さよなら採用ビジネス 第56回「女を見る目がない男?」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第55回『シングルマザーを戦力化する』

 第56回「女を見る目がない男?」 


石塚

前回シングルマザーさんの話をしましたよね。

安田

はい。個人的には、すごく狙い目のターゲットじゃないかと思ってます。

石塚

実はもっとニッチな超狙い目がありまして。

安田

ほう。どんなターゲットですか?

石塚

シングルファーザー。

安田

え?シングルファーザーですか。

石塚

安田さんは「シングルファーザー」って聞いて、どんなイメージ思い浮かべます?

安田

イメージですか。う〜ん・・・

石塚

たとえば僕が「実はシングルファーザーで、家内とは7年前に離婚して、子どもをいま2人育ててます」とかって言ったら、正直どういう印象を持ちます?

安田

「大変なんだな」って(笑)。なんとなく「普通の仕事できないんじゃないか」って気がします。

石塚

なぜですか?

安田

いや、それはもう、家帰って子どもの食事つくったりしないといけないし。保育園の送り迎えもあるだろうし。

石塚

安田さんって意外と偏見ないですね。

安田

え、そうですか。

石塚

一般的に「シングルファーザー」っていうと、まだまだ社会的な見方がすごく厳しい。

安田

それはどのような?

石塚

たとえば「DVじゃないか?この人は」とか。「酒乱じゃないか?」とか。

安田

すごい偏見ですね。

石塚

シングルマザーっていうと「大丈夫?応援するよ」って感じじゃないですか。

安田

そうですよね。

石塚

でもシングルファーザーは「おまえが手を上げたり、酒乱だったり、金入れなかったりしたんじゃないか?」みたいな。

安田

つまり「おまえが悪い」ってことですか。

石塚

そう思う人が多いってことです。

安田

なんか可哀想ですね。そうじゃない人もいそうですけど。

石塚

そうなんです。実は最近シングルファーザーが急増してるんですけど。

安田

増えてるんですか?

石塚

奥さんが外にいい人つくって、子育ても放棄して、出ていく人がすごく多いんです。

安田

それは、旦那さんは全く悪くないという?

石塚

はい。けなげな旦那さんが取り残されていくケース。増えてます。

安田

でも確かに奥さんが逃げ出すケースって、旦那のDVをイメージしちゃいますよね。

石塚

でしょ?でも実際は奥さんがDVしてるケースもいっぱいあるんですよ。

安田

旦那のDVが原因だったら、子どもも連れて逃げますもんね。

石塚

おっしゃるとおり。

安田

子どもを置いていくってことは「奥さんにも原因があるのかな」と考えちゃいます。

石塚

安田さん、さすが深いですよね。普通はそこまで考えないですよ。

安田

そうですか?

石塚

「奥さん大変だね」って見られ方のほうが、まだまだ多いですよ。

安田

じゃあシングルファーザーは偏見があって大変だと。

石塚

すごく大変です。私も父親友達で1人いるけど、すごく頑張ってます。

安田

ある意味シングルマザーより大変ってことですよね?

石塚

問題は、シングルファーザーには「公的な福祉が一切ない」ってことなんですよ。日本って。

安田

え!そうなんですか。

石塚

はい。母子手当はあるけど父子手当はない。

安田
それはなぜ?
石塚

日本人の常識として「シングルファーザーなんてあり得ない」って思ってるから。

安田

それもまたすごい偏見ですね。

石塚

実際には「奥さんが散財する、酒は飲む、子どもに手を上げる、もちろん旦那にも手上げる」っていうのが増えてるんですよ。

安田

「もう、この人とはやってられない」って、旦那が子ども連れて出ていくみたいな。

石塚

そうです。そういうケースがすごく増えてる。

安田

じゃあ、やっぱり公的な支援が必要じゃないですか。

石塚

そうなんですけど「シングルファーザーに光を!」なんて誰も言わないじゃないですか。

安田

確かに言わないですね。なぜでしょう。

石塚

票にならないからじゃないですか。

安田

「シングルマザーほど困ってない」というイメージもあるんじゃないですか。

石塚

いや困ってますよ。

安田

「仕事はあるだろう」みたいな。男だし。

石塚

そういうイメージを持たれてるからしんどいんですよ。実情は仕事と家庭の両立、子育ての両立で悩んでる方が多いです。

安田

そこが求人ターゲットとしての狙い目だと。

石塚

そういうことです。「シングルファーザーをサポートします」という会社が、結構いい採用をしてます。

安田

シングルファーザーって、何をサポートしてあげればいいんですか?

石塚

まず「仕事あがる時間を自分で決めていい」っていうのがひとつ目。

安田

そこはシングルマザーと同じですね。

石塚

はい同じです。で、2つ目は、社長の奥さまとか、女性従業員さんのサポート。

安田

それはどのような?

石塚

いちばん困るのが幼稚園・小学校で、キャラ弁つくんなきゃいけないとか。あと縫い物とか、学校の宿題とか。

安田

それを会社の女性が手伝ってあげるってことですか?

石塚

そう。特に女の子だったら、父親じゃ教えられないこともあるじゃないですか。

安田

確かに。

石塚

男の子だってお母さん的なるものは恋しいですし。

安田

なるほど。家庭に不足している母性を補ってあげると。

石塚

そう。それを謳ってあげるとバーッと集まって来ます。

安田

そんなに皆さん苦労してるんですね。

石塚

特に中小企業さんは、そういう受け入れをすれば凄くいい人が採れる。

安田

「奥さんに逃げられた=仕事できない人」みたいな偏見もありそうですけど。

石塚

そんなことないですよ!仕事ができるからといって、女性を見る目があるとは限らない。

安田

まあ、確かに。

石塚

残念ながら「奥さんの選択ミス」ってかなりあるんですよ。

安田

じゃあ、能力が高くて仕事ができるけど、女性を見る目がない人。これが意外と狙い目だと。

石塚

まあ、そのとおりですね(笑)


石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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