょうね。

安田

どう思います?こういう言葉が出てきて。「親孝行」とか「感謝」とかがまったく感じられない。たしかにひどい親もいますけど。

石塚

いるいる。

安田

盲目的に「親はすばらしい」「感謝すべきだ」ってのもどうかと思いますけど。人間って生まれてから10年以上も親がいないと生きていけないわけで。

石塚

いやぁ……親って面倒なものですよ。

安田

面倒ですか(笑)

石塚

うん。親子関係がすっきりニコニコっていう人も、もちろんいらっしゃるけど。

安田

仲の悪い親子っていますよね。

石塚

親のエネルギーが強い人だと、いろんな意味で子どもはマイナスも被ってます。

安田

親のエネルギー?

石塚

特定の価値観を主張するエネルギーが強い親とか。エネルギー量の強い親っていうのは幸・不幸が分かれる気がします。

安田

なるほど。

石塚

まったく子どもにプレッシャーをかけない親もいるじゃないですか。安田さんもそんな感じでしょ?

安田

どうでしょう。でも基本的に親ってそこは気をつけますよね。

石塚

いや、そんなことないと思う。

安田

「子供にプレッシャーかけてやろう」なんて親もいるんですか。

石塚

いますよ。善意でやってるから自分では分からないだけで。

安田

善意でプレッシャーかけるんですか。

石塚

「子どもの将来を考えて、これが正しい」っていう善意があるから厄介なんです。

安田

「おまえのためを思って言ってるんだぞ」みたいな。

石塚

「だから勉強しろ」って。でもこの論理が破綻してる。安田さんは「子どもは生きててくれるだけでいい」っておっしゃるじゃないですか。

安田

そうあるべきだなとは思ってます。でも常に実行できるほど達観できてないです。いたずらしても、元気だというだけでありがたいことなんですけど。

石塚

ほんとそうですよね。

安田

「大人になったときに苦労しないように」と考えると、どうしても迷います。

石塚

親と好みがちがうっていうのも上手くいかない大きな原因です。

安田

好みの違いですか。

石塚

たとえば安田さんは、よかれと思って「ひとりで食べていくために早く商売を覚えさせたい」って言うけど、お子さんは「そんなの迷惑でしかない」と。

安田

確かにそうですね(笑)おっしゃるとおり。

石塚

まったくそんなの興味なくて、「アーティストみたいに生きていきたい」とか。

安田

ありえますね。

石塚

ありえますよね。たぶん「親ガチャ」って、これまでの「親に対してそういうことを言うのは良くない」という規制が外れてきたんだと思う。

安田

言わなかっただけで思ってたということですか。

石塚

はい。親は親、子は子で、組み合わせが悪い場合も、相性が悪い場合もある。「それを認めたらどうか」って僕は思います。

安田

まあ親の側だって「子ガチャ外れた!」みたいに思ってる人がいそうですよね。口に出さないだけで。

石塚

絶対ありますよ(笑)お互い法人ビジネスやってきて、オーナー家の子ども見て「あぁ……」って思うパターン、いっぱいあるじゃないですか。

安田

たしかに。

石塚

「あんな立派な経営者からこんなの生まれちゃって……」みたいな。「この会社も次は大変だなぁ」って。

安田

経営能力は遺伝しないみたいですね。

石塚

しません、しません。

安田

ちなみに親ガチャもレベルがあると思うんですけど。たとえば暴力をふるう親とか、誰が見ても「これは子どもがかわいそうだ」っていうケースもあるし。

石塚

それはありますね。

安田

単なる相性の問題とか、「その程度の小言は、親だったらしょうがないだろう」ぐらいのケースもあるし。

石塚

でも相性って大きいんですよ。

安田

その程度で毒親とか言ったらキリがないと思うんですけど。

石塚

相性も含めて、やっぱり僕は運の要素は大きいと思います。

安田

じゃあ誰のもとに生まれてきたら運がいいんですか?

石塚

それはその子によって違うんじゃないかな。

安田

先日結婚された眞子さんなんて、生まれたときからプリンセスなわけですよ。

石塚

プリンセスですね。

安田

誰もがうらやむような環境のはずなのに、好きな人と結婚することすらできない。

石塚

ね。

安田

何をもって人より運がいいのかなんて、終わってみないと分からないですよ。

石塚

親子の問題って、永遠に解決できない部分がありますから。

安田

難しいテーマですよね。

石塚

相性がいい親子を見てると本当にほほえましい。でも残念ながらそういう親子だけじゃないし。永遠にすれちがう「絶対に認めない」という親子も少なからずいるし。

安田

いますね。なぜ親子でこんなに相性が悪いんだっていうケース。

石塚

我々世代のベンチャー経営者って、親に対してのコンプレックスや反逆心をエネルギーに変えてる人が多いんです。

安田

へえ〜。

石塚

ああいうのを見てると「マイナスもプラスになるんだ」って思う。

安田

人生なんて結果次第ですよ。

石塚

おっしゃる通り。

安田

「国ガチャ」に関してはどうですか。「日本に生まれただけで運がいいじゃん」って、私はずっと思ってたんですけど。

石塚

ふつうに考えたらそうですよね。

安田

だけど日本に生まれたことを「運が悪い」と思ってる人もいて。これは日本が後退局面に入っちゃったからでしょうか。

石塚

答えになってないかもしれないけど、いま海外大学進学率がすごく増えてるんです。

安田

日本から出たいってことですか。

石塚

グローバルに飛び出したいっていう。僕も新潟→東京だから、その気持ちすごくわかるんですよ。物心ついたときから「田舎は嫌だ」っていうのが強かった。

安田

私も大阪から出たくてアメリカまで行っちゃいました。

石塚

合わないと思ったら「それを変えられる」という選択肢が欲しいですよ。

安田

親を取り替えるわけにはいきませんけど。合わないと思ったら家を出たほうがいいんでしょうか。

石塚

親の影響力をいかにして遠ざけるか。そのために自活していくことを真剣に考えなきゃいけない。

\ これまでの対談を見る /

石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

感想・著者への質問はこちらから