第39回 「オリジナリティのある家」が贅沢品になる時代

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第39回 「オリジナリティのある家」が贅沢品になる時代

安田
「大量に販売することで質のいいものを安く販売できる」というのが、大手の強みだと思うんです。どの業界でもそれが当たり前なのに、住宅業界だけなぜか逆になっていませんか?

渡邉
ああ、確かに。大手の方が中小の住宅メーカーより値段が高い傾向にありますね。
安田

そうなんですよ。それが不思議だなぁと思っていて。パッケージ化された、つまり大量生産の家を売っているのに、中小が販売するオリジナリティ性の高い家よりも高いですよね。それはなぜなんでしょう?


渡邉

なかなか難しい質問ですが、一つの要素として「信頼感」というのはあると思います。住宅のように高額の買い物の場合、お客さんは絶対に失敗したくない。だから名前を知っててテレビCMもやっている大手を選びたい。そういう層は多いと思いますね。

安田
ああ、なるほど。「一生ものだから積水とか住友みたいな大手で家を建てたい」っていう人が多いから、ある程度高くても売れていると。

渡邉
ええ。あとは、家を買う時って意外とお金が集まるというか。親の世代がまだ資産を持っている世代ですから、頭金を全額出してくれたり、ここに建てなよって土地を用意してくれたりする。
安田
そうかそうか。親世代が援助してくれて、「その代わりに積水で建てなさい」みたいなケースもありそうです。年齢が高い人ほど大手への信頼が強い気がしますし。

渡邉
そういうことです。とはいえそういうマーケットもどんどん小さくなってきていると思います。全世代的に金銭的余裕がなくなってきて、大手を含め価格がシビアに見られるようになりましたから。
安田
なるほど。ということは大手も値段を下げていかざるを得ないですよね。でもそうなると、いわゆる「質の良い家」を建てるのが難しくなっているということになりませんか

渡邉
ええ。実際、注文住宅は利益が出なくなってきてます。今は建売の分譲住宅、中でも同じ型で大量に建てて売っていくような住宅が伸びていますね。
安田
ふ〜む。せっかく一生に1回の家を建てるのに、「自分が住みたい家」にこだわるんじゃなくて、日本中どこに行ってもあるような家を買うわけですか。まぁ、ない袖は振れないわけで、仕方がないんでしょうけど。

渡邉

実際、そちらの方が安いですからね。規格化されているので品質も安定してますし。提供する側にとっても、注文住宅と比べるとコミュニケーションコストが全然違いますよね。

安田
ああ、確かに。要望を細かく聞きながら家を建てる注文住宅が「サービス業」だとしたら、分譲住宅は「物売り」のようなものですもんね。そしてこれはまさに、冒頭話していた大手が強い分野ですね。
渡邉

仰るとおりです。同じ規格で資材を大量に仕入れて、バンバン建てて売るわけですからね。品質に関する国の基準が厳しくなったことで、性能がどんどん上がっているんです。だからこれからさらに伸びていくと思います。

安田

なるほど。でもそれって見方を変えると、日本全国民がプリウスに乗ってるような感じですよね。安くて燃費もいいし壊れないんだけど、どこへ行っても皆同じっていう。


渡邉
そうかもしれませんね(笑)。でも最近少し面白い動きがあって、そういう大量生産の分譲建売を買って、それから自分らしくリノベーションするっていう人が増えているんです。一つのマーケットになりそうなくらいの勢いで。
安田

ああ、いいですね! つまりベースとなる家は安く買って、そこから時間をかけて自分好みの家を作り込んでいくわけだ。確かにニーズがありそうです。……でも、そういう流れが盛り上がっていけばなおさら、大手一強の時代になりそうですね。


渡邉
そうですね。実際、地場の優良メーカーさんは苦労されています。工務店さん同士の吸収合併も加速してますしね。
安田

ああ、やっぱりそうですよね。小さい会社が生き残るには、どんどん吸収合併して大きくなっていくか、価格が高くても付加価値のある商品を売っていくかしかないですから。


渡邉
本当にその通りです。後者の例で言えば、年間5〜10棟でこだわりの家を建てているところは残っていたりします。ターゲットとコンセプトが明確なぶん、値上げもある程度強気でできるんでしょうね。
安田

ただそうやって単価が上がっていくと、「私だけのオリジナルの家」にはごく一部の人しか住めなくなって、ますます日本全国どこに行っても似たような家が増えていくことになりそうですね。

 


対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

Facebook

1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから