2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第319回「リストラの順番を間違えたクロネコヤマト」
第320回「6人のヘアアイロン会社」
エスライドってタクシーに乗ったことあるでしょ?
はい。あります。
タクシー広告で最近これよく見ません?キヌージョっていうヘアアイロンなんですけど。
いや見たことないです。何ですかそれ?
今すごく売れているヘアアイロンです。絹のプレートを使った技術で髪が痛まない、水蒸気爆発を抑える技術が真似されにくい、という特徴がありまして。
どこのメーカーですか?
KINUJOっていう、たった6人でやってる会社なんですけど。すごく面白い会社で。
なんと!6人の会社がそんなヒット商品を生み出したんですか?
そうなんですよ。社長がマーケッターなんですけど幼馴染みが技術責任者で。二人ともまだ30代なんです。
すごいですね!
起業したのが26歳だって言ってました。
美容系家電なんて一番競争が激しいところなのに。よく20代で参入しようと思いましたよね。
もう量販店がほとんど販路を握っている業界で。
安くしないと売れないイメージです。
そうなんですよ。ちなみにこれ、1台いくらだと思います?
1万円ぐらいですか?
3万5000円です。
なんと。
ヘアアイロンって安いと数千円で買える商品なんですけど。高価格にも関わらず売れていて。
炊飯器と同じですね。安いのもあるけど高級なのは10万円ぐらいして。
同じですね。ここは完全に高級路線に特化してます。モーターも含めた画期的な技術があるらしくて。あえて特許を取らないんですって。
公開されて真似されないようにってことですね。
そう。そこにプラスしてマーケティングが抜群に上手い。徹底したSNSマーケで。
それを社長がやっていると。
そうなんですよ。幼馴染ふたりで重要なところを抑えちゃってる。もう問屋経由でしか売らないそうです。直販で売ると営業マンを抱えなきゃいけないから。
なるほど。素晴らしい発想ですね。できるだけ人は雇わず利益を最大化していくと。
そうなんです。徹底したSNSマーケで火がついて、あと2年で売上100億円行くみたいです。たった6人で100億ってすごいですよね。
ひとり17億弱ですね。すごい。
ヘアアイロンだけで100億やるわけじゃないでしょうけど。唯一無二のラグジュアリメーカーとおっしゃってます。時代にあった会社経営というか。6人以上社員を増やさず。
大きくなると人を抱えたくなるんですけどね。でも社内で抱えちゃうと新しい視点やアイデアが入ってこなくなっちゃう。
それを分かっていて腕のいい外注をどんどん活用しているみたいです。しかも企業じゃなくできるだけ個人に外注してるっていうのが凄いですよ。
我々がいつも言っている中小企業の理想形ですね。
ほんとそうです。安田さんが常々コラムで書いてることを体現してる会社ですよ。
これからどうするんでしょう?上場を目指すのか。どこかに事業売却しちゃうのか。
バルミューダに近い発想なんだけどちょっとやり方が違う感じですね。
バルミューダは上場して拡大路線に行っちゃいましたよね。
はい。どこまで規模を大きくするかの決断をこれから求められると思います。
大きくしない決断をしたら凄いですけど。これだけ若いと大きな事もしたくなるでしょうし。
普通はそうですよ。
小さな高収益企業として「6人で楽しく豊かにやっていこう」みたいになったら素敵ですけど。
本当ですね。次の勝ちパターンってこういう企業なんだろうなって思う。
腕のいいフリーランスを活用してるのも斬新だし。この年齢でその判断ができるって凄いですよね。数年後にどうなっているかすごく楽しみです。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。