第265回「ビッグモーターの洗脳事情」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第264回「マイナンバー狂想曲」

 第265回「ビッグモーターの洗脳事情」 


安田

ビッグモーターの不祥事が次から次に出てきますね。

石塚

本当に。疑惑の総合商社みたいな感じ。

安田

こんな会社が今どきあったことが驚きです。今は内部告発がすぐ出ちゃうじゃないですか。

石塚

そう。口止めしようがない。

安田

なぜ今まで内部告発が出なかったのか不思議。今どき珍しいパワーマネジメントですよね。

石塚

社長をかばうわけじゃないけど。中小企業が短期間で一気に大きくなるには、これがひとつのパターンなんでしょう。

安田

不正ってことですか。

石塚

不正とは言いませんけど。目的を達成するためには、思考停止するぐらい目標管理を徹底して宗教的に洗脳してしまう。ああいう手法じゃないと一気に伸ばすのは難しい。

安田

今はコンプラもすごくうるさいですし。社内の問題が表に出てくる可能性も高いじゃないですか。こういうやり方だと絶対に足元を掬われる気がするんですけど。

石塚

普通はそうでしょうね。

安田

「よく今まで続いたな」ってすごく不思議。

石塚

言い換えると「洗脳がよく効いていた」ってことですよ。

安田

それは残っている社員の話ですよね。辞めた社員もたくさんいるわけで。

石塚

辞めても「下手に関わると危ない」って思うぐらい、洗脳が効いてたんじゃないですか。

安田

ヤクザ組織じゃあるまいし。今は匿名でいくらでも書ける時代ですよ。

石塚

今回も退職した社員ではなく、損害保険会社から内部告発されてるじゃないですか。

安田

「損害保険会社も1枚噛んでた」って言われてます。本当なんでしょうか。

石塚

いや、1枚どころか何枚も噛んでますよ(笑)

安田

なんと。

石塚

だっておかしいじゃないですか。普通これ保険金詐欺ですよ。

安田

ですよね。

石塚

「どうせ保険請求で取れるんだから傷つけちゃえ」みたいな。修理料金をかさ増しさせろと。つまりこれは保険金の不正請求事件ですよ。

安田

保険会社としたら次から保険料が上がるので元は取れると。結局ユーザーが割を食うっていう話ですよね。

石塚

通常の保険金詐欺事件って保険会社がすぐ警察に届け出るわけです。警察も捜査して手錠かけるわけです。事件だから。

安田

今回は違うんですか?

石塚

今回は損害保険会社がどこも警察に届け出てませんよね。

安田

つまりグルってこと?ちょっとびっくりしますね。

石塚

目標達成のためには「もう手段選ばずにやるしかない」っていう。

安田

強いプレッシャーをかけすぎると現場で不正が起こるって、いろんな事例を見ていたら経営者も想像がつくと思うんですけど。

石塚

経営者はあるところから分からなくなるんですよ。もう社員が本当のことなんか言わないから。

安田

言わないでしょうけど。わかるじゃないですか、そんなの。

石塚

いや、どうかなー。

安田

副社長は「わかっていた」って言われてます。社長の息子さん。

石塚

いや、社長も知ってるでしょうけど。まあ確信犯ではあるだろうが、細かいところまではわかってないんじゃないですかね。

安田

「除草剤を撒け」とは言ってないと思うんです。車をゴルフボールで傷つけろとまでは言ってない。だけど「どんなことをしてでも数字を達成しろ」って言ったら、現場は当然そうなりますよ。

石塚

社長は3年前に引退してますし。

安田

会見を聞く限り、本人は悪いことしたとはこれっぽっちも思ってないみたいですね。

石塚

思ってないですよ。

安田

業績を追求するのは経営者として当たり前のことで、「当たり前のことを徹底したら部下が勝手にこんなことやっちゃった」みたいな。

石塚

有名なコンサル会社がビッグモーターにも入ってるじゃないですか。

安田

コンサル会社が?

石塚

武蔵野っていう小山昇さんが社長のコンサル会社。

安田

武蔵野さんが入ってるんですか。

石塚

もうばっちり入ってますよ。武蔵野のホームページに主要取引先としてビッグモーターのロゴも載ってますから。

安田

そうなんですね。

石塚

だから全部仕組み化されてるわけです。経営計画書という手帳を全員に持たせて絶叫調で読ませる。その洗脳が効いてるんでしょう。

安田

武蔵野さんの顧問先って何千社もありますよね。ビッグモーター以外にも出てくる可能性があるってことですか。

石塚

みんながみんなじゃないと思います。たださっき安田さんがおっしゃったように、全員がスマホを持っている時代なので。内部告発される会社も出てくるでしょう。

安田

数字目標とか唱和させてたらSNSに書かれそう。

石塚

「うちもこんなことやってるぞ」ってすぐ書き込まれますよ。

安田

パワーマネージメントで引っ張っていくのは難しい時代ですよね。すぐに辞めちゃうし。

石塚

だけど短期である程度数字を伸ばすには有効な策ですよ。

安田

それはそうでしょうけど。

石塚

考え方が安田さんとは全然違うんです。僕も「そんなことしてまで」と思うけど、どうしても売上や利益を伸ばしたい会社は武蔵野的な考え方がしっくりくる。

安田

ファンも多いですからね。

石塚

武蔵野に指導を受けた会社だけで集まる会があって、話がすごく通じるそうです。

安田

価値観が近いんでしょうね。

石塚

そう。だけどもう世の中的には時代に合わない。

安田

昔みたいに雇ってる側が強くないし。情報もオープンだから洗脳も簡単ではないですよ。

石塚

だから武蔵野は新卒採用にめちゃくちゃ力を入れさせるんですよ。素手でトイレ掃除させたり。強烈な洗脳のプロセスがあるわけです。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

2件のコメントがあります

  1. 株式会社武蔵野とかビッグモーターとか、内部告発とか辞めてから告発とかしても訴えられるから皆んなやらないんだよw
    Twitterとかでも開示請求されちゃうし、今の裁判所はすぐに開示通っちゃうしねw

  2. ちなみにビッグモーターは武蔵野のコンサルタント会員は9月末で退会したと、小山昇が他の会員社長共にメール送ってたよw

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