2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第242回「求人はこのゾーンを狙え」
40~50代の転職が増えてるんですか?
はい、増えてます。
「40歳を超えると仕事ないぞ」って言われてましたけど。45以上で転職して、なおかつ収入が増える人が出てきてるって。これ本当ですか。
これは事実ですね。
へぇ~。なぜ、こういうふうに変化してきたんですか?
まず企業側が本当に人手不足で。「もうそんなことを言ってられないぞ」と。今までは年齢だけで書類選考落ちにしてたんですけど。
企業側に余裕がなくなってきたと。
昔は上長が「40過ぎなんか駄目だ」って言えば、ぜんぶ書類選考でアウト。だけどそんなこと言ってられないわけですよ。
これって「スキルのある45歳以上人材」の話ですか?誰でも仕事が増えたというわけではなく。
もちろんそうです。40代50代は「スキル、実績、人間性」の3つ。これがあれば格段にチャンスが増えてます。
人間性って具体的には何を求められるんですか?
40歳50歳と言えども、新しい会社では新入社員じゃないですか。
そりゃそうですね。
その感覚を持ってなきゃいけないってことですよ。
素直さみたいなところですか。
対応力と言ったほうがいいと思います。新しい環境に合わせる力ですね。
なるほど。性格のいい悪いではなく環境に適応できる力ですね。
もちろん性格や人間性も良いほうがいいです(笑)
ですよね(笑)
だけど採用の本質ではないということです。「性格は悪いけど年間5億売る営業」と「性格は良いけど年間5,000万も売れない営業」だったら、社長はどっちを取るかって話。
性格の善し悪しって「コインの表裏」みたいなところもありますし。のんびりな人が丁寧だったり。
ビジネス的な「性格の悪さ」というのは、そういうのとはちょっと違います。
どういうのなんですか?
できる人の足を引っ張ることですね。ハードワークの人とか、レベルの高い仕事を求める人を、陰でディスること。
なるほど。それは裏返しても良くなりませんね(笑)
「おまえら何やってんだ。こんなレベルでのんびりするな!」って人は、経営者から見たら、ぜんぜん性格なんて悪くないんです。
あくまでも経営者から見た性格の良し悪し。それが大事ってことですね。
もちろん。
ちなみに石塚さんは「60歳以上の求人」をよく現場で勧めるじゃないですか。
はい。狙い目ですから。45歳以上はもうみんな狙ってるゾーンなので。
なるほど。さらに一手先を読んでるわけですね。
はい。60歳オーバーだと今は選び放題ですね。なんといっても人数が多いから。いい人に遭遇できる確率が格段に高いです。私のおすすめは50〜60代。
50〜60代を採用する時に、重視することってありますか?
さっきも言った「適応力」だと思います。
そこですか。
スキルや実績があることは大前提として。あとはその経験をうまく、新しい会社で生かせるかどうか。
50代って、まだ稼がなきゃいけない人もいますよね。子どもの年齢によって。
いっぱいいますよ。
60代は子育ても終わってるから、打ち出すポイントが変わるんでしょうか。
晩婚化もあるから。60過ぎてもまだ教育費がかかる層は多いですよ。
そうなんですね。私のような人ですね(笑)
年金の支給も遅くなってるし、まだまだ働かなきゃいけない。
大変ですね。
いやいや。昔にくらべたら食生活や住環境もいいから、今の60歳って元気なんです。
体は元気だけど、仕事はあまりできない50〜60代もいますよね。
たくさんいます。
そういう方たちはどうなるんですか。
仕事ができない人はその時点で終わりですよ。
60歳を過ぎて「仕事ができる人」ってどれぐらいいるんですか。
職種によりますね。いわゆるブルーカラー系だったら、7割8割は声かけてもいいなっていう感じです。
そんなにいるんですか。
ブルーカラー系は毎日現場で仕事をしているから。経験、勘、場数は侮れないです。
ホワイトカラーはどうですか?
ホワイトカラーは20%ぐらいじゃないですか。
厳しいですね。採用されるのはどんな人ですか。
たとえば経理や財務のような専門知識を持ってるとか。そういう人が1人いたらすごく便利なんです。総務もやったことあるし、法務も兼任してたし、みたいな人。
中小企業の総務は何でもやらされますからね。
そうなんです。だから使い勝手がいいんですよ。銀行とのパイプもあったり。意外にITもちょっと強かったり。
経理総務系以外はどうですか?
あとは営業系ですね。電話1本、メール1本、LINE1本で、すぐトップと繋がれる人。こういう人が来たら即採用ですね。
エンジニアとかはどうですか?
分野によるけどありますね。大手での経験値が多いエンジニアとか。それを欲しがる中小企業がいるのは事実です。
中小企業でどんな仕事をするんですか。
工場長として来てもらうとか。瞬く間に現場が変わったという例もあります。
なるほど。50〜60代は使い方が大事ってことですね。
はい。使い方次第でいくらでも戦力になります。
若い人材はもう採用できないし。そこを狙った方がいいってことですね。
経験者採用ならそうですね。未経験者なら20代でもぜんぜん採用できます。
20代の採用ってかなり売り手市場ですよね。
未経験だったら十分に採用できます。とくに地方では大成功してます。打ち出し方さえ間違えなければ。
地方の20代採用ってみんな苦労してるイメージですけど。
こんなこと言ったら怒られますけど、求人のやり方が下手なんですよ。
やり方さえ間違えなければ、20代未経験者は採用できると。
出来ます。いちばん動かないのは30代ですね。お子さんがまだ小さいし。
仕事のやりがいとかでは口説けませんか。
もう“嫁ブロック”が凄くて。本人が「転職したい」って言っても「あなた何考えてんの?」で終わり。ここは狙ってはいけないゾーンです。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。