2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第281回「二刀流の時代」
佐久長聖高校って知ってますか?
長野の名門私立ですよ。
そこに「アイドルコース」というのがあるそうで。授業が終わった後にアイドルとして活動するそうです。地元ではかなり人気らしいんですけど。
佐久長聖っていうのがびっくりしますよね。私立の上位校ですから。しかも長野ってお堅いのに。県民性がすごく真面目で。
そこにアイドルコースですからね。
逆に新鮮ですよ。
私立の上位校ってことは普通の受験勉強もして、且つアイドル活動もするわけですよね。
そういうことですね。大学生になるのも良し。上手くいったらアイドルになるのも良し。
親にもすごく人気があるらしいです。
でしょうね。そもそも私立の上位校ですから。地下アイドルとかになられるより安心できるでしょう。
親御さんは「佐久長聖だったら」って安心みたいです。
少子化の時代に合ってますよ。私立高校も単に進学だけじゃなく、子供の「なりたいこと」「やりたいこと」をコースにしていかないと。
親の心理はどうなんでしょう。
「やりたいことをやらせればいいじゃん」って感じでしょう。大学に行っても「そんな大したことないじゃん」という親も増えてきているので。
ある意味「二足のわらじ」ですよね。本気でアイドル目指す人から見たら「甘い」って言われそう。保険をかけているというか。
いいんじゃないですか。大学に行ってもしょうがないって気持ちもありつつ、アイドルで食えるのか?みたいなのもあって。大学受験プラス夢も追いかけてみるっていう。
確かに。時代に合ってるかも。
僕はすごく合っている気がしますね。今までだったら「そんな中途半端なやつが成功するか」なんて言われてましたけど。
ここから成功する人も出てくると思いますか。
最近、乃木坂やAKBでも「大学を卒業しました」って人が増えてるじゃないですか。
確かにそうですね。慶應出身のアイドルがクイズ番組に出てたり。
アイドルをやってからテレビ局のアナウンサーになったり。みんな大卒ですよ。
ほんとだ。
アイドルをやりながら二刀流で高校生や大学生をやる。それがもう珍しくないんです。
すごい変わりようですね。
昔は15歳で東京に出てきて、プロダクションの社長のところに住み込みで、人生をすべて預けて、なんていうのが当たり前で。
その時点で人生が1本道でしたよね。
そうそう。だけど売れるかどうかもわかんないし。
ちゃんと勉強もすることで人生の選択肢が増えますよね。
より選択肢が増えます。普通の大学生なんて気がついたら1本道じゃないですか。
確かに。3年生になったら就活していい会社に入って。何のために大学で視野を広げたのかわからない。しかも3年ぐらいで辞めちゃうし。
優秀な人ほど「1本道は危ない」って気がつくんですよ。一流大学を出てテレビアナウンサーになった人が数年で辞めちゃってるでしょ?
確かに。辞めるアナウンサーが増えてますね。
早い時期から複数の選択肢を提示してもらえるって、今みたいな時代には素晴らしいことですよ。
アイドルコースって就活で不利にならないんでしょうか?
いやあ逆に有利でしょう。「君、高校時代は何やってたの?」「アイドル活動コースにいました」「え!?ちょっと詳しく聞かせてよ」って。
確かに。今の時代はある意味有利かも。
アメリカの高校生なんてアメフトやりながらバスケやりながら、野球もやったりするでしょ。
いろいろやって自分が1番合うものを見つけていく感じですね。
それがいちばん理に適ってますよ。早い時期に「1本に決めろ」ってのは無理があって。
「二兎を追うもの一兎も得ず」とも言いますけど。
大谷翔平だって二刀流じゃないですか。勉強と芸能の二刀流なんて普通になっていきますよ。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。