日立製作所と凸版印刷が、職種別・テーマ別のインターンシップをやるそうです。

はい。

これはつまりジョブ型雇用を増やすってことですか。

おっしゃる通り。大学3年生の安田くんが「僕、インターンやりたいんです」って言ったときに、「君、どの仕事ができる？」ってことを、いきなり迫られてしまう。

えーっ！でも、学生なんてどの仕事もできないですよね。

いえ。学生でも出来る仕事はありますね。

たとえば？

「理工系でAIやっています」とか、「ロボティクスやっています」とか。

つまり理工系限定ってことですか。

ITやエンジニア系がメインでしょうね。ただ文系でも「ファイナンス専攻なのでファイナンスをやります」というのは考えられる。

ファイナンス専攻だからって役に立ちますか。

基本の知識があるかどうかは大きいですよ。こちらもゼロから教える必要がなくなるじゃないですか。

なるほど。

まず「なにができるの？」という見極めにインターンは適してます。

「この学校での授業はぜんぜん役に立たない」となったら、インターンで落とされちゃうわけですよね。

まずは「基本知識がわかっているかどうか」というチェックだと思います。

つまり、まじめに学校に行って勉強している子が採用されるってことですか。

そうそう。特にビジネスですぐ役に立つ専門性の学びですね。そこに出口を合わせなきゃいけない時代ですよ。

ということは、大学も会社が求めるスキルに授業を合わせるようになっていく？

これが一般化すると、出口をそうせざるをえないですよね。

それって大学の役割なのか？って気がしますけど。アカデミックというより専門学校に近いイメージですよね。

そうなんですよ。

もはや学問の追究ではない気がします。

あらためて「大学とはなんだろうか」って話になると思います。

そもそもアカデミックを追究して大学に行く人のほうが少ないですもんね。みなさん就職するための手段ですから。

たとえばカナダの大学はそこがハッキリしています。「すべての学部が社会で役に立つ」というベクトルなんですよ。

「社会で」っていうのは「会社で」ってことですか。

会社だけじゃなく、たとえばカナダだと森林資源があるじゃないですか。

はい。

そこのプロになりたいということであれば、そういう学びをする森林資源学部というのがあるんです。

たとえば「未知の昆虫を探す」というのも立派な学問だと思うんですけど。社会でニーズがあるかって言われると、ないですよね。お金を払う人がいない。

未知の昆虫を探すのは、ちょっと厳しいかもしれないですね。

最先端の学問って、そもそも何に役に立つかわからないから最先端なんじゃないんですか。

基礎研究の高いレベルはたしかにそうですね。ただそれは学部レベルじゃなくて大学院レベルになってきます。

なるほど。じゃあ学部レベルは実際にお金になりそうな仕事ってことですか。

そうなりますよね。だから「どのジョブに出口を合わせていくのか」って話になる。

実際それ目的で大学に行く人のほうが多いですからね。

基礎研究にしても、企業が研究室にお金を出して「うちのためのこういう基礎研究をやってくれ」って話になるわけですよ。

そうなんですね。

「新しい薬をつくりたいんだけど、昆虫から免疫を上げるための成分を抽出する基礎研究をやってくれ」みたいな。

研究にも金がかかりますもんね。

「研究費はこちらが補助します。そのかわり成果物はくださいね」っていう話。たとえば乳牛に肉牛を産ませるような研究もあるんですよ。

へえ〜。

「僕は畜産専攻だったんで、それをやりたいです」ってことにもなる。

職種別インターンが拡大していくと、インターンの在り方自体が変わっていきますよね。

おっしゃる通り。

ジョブ型で役に立つ人材を見分けるためのインターンですよね。

インターンぜんぶをこれに移行するのは難しいと思います。

そこまでジョブ型には偏りませんか。

100採用するうちの20〜30はジョブ型で、給与設定も変えて、優秀な学生を世界中から集める。

ジョブ型は面接1〜2回じゃわからないですもんね。インターンで見極めるってことですね。

そうです。

面接が苦手な人にはいいですよね。仕事に自信があれば「一度働かせてくれて」ってことになるし。

身に付けたものが自社での価値につながるかどうか。活躍できる人材リストをつくるためのインターンですね。

「体育会で主将をやってました」みたいなのはもう古いと。

そういうのは明かに減っていくと思います。

上位校が有利という図式も変わりますか。

大学のランクを聞くとみんな「えっ？」と思うけど、めちゃくちゃ就職がいい大学ってあるんです。そういう大学はジョブ型で成功しているわけですよ。

へえ〜。

たとえば埼玉工業大学がそうで、めちゃくちゃ就職いいんです。いわゆる普通の就職活動の流れに乗っていないんですよ。

高専とかもそうですもんね。

そう。高専も明確な専門性が身についてるから、企業から指名でくるわけです。

埼玉工業大学はどういう専門性なんですか？

AIとかロボットとかにものすごく力を入れてるんですよ。

なるほど。

ベースを知ってる人が入ってくるので「埼玉工業大から何人くれ」って話になるわけです。

新卒でもジョブ型採用は増えていきますか。

間違いなく増えると思います。特にジョブ型雇用になじみやすいITとか技術とか。

となると面接よりインターンのほうが見極めやすいですよね。

なので選考はどんどん前倒しになっていくと思います。

1〜2週間も働かせてみれば「出来るかどうか」なんて分かっちゃいますからね。

2週間もかからないですよ。

ただ中小企業でこれをやると、そもそもインターンに人が来ないです。

「この会社で何を身に付けられるのか」をはっきりさせないと。テクノロジーがすごく強い会社なんかは独自に学生を引っ張ってきてます。少数派ですけど。

普通の中小企業はどうしたらいいんですか。

もう新卒採用をやめて、第二新卒か中途採用にマーケットを移した方がいい。これまでのような新卒採用では元が取れなくなります。