第203回「二極化する都市」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第202回「大企業の業務委託は加速する」

 第203回「二極化する都市」 


安田

日本の人口が年間64万人も減ってるそうです。

石塚

衝撃ですよね。毎年けっこう大きな都市が消滅してるのと同じ。

安田

びっくりしたのは東京の人口も減ってること。都心部だけは増えてるイメージだったんですけど。

石塚

一極集中の流れは変わりつつありますね。

安田

そうなんですか。

石塚

はい。コロナの後押しが大きいと思います。

安田

本社を地方に移す会社も増えてますよね。

石塚

ルピシアというお茶の販売会社も渋谷から北海道に移りました。

安田

お茶の輸入販売って都心でやる必要がないですもんね。

石塚

これだけネットがつながって、消費者もオンラインに慣れちゃうと、「べつに東京に構えている必要ないよね」ってことになる。

安田

パソナも淡路島に移りましたよね。人材派遣・人材紹介って、都心にいないと成り立たないイメージですけど。

石塚

各エリアに営業所は必要でしょうね。スタッフさんやクライアントのフォローもあるので。

安田

将来的には営業所だけ都心に残っていくんでしょうか。

石塚

そこもかなり減らせると思います。面接もオンライン、営業もオンラインで出来ることがわかってきたので。

安田

なるほど。でも地方に移ると採用は大変でしょうね。

石塚

いや、20代30代の移住ニーズが今ものすごく高まってるので。

安田

そうなんですか。

石塚

はい。そこに響く人だけである程度優秀な層が充足できます。

安田

インフラ問題はどうですか。隅々までインフラを張り巡らせるほどのお金が日本にはもうないじゃないですか。

石塚

ないですね。

安田

「ある程度、集まって住んでくれ」ってのが本音だと思うんですけど。

石塚

過疎地にまで行かれたら困るけど、ある一定のところまではむしろ歓迎じゃないですか。

安田

そこそこの地方都市に移ってくれる分には歓迎だと。

石塚

法人事業税も落ちるし。

安田

確かに。でも若者が地方移住を望むのはなぜなんですか。

石塚

地方の何がいいって、生活コストが安いことと、不動産取得価格が安いこと。

安田

なるほど。お金がかからないから住みやすいと。

石塚

そう。会社も働き手もここにメリットを感じてます。

安田

衣食に関しては、都心に住んでいても安い気がしますけど。地方行くともっと安いんですか。

石塚

食に関していうと生産地が近い分、いい食材が買えます。東京だと高級スーパーに行かないとそこまで新鮮な食材は買えないし、安心感も違う。

安田

確かに。いい食材は高級スーパーに行かないと買えないですもんね。

石塚

青果市場を通すと東京に持ってくるのに中4日ぐらいかかるんですよ。だから「朝どれイチゴ」とかいっても3日ぐらい経ってるわけで。

安田

朝どれじゃなかったんですか。

石塚

あれはパフォーマンス。本当の朝どれを全量やってたら採算が合わない。

安田

まあそうですよね。

石塚

だけど移住すると、まさに朝どれ野菜とか朝どれ果実が、目の前にあるわけです。

安田

農家さんが自分で持ってきますもんね。

石塚

おっしゃる通り。

安田

石塚さんもいずれ地方に移るんですか。

石塚

移らないです。

安田

それはどうして。

石塚

僕は田舎出身で18歳までに一生分の田舎暮らしをやったから。もう結構。

安田

私は田舎暮らしがしたいですけどね。

石塚

安田さんは都会っ子だから。

安田

都会っ子というほどでもないですけど。やっぱり都会で生活するって疲れますよ。

石塚

田舎は田舎で大変ですけどね。

安田

「人付き合いが大変なんだ」って言いますよね。

石塚

そうですね。とくに僕はお酒が飲めないから。

安田

お酒が飲めないとだめなんですか。

石塚

お酒飲まないと、もうコミュニケーションできないですよ。

安田

それは新潟だけじゃないですか(笑)

石塚

いやいや(笑)沖縄に移住する人も3人行って2人は戻ってくる。そのいちばんの理由が「人間関係が近すぎる」ってこと。お酒の付き合いをしなくちゃいけないし。

安田

ホントですか?今どき。

石塚

だから地方にとってはチャンスでもあるんですよ。そういう昔ながらの面倒くさい人間関係を解消していけば。

安田

若い人も来てくれるかもしれないと。

石塚

そう。

安田

千葉県は移住者が多いから、面倒くさい人間関係が少ないって聞きます。

石塚

都心からの距離感もちょうどいいですよね。

安田

じゃあ私も千葉ですかね。移転するとしたら。

石塚

なにを重視するかだと思いますよ。それこそ大自然のような環境が欲しいのか。寒いところに住むのが嫌なのか。夏が暑いところが嫌なのか。

安田

寒いのは嫌ですね。

石塚

そもそも安田さんは雪かきとか絶対無理だし。まあ安田さんは九州でしょうね。

安田

福岡ってことですか。

石塚

いやいや。どこもすごくすてきですよ。九州人って基本的にオープンマインドだから。新しいもの好きだし。安田さん、すごく性に合ってると思う。

安田

そう言えば熊本は好きでしたね。昔よく行ってました。

石塚

熊本もいいですよね。

安田

都心離れはどんどん加速するんでしょうか。

石塚

いままでのような東京一極集中はもう終わりでしょうね。ただし東京が激減するかといったら、それは絶対ないと思います。

安田

それはどうして。

石塚

便利だから。

安田

確かに便利ですよね。車も要らないし。

石塚

どこの国の料理でも食べられるし。美味しいし。

安田

じゃあ東京は安泰だと。

石塚

場所によりますね。もう都道府県の時代じゃなく都市の時代なんですよ。

安田

都市の時代ですか。

石塚

そうです。これは東京に限らず。この先、地方都市がどんどん二極化していきますよ。

安田

どういう二極化ですか。

石塚

人が集まる都市と、どんどんいなくなる都市。前者だけが生き残る。後者は消滅する運命でしょうね。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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