2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第317回「揺れてからではもう遅い」
保険会社の営業マネージャーが「51歳の時に退職勧奨を受けた」という記事を見まして。当時の年収が750万で退職金の提示は600万だったそうです。
この方は41歳で入社されてるので10年間働いてたってことですね。
はい。けど「辞めない」って交渉したら1400万になったっていう。10年しか働いてない人にこんなに払うんですね。
生命保険会社って、まず中途採用がめちゃくちゃ多いんですよ。
へえ〜。
日本の生命保険会社は女性を中心としたいわゆる生保レディで成り立っていて。彼女たちを動かして売上を立てる仕事ってのがあるわけです。
生保レディにいかに心地よく働いてもらうか、という管理職ですね。
そうそう。いろんな手練手管を使ってモチベーションを維持していく。で、この仕事には一定のニーズが常にあるわけです。
ニーズありそうですよね。
腕があればいくらでも横入りできるわけですよ。率いる営業の人数が多ければ多いほど役職名と収入が上がる。固定+ボーナスで反映されるわけです。
そのボーナスを入れて年収750万ってことですね。この方は。
そう。だからすごく売れる組織を作っていた人ではないと思います。たしか辞めた後の転職話も書いてましたよね。
はい。51歳で転職活動して、人材派遣会社の営業部長の面接を受けた。「希望年収1000万」と言ったら「出せて半分でしょう」とあきれられたと書いてました。
僕ね、常々言ってるんですけど。
はい。
45を過ぎて普通に転職活動している営業職って、要するに「売れない=能力がない」ってことなんですよ。
なるほど。
本当に売れる人だったら声がかかるか、自分で営業して次のポジションを取ってくる。
確かにそうですよね。自分に有利なポジションを取ってくるのも営業ですもんね。
もう営業の最たるものじゃないですか。51で早期退職したまではいいと思うんです。その時にいくつか話が来てて「どれにしようかな」ってのが力のある人。
そういう人はリストラされないんでしょうけど。
おっしゃる通り。普通に面接に行ってるって時点で「大したことないんだな」ってことです。
750万が高いと感じるからリストラされているわけで。ちなみに営業マネージャーって、自分で営業する人とはちょっと違いますよね。
そうなんですよ。いわゆる営業管理職と言われる仕事で。いかにしてチームの売上を上げるか。それがミッションです。
51歳という年齢でもスキルがあれば営業管理職として採用されるものですか?
力があれば必ずニーズはあります。数値管理とモチベーションの管理をしなければいけないから難易度が高いんですよ。要は技術があるかどうか。
その人がいることでチーム全体の業績がアップするかどうかですよね。
おっしゃる通り。
契約率アップとか、モチベーションアップとか、定着率アップとか。
それを実現できるスキルがあれば51歳でもニーズはあります。
でも営業マネージャーって評価が難しいですよね。会社全体が伸びてる時とか誰がやっても業績が上がることもあるし。
それは追い風参考記録ですね。
はい。逆風の中で自分のチームだけ業績を上げてたら「これはすごい」ってことになるんでしょうけど。
じつは生命保険会社の営業管理職って、マネージメント以上に新規のリクルートが求められるんですよ。
新規のリクルート?
売れる営業レディをどれだけ新規採用できるか。実はこちらの評価の方が高いんです。
つまりこの方はリクルート実績もイマイチだったと。
1つ言えるのは、50過ぎて考え始めてること自体がすでに終わってる。どんなに遅くても45歳過ぎたら備えておかないと。
「え?俺が?」とかって思ってる時点でもう遅いと。
揺れる前に南海トラフの備えをしろって話ですよ。揺れてから地震の備えをするような人に声はかからないですよ。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。