第242回「求人はこのゾーンを狙え」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第241回「賃金プラスアルファの時代」

 第242回「求人はこのゾーンを狙え」 


安田

40~50代の転職が増えてるんですか?

石塚

はい、増えてます。

安田

「40歳を超えると仕事ないぞ」って言われてましたけど。45以上で転職して、なおかつ収入が増える人が出てきてるって。これ本当ですか。

石塚

これは事実ですね。

安田

へぇ~。なぜ、こういうふうに変化してきたんですか?

石塚

まず企業側が本当に人手不足で。「もうそんなことを言ってられないぞ」と。今までは年齢だけで書類選考落ちにしてたんですけど。

安田

企業側に余裕がなくなってきたと。

石塚

昔は上長が「40過ぎなんか駄目だ」って言えば、ぜんぶ書類選考でアウト。だけどそんなこと言ってられないわけですよ。

安田

これって「スキルのある45歳以上人材」の話ですか?誰でも仕事が増えたというわけではなく。

石塚

もちろんそうです。40代50代は「スキル、実績、人間性」の3つ。これがあれば格段にチャンスが増えてます。

安田

人間性って具体的には何を求められるんですか?

石塚

40歳50歳と言えども、新しい会社では新入社員じゃないですか。

安田

そりゃそうですね。

石塚

その感覚を持ってなきゃいけないってことですよ。

安田

素直さみたいなところですか。

石塚

対応力と言ったほうがいいと思います。新しい環境に合わせる力ですね。

安田

なるほど。性格のいい悪いではなく環境に適応できる力ですね。

石塚

もちろん性格や人間性も良いほうがいいです(笑)

安田

ですよね(笑)

石塚

だけど採用の本質ではないということです。「性格は悪いけど年間5億売る営業」と「性格は良いけど年間5,000万も売れない営業」だったら、社長はどっちを取るかって話。

安田

性格の善し悪しって「コインの表裏」みたいなところもありますし。のんびりな人が丁寧だったり。

石塚

ビジネス的な「性格の悪さ」というのは、そういうのとはちょっと違います。

安田

どういうのなんですか?

石塚

できる人の足を引っ張ることですね。ハードワークの人とか、レベルの高い仕事を求める人を、陰でディスること。

安田

なるほど。それは裏返しても良くなりませんね(笑)

石塚

「おまえら何やってんだ。こんなレベルでのんびりするな!」って人は、経営者から見たら、ぜんぜん性格なんて悪くないんです。

安田

あくまでも経営者から見た性格の良し悪し。それが大事ってことですね。

石塚

もちろん。

安田

ちなみに石塚さんは「60歳以上の求人」をよく現場で勧めるじゃないですか。

石塚

はい。狙い目ですから。45歳以上はもうみんな狙ってるゾーンなので。

安田

なるほど。さらに一手先を読んでるわけですね。

石塚

はい。60歳オーバーだと今は選び放題ですね。なんといっても人数が多いから。いい人に遭遇できる確率が格段に高いです。私のおすすめは50〜60代。

安田

 50〜60代を採用する時に、重視することってありますか?

石塚

さっきも言った「適応力」だと思います。

安田

そこですか。

石塚

スキルや実績があることは大前提として。あとはその経験をうまく、新しい会社で生かせるかどうか。

安田

50代って、まだ稼がなきゃいけない人もいますよね。子どもの年齢によって。

石塚

いっぱいいますよ。

安田

60代は子育ても終わってるから、打ち出すポイントが変わるんでしょうか。

石塚

晩婚化もあるから。60過ぎてもまだ教育費がかかる層は多いですよ。

安田

そうなんですね。私のような人ですね(笑)

石塚

年金の支給も遅くなってるし、まだまだ働かなきゃいけない。

安田

大変ですね。

石塚

いやいや。昔にくらべたら食生活や住環境もいいから、今の60歳って元気なんです。

安田

体は元気だけど、仕事はあまりできない50〜60代もいますよね。

石塚

たくさんいます。

安田

そういう方たちはどうなるんですか。

石塚

仕事ができない人はその時点で終わりですよ。

安田

60歳を過ぎて「仕事ができる人」ってどれぐらいいるんですか。

石塚

職種によりますね。いわゆるブルーカラー系だったら、7割8割は声かけてもいいなっていう感じです。

安田

そんなにいるんですか。

石塚

ブルーカラー系は毎日現場で仕事をしているから。経験、勘、場数は侮れないです。

安田

ホワイトカラーはどうですか?

石塚

ホワイトカラーは20%ぐらいじゃないですか。

安田

厳しいですね。採用されるのはどんな人ですか。

石塚

たとえば経理や財務のような専門知識を持ってるとか。そういう人が1人いたらすごく便利なんです。総務もやったことあるし、法務も兼任してたし、みたいな人。

安田

中小企業の総務は何でもやらされますからね。

石塚

そうなんです。だから使い勝手がいいんですよ。銀行とのパイプもあったり。意外にITもちょっと強かったり。

安田

経理総務系以外はどうですか?

石塚

あとは営業系ですね。電話1本、メール1本、LINE1本で、すぐトップと繋がれる人。こういう人が来たら即採用ですね。

安田

エンジニアとかはどうですか?

石塚

分野によるけどありますね。大手での経験値が多いエンジニアとか。それを欲しがる中小企業がいるのは事実です。

安田

中小企業でどんな仕事をするんですか。

石塚

工場長として来てもらうとか。瞬く間に現場が変わったという例もあります。

安田

なるほど。50〜60代は使い方が大事ってことですね。

石塚

はい。使い方次第でいくらでも戦力になります。

安田

若い人材はもう採用できないし。そこを狙った方がいいってことですね。

石塚

経験者採用ならそうですね。未経験者なら20代でもぜんぜん採用できます。

安田

20代の採用ってかなり売り手市場ですよね。

石塚

未経験だったら十分に採用できます。とくに地方では大成功してます。打ち出し方さえ間違えなければ。

安田

地方の20代採用ってみんな苦労してるイメージですけど。

石塚

こんなこと言ったら怒られますけど、求人のやり方が下手なんですよ。

安田

やり方さえ間違えなければ、20代未経験者は採用できると。

石塚

出来ます。いちばん動かないのは30代ですね。お子さんがまだ小さいし。

安田

仕事のやりがいとかでは口説けませんか。

石塚

もう“嫁ブロック”が凄くて。本人が「転職したい」って言っても「あなた何考えてんの?」で終わり。ここは狙ってはいけないゾーンです。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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