第310回「大手は新卒を2回に分けて採用する」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第309回「新卒採用の根幹が変わる時」

 第310回「大手は新卒を2回に分けて採用する」 


安田

大企業の20代って中途採用組がどんどん増えているそうですね。

石塚

もうすでに半々くらいですね。

安田

これだけ初任給を高くして新卒を確保しているにも関わらず。

石塚

20代に関しては圧倒的にキャリア採用を重視してますね。

安田

新卒が辞めるのは折り込み済みだってことですか。他社からの移籍組もどんどん受け入れますよと。

石塚

おっしゃる通り。第二新卒も含めての新卒採用になっていると思います。

安田

なるほど。キャリア重視というより転職組ウエルカムという感じですね。

石塚

そうです。昔はキャリア採用って30代以上の転職のことをいってたわけですよ。

安田

はい、そういうイメージです。

石塚

だけど今はキャリア採用で増やしたいのは20代後半。70%の大企業ここを増やしたいと言ってます。20代前半もかなり多くて50%の企業が増やしたいと言ってる。

安田

要するに若い人材を採りたいってことですね。

石塚

そういうことです。そもそも20代ぐらいの時間軸だとキャリアとして評価されないわけですよ。企業がキャリア採用を増やすって言ってるのは、1回社会に出て、適性ややりたいことがもう少し明確になっている20代を採るってこと。

安田

キャリア採用というよりは20代転職者採用ですね。

石塚

おっしゃる通り。

安田

割合は少ないですが40代のキャリア採用をしたいという企業も20%ありまして。ここに関しては本当の意味でのキャリアを求めているんでしょうね。

石塚

新しい事業を始めたり、会社を変えていくような人材ですね。社内の40代では無理なので。

安田

コアな人材は40代キャリア採用で確保すると。

石塚

おっしゃる通り。

安田

20代のキャリア採用に力を入れる理由は何ですか。自社の新卒が辞めちゃうから? 

石塚

1番のポイントは新卒就活の早期化ですね。要するに3年生が終わるぐらいで判断するわけですよ。

安田

4年生になった段階で7割くらい内定が決まってるらしいですね。

石塚

そうなんですよ。つまり見極めが早いってことは「ちょっと違ったかな」ってこともあるわけで。

安田

それは入った側が?

石塚

両方あると思います。企業側としても早めに判断しなければいけないし、まだ志望動機も何がやりたいかも固まってないだろうし。

安田

見切り採用になっていると。

石塚

本当はあと1年ぐらい経ってから決めるのが理想だけど、そんなこと言ってたら採用できない。

安田

「間違えてとっちゃった」「間違えて入っちゃった」という人が一定数出てくるから、もう1回シャッフルするための第二新卒採用ってことですか。

石塚

そうそう。そんな感じ。ある意味、新卒の就職活動が第1ラウンドと第2ラウンドに分かれてるようなものだと思います。

安田

なるほど。合う会社に入った人はいいけど、そうじゃない人もいるわけで。

石塚

昔は合ってようが合ってなかろうが、一度入った会社で頑張るしかなかったですけどね。

安田

今はやり直しが効くと。

石塚

それが可能な時代になりました。大手で本当に新卒純血主義で、いまだに100%新卒だけってかなり減ったんじゃないでしょうか。

安田

もうそれでは成り立たないと。

石塚

成り立たない。

安田

40代キャリア人材も社内で育てていくだけでは難しい。

石塚

全く違う文脈の、全く違う育てられ方をした人間が欲しい。それを組み合わせたいってことだと思うんですよ。

安田

なんか外資っぽくなってきてますね。

石塚

おっしゃる通り。特にテクノロジーの進化が早すぎるところ、例えばマーケティングとかSNSとかって外から採っていくしかないですよ。

安田

業務委託はどうでしょう?雇用だけじゃなく業務委託を活用する手もあると思うんですが。

石塚

大手の場合は難しいでしょうね。決裁権をどこまで持たせるかという問題があって。つまり大手の役職者って予算権限を持っているので。

安田

なるほど。確かに外部の人間に予算権限を持たすわけにいかないですね。

石塚

そうなんですよ。やっぱり制度上、社員にするしかない。「副業は認めるから」というのが現実じゃないかなって思います。

安田

業務委託で優秀な人材を確保するなら中小企業の方が有利ってことですか。

石塚

制度や前例に縛られなくていいからやりやすいんだけど、経営者の頭がそこまでついていけるかどうか。そこが最大の問題でしょうね。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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