2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第175回「親ガチャ・子ガチャ・国ガチャ」
「親ガチャ」という言葉をご存じでしょうか。
はい。
親ガチャの進化版で「国ガチャ」っていうのもあるらしくて。
ああ。悲しくなってきますね。
親ガチャって、つまり「こんな親の下に生まれたから、その時点でクジ引き外れたぞ」ってことだと思うんです。
でしょうね。
どう思います?こういう言葉が出てきて。「親孝行」とか「感謝」とかがまったく感じられない。たしかにひどい親もいますけど。
いるいる。
盲目的に「親はすばらしい」「感謝すべきだ」ってのもどうかと思いますけど。人間って生まれてから10年以上も親がいないと生きていけないわけで。
いやぁ……親って面倒なものですよ。
面倒ですか(笑)
うん。親子関係がすっきりニコニコっていう人も、もちろんいらっしゃるけど。
仲の悪い親子っていますよね。
親のエネルギーが強い人だと、いろんな意味で子どもはマイナスも被ってます。
親のエネルギー?
特定の価値観を主張するエネルギーが強い親とか。エネルギー量の強い親っていうのは幸・不幸が分かれる気がします。
なるほど。
まったく子どもにプレッシャーをかけない親もいるじゃないですか。安田さんもそんな感じでしょ?
どうでしょう。でも基本的に親ってそこは気をつけますよね。
いや、そんなことないと思う。
「子供にプレッシャーかけてやろう」なんて親もいるんですか。
いますよ。善意でやってるから自分では分からないだけで。
善意でプレッシャーかけるんですか。
「子どもの将来を考えて、これが正しい」っていう善意があるから厄介なんです。
「おまえのためを思って言ってるんだぞ」みたいな。
「だから勉強しろ」って。でもこの論理が破綻してる。安田さんは「子どもは生きててくれるだけでいい」っておっしゃるじゃないですか。
そうあるべきだなとは思ってます。でも常に実行できるほど達観できてないです。いたずらしても、元気だというだけでありがたいことなんですけど。
ほんとそうですよね。
「大人になったときに苦労しないように」と考えると、どうしても迷います。
親と好みがちがうっていうのも上手くいかない大きな原因です。
好みの違いですか。
たとえば安田さんは、よかれと思って「ひとりで食べていくために早く商売を覚えさせたい」って言うけど、お子さんは「そんなの迷惑でしかない」と。
確かにそうですね(笑)おっしゃるとおり。
まったくそんなの興味なくて、「アーティストみたいに生きていきたい」とか。
ありえますね。
ありえますよね。たぶん「親ガチャ」って、これまでの「親に対してそういうことを言うのは良くない」という規制が外れてきたんだと思う。
言わなかっただけで思ってたということですか。
はい。親は親、子は子で、組み合わせが悪い場合も、相性が悪い場合もある。「それを認めたらどうか」って僕は思います。
まあ親の側だって「子ガチャ外れた!」みたいに思ってる人がいそうですよね。口に出さないだけで。
絶対ありますよ(笑)お互い法人ビジネスやってきて、オーナー家の子ども見て「あぁ……」って思うパターン、いっぱいあるじゃないですか。
たしかに。
「あんな立派な経営者からこんなの生まれちゃって……」みたいな。「この会社も次は大変だなぁ」って。
経営能力は遺伝しないみたいですね。
しません、しません。
ちなみに親ガチャもレベルがあると思うんですけど。たとえば暴力をふるう親とか、誰が見ても「これは子どもがかわいそうだ」っていうケースもあるし。
それはありますね。
単なる相性の問題とか、「その程度の小言は、親だったらしょうがないだろう」ぐらいのケースもあるし。
でも相性って大きいんですよ。
その程度で毒親とか言ったらキリがないと思うんですけど。
相性も含めて、やっぱり僕は運の要素は大きいと思います。
じゃあ誰のもとに生まれてきたら運がいいんですか?
それはその子によって違うんじゃないかな。
先日結婚された眞子さんなんて、生まれたときからプリンセスなわけですよ。
プリンセスですね。
誰もがうらやむような環境のはずなのに、好きな人と結婚することすらできない。
ね。
何をもって人より運がいいのかなんて、終わってみないと分からないですよ。
親子の問題って、永遠に解決できない部分がありますから。
難しいテーマですよね。
相性がいい親子を見てると本当にほほえましい。でも残念ながらそういう親子だけじゃないし。永遠にすれちがう「絶対に認めない」という親子も少なからずいるし。
いますね。なぜ親子でこんなに相性が悪いんだっていうケース。
我々世代のベンチャー経営者って、親に対してのコンプレックスや反逆心をエネルギーに変えてる人が多いんです。
へえ〜。
ああいうのを見てると「マイナスもプラスになるんだ」って思う。
人生なんて結果次第ですよ。
おっしゃる通り。
「国ガチャ」に関してはどうですか。「日本に生まれただけで運がいいじゃん」って、私はずっと思ってたんですけど。
ふつうに考えたらそうですよね。
だけど日本に生まれたことを「運が悪い」と思ってる人もいて。これは日本が後退局面に入っちゃったからでしょうか。
答えになってないかもしれないけど、いま海外大学進学率がすごく増えてるんです。
日本から出たいってことですか。
グローバルに飛び出したいっていう。僕も新潟→東京だから、その気持ちすごくわかるんですよ。物心ついたときから「田舎は嫌だ」っていうのが強かった。
私も大阪から出たくてアメリカまで行っちゃいました。
合わないと思ったら「それを変えられる」という選択肢が欲しいですよ。
親を取り替えるわけにはいきませんけど。合わないと思ったら家を出たほうがいいんでしょうか。
親の影響力をいかにして遠ざけるか。そのために自活していくことを真剣に考えなきゃいけない。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。