第330回「激変する大手のキャリア採用」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第329回「大企業の辞めどき」

 第330回「激変する大手のキャリア採用」 


安田

大企業といえども、新卒一本槍では行き詰まる時代ですね。

石塚

おっしゃる通り。昔と違って新卒も辞めちゃうから。それと、社内で育った人間だけでは他社との競争に勝てない。

安田

中途で採ってくるしかないと。でもJTC(伝統的大企業)はいまだに新卒1本らしいですよ。いずれここも変わっていきますか?

石塚

変わっていかざるを得ないでしょう。ただ新卒採用に比べてキャリア採用は難しいんです。

安田

それはどの辺りが?

石塚

新卒は仕事をしたことがないから騙せるじゃないですか。

安田

今の時代でも騙せますか?ネットで検索したらぜんぶ出てきますよ。

石塚

騙せますよ。やっぱり仕事したことない人って分かんないから。

安田

中途ほどシビアではないでしょうね。確かに。

石塚

中途採用にもポテンシャル採用と本当の意味でのキャリア採用があって。前者はどの企業も増やしている傾向ですね。

安田

それは優秀な新卒が採れなくなっているから?

石塚

おっしゃる通り。若年人口が減っている中でどうやって人数をカバーするか。このゾーンに関しては採用ターゲットを明確に設定した上で囲い込むのやめなきゃダメ。

安田

囲い込むのはダメですか。

石塚

「ずっとうちにいなさい」ではダメ。「うちに来ると3年、5年でこうなる」ってことを前面に出さないと。勝てないですよ。

安田

「スキルを磨いて転職をしていく」という人を採用するってことですか。

石塚

新卒やポテンシャル中途採用はそうしないと採れない。

安田

さすがに新卒一本槍の会社は無くなっていきますか?

石塚

日本のトップ100社は新卒採用でやり続けられるとは思います。人気ランキングの100位まで。

安田

でも都銀でさえキャリア採用する時代ですよ。

石塚

これは大学入試と一緒で。東大、京大、早慶みたいに「どうしてもそこ入りたい」って人がいるんです。例えば五大総合商社とか。電通、博報堂とか。

安田

そのゾーンの会社に限って言えば新卒一括採用だけでも成り立つと。

石塚

設計上は成り立つでしょうね。

安田

この先もずっと終身雇用でいくイメージですか。

石塚

立て付けは終身雇用にしておいて40手前ぐらいまでの戦力として使う。あとは本当に優秀な人だけ残して早期退職に応募してもらう。転職するんだったらどうぞって感じじゃないですか。

安田

新卒で採用した人材を40歳ぐらいまで安く使い、そこから先はほとんど辞めちゃっても業務に支障はないと。

石塚

コアゾーンさえ残れば支障はない。最近はアルムナイ採用という出戻り採用も強化してるし。

安田

トラディショナルカンパニーでも出戻りはありなんですか。

石塚

ええ、ありだと思います。

安田

他社との競争力という意味ではどうですか。いろんな血を入れていかないと厳しいんじゃないかって話ですけど。

石塚

新卒で日本のトップクラスの学生を取り続けられるのであれば、一定程度は優秀な人が来るじゃないですか。その中でイノベーション起こすような人が100人に1人ぐらいはいる。

安田

つまり日本のトップ層の新卒が採用できる大企業であれば、あえてキャリア採用しなくても問題ないと。

石塚

ない。ただし、それは我々が知っている「いわゆる大企業」の中の1%以下の話ですよ。

安田

それ以外はもうキャリア採用やらざるを得ない。

石塚

やらざるを得ないし、それすら難しくなるかもしれません。

安田

大手といえどもキャリア採用は簡単じゃないと。

石塚

簡単ではないでしょう。かなり苦戦すると思いますよ。

安田

それでも大手のキャリア採用の割合は増えていきますか?

石塚

さっき言ったトップ100社以外は増やさざるを得ないんですよ。これまでのやり方では事業が継続できないので。

安田

新卒よりも中途社員の方が多くなる日も近いですね。

石塚

あっという間でしょうね。管理職も含めてどんどん中途採用になっていく。下手したら社長もキャリア採用になるかもしれない。

安田

社長まで?そうなると企業文化も激変するでしょうね。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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