2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第235回「人がやるべき仕事」
第236回「日本人横綱が少ない理由」
出世を望まない公務員が増えているそうです。
「昇任昇格試験」を受けないっていう。
収入が上がらなくてもいいってことですよね。
そうです。
民間企業で「プレイングマネージャーは嫌だ」というのは分かるんです。現場の仕事もやりながら管理職も追加されて、給料以上に仕事が増えるから。
もう厳しいでしょうね。
でも公務員の場合は職級が上がれば収入も増えるので。断る理由があるんだろうかと思うんですけど。
そこに費やすエネルギーの問題でしょうね。
「勉強する時間がない」「昇進に費やすエネルギーを家族といる時間にかけたい」と書かれてました。
お金という報酬が「オールマイティではなくなっている」ということですよ。
でも少ないと文句を言うじゃないですか。
上げ過ぎず、下げ過ぎず、ちょうどいいところをキープするのがいちばんいいんです。
なるほど。公務員さんの思考には合っているのかも。
男性でも女性でも、ある意味いちばん資産的・経済的に成功する人生は、公務員になって公務員と結婚することですよ。
え!そうなんですか。
部署はどこでもいいから、市役所だったら同じ市役所の人と結婚する。
それが経済的にいちばん上手くいく方法?
公務員ってね、男性も女性も一切金額が変わらないので。
そうなんですね。
はい。そうすると収入が2倍になるわけですよ。
確かに。
在職年数に乗じて出される退職金と、それから年金もあります。
ありますね。
それもぜんぶ2倍になるわけですよ。
ということは公務員同士で結婚したら、もう勝ち組と。
勝ち組です。
すごいですね。
1億円以上の投資資産を持っている人って、地方公務員が多いんです。
地方公務員ってそんなに稼げるんですか。
地方公務員はその市の財政によって給与水準が違うんです。
なるほど。
国家公務員は人事院が給与体系を決めるんですけど、地方公務員というのは「各地方で決めなさい」ということになってる。
ということは、いい地方で公務員をやっている人は非常に恵まれていると。
おっしゃる通りです。税収が豊かな市町村ですね。たとえば大企業がそこに所在しているとか。競馬場や競艇場があるとか。
競馬場?
税収がすごいですから。府中市なんてお金持ちですよ。府中競馬場がありますからね。
へぇ~。
あと三鷹市もリッチです。三鷹市は大手上場企業が5社ありますから。
府中や三鷹で公務員をやっている人は、地元の公務員と結婚しておけば安泰と。
もう安泰でしょ。
府中だったら家賃も安そうですし。
だからお金が貯まるわけですよ。手堅いです。おもしろい人生かどうかは別として。
価値観的にはどうなんですか。やっぱり公務員どうしで結婚したほうが上手くいくんですか。
上手くいくと思います。お互いの仕事のこともわかるし、休みも取りやすいじゃないですか。
両親が公務員の家って、お子さんも公務員になりますよね。
いい部分を近くで見てますから。
親も「とにかく公務員になれ」って言うんでしょうね。
そういうケースはすごく多いです。
公務員の安泰な生活ってこの先も続くんでしょうか?
「安泰だ」という気持ちは強いでしょうね。実際どうなるかは分かりませんけど。
日本の財政が破たんしかけてるのに。
中にいる人は「永遠に、この聖域がつづく」と思っているんじゃないですか。
今回のニュースのように「多くを望まなければ豊かに生きていけるよね」って感じでしょうか。
出世しちゃうと仕事の時間も長くなるし。他の部署との折衝もあるし。なんといっても議会での議員対応をしなきゃいけない。
それは大変なんですか。
議員から何かねじ込まれたり。無茶言われたり。議会に行って説明したり。面倒くさいじゃないですか。役所の課長ってけっこう偉いんですよ。
そうなんですか。
役所の課長は一般企業の部長ぐらい。役所の部長は取締役ぐらい。
となると、責任も重くなるし仕事時間も長くなる。
そう。
夫婦で公務員なら出世しなくても十分稼げるし。
ガチンコ勝負ばっかりやって怪我するより、のんびりやったほうがいいんです。トータルの年収はこっちのほうが高い。
なるほど。
むかし、蔵間(くらま)という力士がいまして。同期はみんなスター力士で横綱大関なんです。けど蔵間はよくて関脇いつも前頭何枚目を行ったり来たり。
だけど稼いでいたと。
ものすごく在位が長くて大金持ちだったらしいです。
日本人の横綱が少ないのもなんか頷けますね。横綱は成績が悪いと引退ですけど、大関は勝ち越していればずっと維持できるから。
そうそう。
日本人の安定気質に合っているのかもしれないですね。
8勝7敗でずっと大関みたいな。
横綱になったからって年収が倍になるわけじゃないし。
ガチンコ勝負ばかりやって怪我でもしたら終わりですから。
「釣りバカ日誌」のハマちゃんって、もしかしたら最先端を行ってたのかもしれませんね。出世を捨てて釣りをとことん楽しんで。
プライドさえこだわらなければ、そこそこの所で長くやったほうがいい。
そういう人ばかりでも公務員の仕事って回るんですか。
回りますよ。言われたことを言われた通りやればいいんだから。
今は日本全体がそうなりつつあります。
日本人は根っこが公務員気質なんでしょうね。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。