ピンポイント採用サイト

恐ろしく採用難の時代である。少しでも採用力を高めるために企業は様々な努力をしている。そのひとつが自社採用サイトの充実である。会社訪問する前、就職先を決める前に、求職者は必ずその会社のホームページを確認する。しかし通常のオフィシャルサイトは顧客向け、金融機関向け、取引先向けに作られている。そこで企業は採用目的に特化した採用サイトをつくるようになった。単に待遇や仕事内容を書いたページではなく、求職者を惹きつけることに特化したオンラインページ。

見込み客を啓蒙してお問い合わせに繋げるように、求職者を啓蒙して応募へと繋げていく。そこには「仕事のやりがい」や「風通しの良い社風」など、より多くの応募者に好印象を持たれる情報が掲載されている。採用サイトがまだ普及していない時代はこれで十分であった。仕事内容や会社の雰囲気が丁寧に書かれているだけで、他社との差別化が図れたからである。

だがそのステージはかなり前に終わっている。求人媒体に載っている企業情報も採用サイトに載っている仕事情報も似たようなものばかり。もはやこのような求人情報は何も言っていないに等しいのである。「圧倒的な待遇」や「特殊な社風」があれば話は別だが、そういう企業はそもそも採用に困っていない。

普通の企業が採用を成功させるために必要なもの。それはターゲットを極限まで絞り込んだ採用サイトである。30人中28〜29人にはまったく響かない。それどころか応募意欲が下がってしまう。その代わりターゲットにだけは刺さりまくる。「他社とはまったく違う」「あまりにも自分にピッタリ」「ここで働きたい」という反応が起こる。

こういうサイトをつくるにはターゲットを絞り込むほかない。求職者が自分で判断できるようにマイナス情報もきちんと書き込む。どんなスキルを求めているのか。どんなスキルは求めていないのか。自社は何を提供できるのか。何を提供できないのか。どんな人にとって居心地がいいのか。どんな人にとって居心地が悪いのか。辞めた人はどんな理由で辞めたのか。

多くの人がプラスだと感じる情報を載せれば載せるほど他社と差別化できなくなる。入社意欲も定着率も下がる。多くの人がマイナスだと感じる情報も載せることで他社と差別化できる。意欲の高いターゲットだけが応募してくる。それがピンポイント採用サイト。

 

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