第226回「みんながハッピーになる未来」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第225回「新卒はオワコン!?」

 第226回「みんながハッピーになる未来」 


安田

キヤノンが工場の国内回帰を考えているそうです。

石塚

はい。

安田

御手洗さん、まだ社長やってるんですね。びっくりしました。

石塚

まあ、御手洗家の家業なので。

安田

そうなんですか。

石塚

はい。でも創業家は強いですよ。

安田

サラリーマン社長とは違いますか?

石塚

国もそうだけれど独裁型って強いじゃないですか。

安田

大変な時代ですしね。

石塚

そう。日本電産、ユニクロ、ソフトバンク、みんな一強独裁ですよ。

安田

トヨタも創業家に戻っちゃいましたもんね。

石塚

そうそう。豊田章男さん一強独裁じゃないですか。

安田

一強独裁じゃないと、やっぱり乗り切れないんでしょうね。

石塚

乗り切れないです。社内調整とかしていたんじゃもう無理。

安田

キヤノンは中国・台湾問題もあって、中国から工場を引き上げるみたいですね。

石塚

リスクが大きいですから。賢明ですよ。

安田

「紛争が起こりそうなところはダメだ」というのと、海外で物をつくるメリットがなくなってきたのと。

石塚

人件費は高くなるし、物価も高くなってきてるし。気づいたら「日本が安くなってきた」って事でしょうね。

安田

これだけ円安だと、日本でつくって海外で売ると儲かるんでしょうね。

石塚

そう。じつは足元の日本経済は調子いいですから。大企業はどこも業績いいですよ。

安田

海外で稼いでる会社はいいでしょうね。

石塚

海外事業は絶好調です。何もしなくたって、為替差益で3割増しになるんだから。

安田

そうですよね。

石塚

本当になにもしていないんですよ。為替が変わっただけで。

安田

海外で稼いで、日本に持って来ればそれだけで儲かると。

石塚

そう。

安田

メジャーリーガーの年収も一気に増えました。大谷さんの年収は30億から50億になりました。為替差益で。

石塚

「ドルで稼いで円で使う」というのは、円安のときの常道です。

安田

でも年収50億円って凄いですよね。

石塚

これが為替レートの魔力です。1ドル150円になると、日本は世界でいちばん安い工場になるらしいです。

安田

なんと。

石塚

品質は高いし、水は豊富だし、治安はいいし。地政学的なリスクはぜんぜんないし。

安田

労働者は真面目だし。

石塚

言われたことを言われたとおりやる国民性だから。

安田

凄いですよね。

石塚

そして、なんといっても日本は物価が安いじゃないですか。

安田

すべてが揃ってますね。

石塚

そして労賃が安い。もう6冠王ぐらいですよ。

安田

海外メーカーも日本に工場を移しますかね?

石塚

たとえば台湾のTMSCは「中国の戦闘機が5分で到着する距離」にあるわけですよ。最新鋭の半導体工場で3ナノとか4ナノをつくってる。

安田

危ないですね。

石塚

そう。それで主要顧客はアメリカだから。アメリカは「おい、中国の先に半導体工場あって大丈夫か?爆撃のリスクあるだろ」と。

安田

なるほど。

石塚

そうすると、「どこがいいんだ?」「日米安全保障条約で守られている日本国内がいい」という話になって、いま続々と工場ができてる。

安田

そうなんですね。

石塚

戦後の日本に近いですよ。円は安いし、労働者は真面目だし、労賃も安いし。

安田

気がついたら世界でいちばん安い工場になって、また仕事が舞い戻ってくるかもしれない。

石塚

最新鋭のものはつくれないけど、最終工程とか最終仕上げなんかやらせたら、日本人は大得意じゃないですか。

安田

たしかに。

石塚

請負製造工場、いわゆるファウンドリーに徹したらいいんですよ。

安田

不正や改ざんが多いですけど。日本製品の品質ってどうなんでしょう。

石塚

それでも世界の平均点でいえば、まだまだ日本は良い品質ですよ。

安田

こんなに不正していても?

石塚

だって、中国とかデタラメだもん。

安田

いまだにそうなんですか。

石塚

信用できないですよ。それに比べたら日本はみんな真面目だから。

安田

真面目なのに、なぜこんなに不正が起こるんですか。

石塚

真面目だから起こるんですよ。会社から言われた目標を達成するために、現場が忖度して。

安田

元を辿れば大企業の高い人件費が問題なんでしょうか。

石塚

そうでしょうね。福利厚生もすごいし。

安田

そこに手をつけるしかないですよね。腹を括って人件費もズバッと削って。

石塚

大賛成。

安田

そうやって、もう一度「世界から信用される高品質の仕上げ工場」を目指すと。

石塚

日本はもうファウンドリーに特化したほうがいいんです。国内工場だけで製造を請け負って、きっちり仕様どおりつくるメーカになっていけばいい。

安田

そういう仕事は得意ですもんね。

石塚

そうそう。半導体とかも売っちゃったけど残しておけばよかったんですよ。

安田

確かに。

石塚

マツダなんてもう2年前にSUVを広島に戻してますから。

安田

そうなんですね。

石塚

カントリーリスクを考えても日本のほうがベターだし。為替もこうなったから、さらに追い風が吹いている。

安田

受託製造だけで日本人の給料は上がりますか。

石塚

上がると思う。ただし、いちばんのネックは世界の工場になるには労働力が足りないところ。

安田

どうすれば解決できるんですか。

石塚

こんなこと言うと怒られるけど、生産性の低い会社からどんどん移動させたらいいんです。「製造業は最賃1,500円にする」って言ったら、そりゃみんな来ますよ。

安田

そうなれば製造現場の人は潤いますね。

石塚

大企業はどんどん海外で稼げ。国内は観光業と受託製造のファウンドリーで「世界トップを目指そうぜ」ってやれば、みんなハッピーですよ。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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