2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第227回「定位安定の未来」
ユニクロさん海外で絶好調だそうです。
日本で980円のシャツがニューヨークでは4,000円で売れますから。
円安で国内が儲からないというか、海外が儲かってしょうがないんでしょうね。
為替プラス物価で儲かるんですよ。アメリカはじめ海外は物価が高いから。僕と安田さんでお昼食べたら、たぶん6,000円ぐらいしますよ。
なんと!
新橋の安い店に行けば2人で2,000円しないじゃないですか。
山盛り出てきますよ(笑)
それが2人で6,000円ですから。為替差益もあるけど、海外事業はこの物価の差があるから儲かる。
ユニクロってテニスのフェデラーや錦織選手にすごい広告費を払ってまして。これは世界ブランドをつくろうという戦略でしょうか。
もちろんそうです。
日本国内のマーケットって、もう柳井さんはあまり考えていないんですか。
最優先にはしていないと思います。だって売れる数が違うから。
海外に比べて日本は異常な安さだし。ラーメン一杯1,000円でも、我々は「高っ!」ってイメージになっちゃいます。
ニューヨークなんて1杯3,000円ぐらいですよ。
1杯3,000円するのが当たり前で、それでも行列ができちゃうっていう。
そう。行列ができる。もともと物価が高いですから。
日本は本当にガラパゴス的なマーケットになってきましたね。
だから観光客が増えるんですよ。
増えましたねえ。
この前、東京駅で観光客としゃべってみたんですけど。みんな日本のリピート客ですよ。ちょっと嬉しかったですけど。「日本好き」「日本楽しみにしてる」って。
リピートなんですね。そんなに行くところがあるんでしょうか。
あるんですよ。「あそこ行く」「ここも行きたい」って、もうみんな長期滞在。4週間は当たり前。いちばん長い人は3か月。
そんなに!
たぶん300万ぐらい使うんじゃないかな。
なんと。でも4,000円のユニクロが980円ですから。山のように買って帰るんでしょうね。
円高のときにアメリカでブランド物を買ったのと同じ理屈ですよ。ユニクロなんか山ほど買ったって「こんなに安いのか!」ってなる。
1万円も出したら山ほど買えますね(笑)
もう持てないぐらい買える(笑)「お父さん、こんなに最初から服買ったら、もう海外便で送るしかないよ」って。
いずれは海外に合わせてユニクロも値上げするんでしょうか。
ちょっとずつ値上げするんでしょうけど。日本人の「値上げアレルギー」って相当強烈なものがありますから。
ですよね。
今回は「ウクライナの事情があるからしょうがない」という合意ができてるけど。みんな内心では嫌でしょうね。
物価が上がっても給料は上がりませんし。
日本人の場合は値上げがものすごく嫌いで、そのぶん給料が上がらなくても我慢しちゃうんです。
この先もずっと安い国のままでしょうか。
低位安定の国になるでしょうね。
そんなのでやっていけるんですか。
国内から出なければやっていけるでしょう。目指すは「スペイン以上、イタリア以下」という感じじゃないですか。
なるほど。
GDP規模や観光の力でいうと、「イタリアほどは人を呼べないかもしれないけれど、スペインよりは呼べるだろう」みたいな。
やっぱり観光頼みですか。
まず大手企業はもっとガンガン海外でドルを稼げと。ユニクロも海外売上比率が高いし、われわれの古巣のリクルートだって、もう海外売上のほうが、はるかに高い。
えっ?そうなんですか。リクルートも?
そうですよ。
リクルートは海外でなにを売ってるんですか?
たとえばアメリカではいろんなネット事業をやってますよ。中国の人材市場でも手を広げてるし。
へぇ~。
もう日本は最優先じゃないです。いまの社長は、ほぼ3分の2ぐらいはアメリカの西海岸にいますから。
え!そうなんですか?西海岸で何やってるんですか。
ベンチャーキャピタルとかの投資ですよ。リクルートは資金力があるから。
たしかにIndeedも買っちゃいましたね。
買っちゃいました。
もうインターナショナル企業なんですね。
さらに為替で何もしなくたって3割はねる。だから大手はドルで稼いで円に戻せばそれだけで儲かる。海外比率が高いところは追い風吹きまくりです。
ユニクロの柳井さんも西海岸ですか?
たぶん中国だと思う。ユニクロの海外売上の半分は中国なので。
中国でつくって中国で売ってるんですか?
今は他国でつくって中国で売ってます。中国の生産コストが上がったので、もっと安い国でつくる。そのうち「もう1回日本に戻す」ってなるかも。
さすがにユニクロの工場は国内では無理でしょう。
いやいや。「ユニクロの工場が秋田や新潟にできた」ってなるかもしれない。そうなったら本当に安いんだろうなってことですよ。
昔は「中国でつくってるから、ユニクロはこんなに安いんだ」って言われてたのに。「日本でつくっているから、こんなに安く中国で買えるんだ」ってなりますね。
「おっ、メイドインジャパン、安いよ。安いけど、あそこはすごく物もいいぞ」みたいな。
いいのか、悪いのか(笑)
ユニクロが一番恐れているのは中国政治の影響ですよ。あそこは民主主義なんかないから。お店も政治の動きでぶっ壊されたり。
あり得ますね。
中国と台湾が戦争になったときに、「ユニクロはどうするんですか?撤退するんですか?しないんですか?」って迫られるじゃないですか。
そうなりますよね。
たぶん柳井さんは、アフリカとかを考えているんじゃないですか。
アフリカですか。
インフラをつくるのが大変ですけどね。水の余裕がないので。
国民性はどうなんでしょう。ものづくりに向いてますかね。
そこは機械化とマニュアル化しかない。
日本に工場回帰という可能性もありますね。喜ばしいことなのかどうか。
低位安定も悪くはないと思いますよ。ただし安いということは、会社なんか買われ放題ですけど。
外資に買われて、国内の外資系企業で日本人がものづくりをするわけですか。
ある意味それがグローバル化だから。案外今より稼げるかもしれません。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。